新車試乗レポート
更新日:2023.05.02 / 掲載日:2023.05.02

【アルファ ロメオ トナーレ】イタリア車らしいワクワクを感じるコンパクトSUV

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス

 ようやくトナーレと直接対峙することができた。コンセプトカーの登場は確か2019年くらいだったから、私を含め今か今かと待ち焦がれていた人は多いと思う。ステルヴィオよりもコンパクトなSUVとなればそれなりに人気になるのは必至だ。きっとこれだけ時間がかかったのはコロナ禍の影響が大きいのだろう。マセラティ・グレカーレも同じような経緯を辿った。

ライバルと一線を画すスタイリッシュなデザイン

トナーレ エディツィオーネ・スペチアーレ

 写真では見ていたが、目の前の実車はまとまりよく思える。全長4530mmに抑えられながら寸詰り感はなくシュッとしている。フロントピラーの付け根を出来るだけ後方に位置させ“ロングボーズ&ショートデッキ”を具現化しているのが要因だろう。そしてそれを引き立てるようにグリルを薄くし、リアピラー後方を寝かしている。真横から見るとそれがハッキリわかるのでぜひご覧いただきたい。同カテゴリーのライバル車にはボテッとしたフォルムのモデルがあるがそれとは違う。

 そしてアルファファンでなくても気に入るのは彼らのアイコンを踏襲するフロントマスク。遠くからでもこのクルマがアルファ ロメオであることを主張する。試乗車はメッシュ部分をブラックアウトしているのでなおさら精悍さが際立っていた。が、リアコンビネーションランプに関しては割と凡庸。なぜか後は自己主張しない。良く言えば多くの人が選り好みしないデザインが採用されている。

トナーレ エディツィオーネ・スペチアーレ

短距離ではあるがEVモードも備えるマイルドハイブリッド

 パワーソースは新開発の1.5リッター直4ターボエンジンに48Vバッテリーとモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドとなる。ハイブリッドのパテントをトヨタに持って行かれたヨーロッパメーカーの苦肉の策といったところだろう。BEVメインに移行したいヨーロッパで、過渡期にはちょうどいい塩梅のシステムだ。しかも、当初スタートや加速でエンジンのサポートしていたマイルドハイブリッドも最近は短距離だがEVモードを可能にする。トナーレもそうで、時速15-20キロくらいならエンジンを使わずに走る。また、高速道路ではアクセルオフでコースティング機構が働く。エンジンとドライブシャフトを切り離し惰性で走ることで、燃費向上と二酸化炭素や窒素酸化物の低減を実現する。

トナーレ エディツィオーネ・スペチアーレ

 グレードはエントリーモデルの“Ti(ティーアイ)”と上級の“Veloce(ヴェローチェ)”という設定。後者はイタリア語の「速い」という意味で、アルファ ロメオ特有の言い回しとしてこれまでも使われてきた。ただ、パワーソースに違いはなく、“Veloce”に20インチのホイールと電子制御サスペンションが装着されることで区別される。 “Ti”は受注生産なので、デフォルトは“Veloce”なのかもしれない。

走りにもアルファ ロメオらしさがある

トナーレ エディツィオーネ・スペチアーレ

 そんな中今回ステアリングを握ったのは導入記念モデルの“Edizione Speciale(エディツィオーネ・スペチアーレ)”。文字通り発売を記念して装備を充実させたものだ。よってこちらも“Veloce”同様20インチの大径ホイールを履く。

 走らせた印象はアルファ ロメオらしさが強調されていた。ステアリングはクイックで、それに対する足回りの反応も早い。このところしっとりしたサスペンションセッティングのクルマが多い中、かなり個性的だ。当然アクセルの反応もそうで、モーターの出力の出方も早め。そしてそのまま気持ちよく高回転まで回るターボエンジンに引き継ぐといった印象となる。この一連の動きがステルヴィオやジュリアと共通していると言っていいだろう。

 そんなスポーティさを持ちながら乗り心地が悪くないのはさすがヨーロッパメーカー。日本のメーカーだと19インチでヒョコヒョコしたピッチングが生じるが、このクルマは20インチでそれがない。もちろん段差や路面状態の悪いところでは硬い振動が来るが、それを一発で収めるセッティングは秀逸だ。市街地で石畳をデフォルトとする国の一日の長がここにある。

 ということで、SUVでありながらスカッとした走りを求める人にトナーレは応えてくれるよう仕上がっている。最近はモーターのパフォーマンスを最大限に利用することでエンジンを高回転まで回せるSUVが少ない気がしていたが、トナーレは違う。アルファ ロメオらしく小排気量エンジンをしっかり動かして楽しめる。このイタリアっぽい演出にワクワクするドライバーは少なくないかもしれない。

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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