新車試乗レポート
更新日:2023.08.22 / 掲載日:2023.08.21

【ロータス エミーラ】最後の純エンジン・ロータスをMTで操る歓び

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス

 ロータスブランドの進化、というか変化に関してのニュースがにわかに聞こえ始めている。彼ら初のフルEVとなるエレクトリックSUVのエレトレ上陸がその足がかりになり、その後セダン、そしてスポーツカーというフルEVラインアップが構築される予定だそうだ。小規模メーカーだけに様変わりは一気に来る。メルセデスやトヨタのようなメガメーカーは仕向地ごとにあらゆるパワーソースを用意するが、このクラスはそうもいかない。ロータスがフルEV一色になる日はそう遠くないだろう。

 ただ、その過渡期にユニークなモデルをリリースしたことを忘れてはならない。エミーラだ。エヴォーラ、エキシージ、エリーゼすべてをやめ、このスーパーカースタイルの最後の内燃機関モデルを世に放ったのである。

2シーターミッドシップではあるがシート後方に荷物置き場がある

ロータス エミーラ

 エミーラのスリーサイズは全長4413mm×全幅1895mm×全高1226mmとなる。ホイールベースは2575mmとこのサイズにしては比較的長い。理由は、2シーターミッドシップだから。しかもシート後方には若干だがスペースがあり、鞄置き場になっている。このオールアルミモノコックボディはエヴォーラからの流れを汲む。剛性アップと軽量化、それとワイドトレッド化を図って造られた。よって全長はそれよりも長く、ワイドも広くなっている。

 足回りはアルミを多用。そこにビルシュタイン製モノチューブダンパーとアイバッハ製コイルスプリングを取り付けたダブルウィッシュボーン式を採用した。ホイールは超軽量20インチアロイ製、タイヤはグッドイヤーのイーグルF1スーパースポーツを履いていた。サイズは前245/35ZR20、後295/30ZR20。車両によってはミシュランパイロットスポーツカップ2もあるらしい。

ロータス エミーラ

400馬力オーバーのV6をMTで味わう

 エンジンはお馴染み3.5リッターV6ツインカム+VVT機構付きにスーパーチャージャーを取り付けたもの。そもそもはトヨタ製だが、もはや手を入れ続けて別物になっている気がしなくもない。最高出力は405馬力。それを6800回転で発揮する高回転型だ。レッドゾーンはその6800回転以上となる。組み合わされるギアボックスは6速MTと6速ATがあるが、試乗車は前者であった。

 そんなパワーソースだが、秋以降2リッター直4 直噴式ターボが追加される。こちらはAMG製で365馬力を7200回転で発揮する。AMGラインアップに搭載されることですでに定評のあるユニットだけにロータスとの相性は期待していいだろう。

 では実際に走らせた印象に話を進めよう。まず感じるのはハンドリングの気持ちよさだ。特に山間のワインディングまで行かなくとも、それはしっかり伝わってくる。郊外の空いている道をガムシャラにならずスーッと流しているだけで気持ちいいのだ。ステアリング操舵に対しフロントタイヤは路面に吸い付くようにラインをトレースし、リアは誤差なくそれに追従する。ロールの抑え方も絶妙で、まるでカートを走らせているようにクイっと向きを変える。

 パワーソースに関しては一定速度をそのままのギアで走っていてもつまらないが、シフトチェンジをまめに繰り返すようなシーンでは抑揚があって楽しくなる。シャシーとのバランスは思いのほかいい。ただ常時後ろから聞こえてくるザーッという高音は好き嫌いが分かれるかもしれない。意外とキャビンに入ってくるので、そこをどう感じるかはドライバーの好みだ。

 MTの操作フィーリングは悪くない。ガシャと入る感覚は近年のロータスフィーリングそのまま。それほどクロスレシオではないので、一つ一つを味わえる。ちなみに、フルデジタルのメータークラスターにはセレクトしたギアの数字が大きく出る。でもって速度の変化でアップダウンの矢印がつくのだが、ロータスにそれは不要ではないだろうか。その辺のドライブフィーリングを自分好みで得たい人がこのブランドを選ぶ気がする。

 なんて話のついでに一つだけ注文をつけるとしたらペダル関係を見直してほしい。27cmという足のサイズもあるだろうが、吊り下げ式ペダルの根元の方につま先が引っかかったりする。もちろん慣れればOKだが、もう少しスペースがほしい。欲を言えばペダル同士ももう少し離れていた方が個人的には扱いやすい。

まとめ

 なんて話はともかく、エミーラは総合的に楽しいクルマであることは確か。見た目がかっこいいから眺めているだけで十分なんて思われそうだが、ロータスらしく走らせてナンボに仕上がっている。さすがだ。こういうクルマが一台あるとストレス解消に最高だろう。ただ、ご覧のようにかなり目立つからくれぐれも運転は慎重に。マナーよく走っても楽しいのがロータスなのでご心配なく。

自動車ジャーナリストの九島辰也氏
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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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