新車試乗レポート
更新日:2023.06.12 / 掲載日:2023.05.05

新型クロストレックの走りは歴代最高!? その魅力を公道試乗で探る

最新「SUBARU」魅力大全!〜理想の走りを貪欲に追求する、愛すべき異端児の「今」に迫る〜

SGPモデルの大ヒットもあって国産屈指の人気ブランドに成長を遂げたスバル。その成功にあぐらをかかず性能向上を第一とする野心的なアプローチは留まることを知らず、毎年のように最新技術を惜しみなく投入している。今回はそんなスバルの現行ラインナップに注目。オンリーワンを名乗るにふさわしいモデルの魅力をお教えしよう。

SUBARU 新型クロストレック公道試乗

新型クロストレックに宿る潜在力の高さは、すでにサーキット試乗で確認済みだが、真の実力を見極めるには公道試乗は外せない。街中から山岳路、高速道路走って分かった、万能選手ぶりをお伝えしよう。

●文:川島茂夫 ●写真:澤田和久

●新型クロストレック グレードバリエーション&価格

歴代最高の走りを手に入れた新世代モデルの実力を徹底CHECK!

オンロードの走りが
さらに魅力的に進化

 初代となるインプレッサXVから最新のクロストレック(数えて四世代目に当たる)まで、歴代の系譜で欠かせない特徴になっているのが、オンロードにおいて良質な走りが楽しめること。SUVパッケージングのデメリットになりうる運転感覚や走りの質感を、セダンやハッチバックと同等以上に仕立てていることは、クロストレック(XV)の大きな強みになっている。今回デビューしたクロストレックは、乗用車の質という点でも最新にして最良のモデルだった。

 新型の走りでとくに印象的なのがフットワークの良さだ。操縦安定性のみならず、乗り心地に関してもサスストロークの使い方が上手になっている。それは単純な硬軟ではなく、ドライバー/乗員の居心地の良さ、馴染みやすさを重視した特性に進化しているのだ。

 具体的には、サスのロール量そのものは大きめに制御されている。要するに「往なし」を使った設定で、ストローク速度を巧みにコントロールすることで、回頭性や旋回力の繋がりが良化している。

 一般的にストローク速度に堪えがなく早すぎると、初期回頭反応が誇張され、旋回力の立ち上がりも急になる。さらに操舵に対するタイムラグも大きめになりがちだ。当然、操安性のセオリーからも外れてしまう。

 クロストレックの特性は逆である。ロールの入りは緩やかだが、堪えながらロール量を増加させていく。この「堪え」が回頭反応と旋回力を素早く立ち上げ穏やかに増加している。当然、操舵に対しても過不足ないラインコントロール性を示してくれる。

しなやかな乗り心地で
1ランク上の走りを実現

 乗り心地も堪えを効かせたしなやかさな味付け。ふわつくような揺れもなく、比較的長めのサスストロークを使いながら挙動を安定させている。収束性にも優れており、それが良質な味わいになっている。

 この進化は、前のページで解説しているレヴォーグSTIスポーツの「e-TUNE」にも似た特性と思える。もちろん、クロストレックのサスは電子制御ではないが、スバルのフットワークに対する考え方が変わったようにも思える。運動性や快適性のセオリーに沿っているので、個性という面は薄まったとも言えるが、高速ツーリングも高いレベルで求められるクロストレックには似合いの味付けだ。

 パワートレーンはe-BOXERのみの設定。2ℓNA/CVTをベースとしたパラレル式ハイブリッドを採用しているが、モーター出力や駆動バッテリー容量は控え目で、実質的にはマイルドハイブリッドだ。そのためモーターによる電動アシストを加えて、加速性能の1ランクアップを狙うというレベルには達していない。

スペック面は同等だが
制御系の進化が著しい

 基本的なスペックは、先代スバルXVのe-BOXER車と変わっていないのだが、電動駆動の使い方がちょっと変わったように思えた。ドライバビリティで言えば速さより質、制御感で言えば要点を絞って電動力を細かく介入、そんなイメージだ。

 アクセル入力に対して、緩やかにコントロールできる追従感の良さもいい。少し前の純内燃機車で多かったアクセルを深めに踏み込んで緩やかに戻すような感覚は、クロストレックではまったく感じない。ごく普通に走らせていてもエンジン回転数は低く保たれており、それでいて余力感もしっかりとある。

 電動アシストそのものは弱いため、加速を試みる時はダウンシフトを併用せざるを得ないが、このダウンシフト制御もドライバビリティの要になっている。早めのタイミングでダウンシフトを行うことで、急激なエンジン回転数の変化を抑えて加速を滑らかに維持している。メリハリという面では希薄なコントロール感覚だが、多少乱暴なアクセルワークをしても上手に荒さを消してくれるので、同乗者のストレスを軽減してくれるメリットもある。

 また、振動や騒音も先代から改善されている。音量や振動そのものの減少もあるが、音質等の変化も大きい。気に触るような感覚が薄れ、むしろ厚みや重みを感じさせるものになっている。

 クロストレックの売りのひとつである悪路踏破性はまだ試せていないが、スペックや機能を見る限り先代と同等以上であるのは間違いない。乗用車プラットフォームをベースとするSUVではあるが、ぬかるんだ林道等でも安心して走れるはずだ。

 SUVとしては低い全高になるため、室内高や荷室容量はショートワゴン相応だ。レジャー用途も意識するSUVとしては、もう少し高いレベルのキャビン実用性も欲しくなる。

 ただ、走りの味わいや運転しやすさは、良質な乗用車そのものであり、悪路踏破性も乗用車タイプの中では群を抜いている。街で使うのに便利ということも大きい。キャビン実用性を除けば、1クラス上のミドルSUVとも戦うことができる一台だ。

■主要諸元(リミテッド AWD)
●全長×全幅×全高(㎜):4480×1800×1575 ●ホイールベース(㎜):2670 ●車両重量(㎏):1580 ●パワーユニット:1995㏄水平対向4気筒DOHC(145PS/19.2㎏・m)+モーター(10kw/65Nm)  ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)ベンチレーテッドディスク(R) ●サスペンション:ストラット式(F)ダブルウィッシュボーン式(R) ●タイヤ:225/55R18

パワーユニットは直噴2ℓに1モーター/2クラッチのパラレル式ハイブリッドを組み合わせたe-BOXERに統一。スバル独自のリニアトロニックと組み合わされる。
インパネまわりのデザインは、中央に縦型モニターを配置するグラスコックピットデザイン。加飾パネルやトリム類の素材感も向上している。
フロントシートは取り付けブラケットを廃し、シートレールを直接マウントする構造に変更。シート揺動の抑制が図られた。
室内高は1200㎜。SUVとしては低室内高だが、シート配置の工夫もあって後席のゆとりは十分に確保されている。頭上まわりに窮屈さは無縁だ。
上級グレードのリミテッドにはタッチタイプ&通信連携機能を備える11.6インチセンターインフォメーションディスプレイが標準装備(ツーリングはメーカーOP)。ただしナビゲーションはOPで追加する必要がある。
シート格納は4:6分割式を採用。サイズ以上に使い勝手の良さを実感できる美点はしっかりと継承。開口部下のトリムには傷防止の山柄テクスチャー処理が加えられている。
ボディ剛性の強化に伴いしっかり感が増したことに加えて、モーター&ミッションの制御系に手が加えられたことで出足の鋭さが増している。街中はもちろん、高速長距離でも軽快感が高まっている。
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内外出版/月刊自家用車

ライタープロフィール

内外出版/月刊自家用車

オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

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オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

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