新車試乗レポート
更新日:2023.03.27 / 掲載日:2023.03.24

【ルノー ルーテシア】緊急指令! 東京→愛媛 800kmを低燃費走行で走破せよ

文と写真●ユニット・コンパス
 ルノーから届いたイベントの案内は、いつもの試乗会とはちょっと異なる旅のお誘いだった。
 それは、「Eテックハイブリッド」を搭載したルーテシアで、横浜から愛媛松山市の目的地まで片道800kmの距離を走行し、その模様をレポートしてほしいという依頼だ。しかも、ただ走るだけではなくて、到着時点でもっとも平均燃費に優れたチームに、フランスの取材旅行がプレゼントされるという。フランスも長距離ドライブも大好物である筆者は、さっそくイベント参加を決意した。

 日本におけるフランス車のイメージといえば、「おしゃれ」とか「スポーティ」というものがほとんどで、「燃費がいい」と考えているひとはまずいないだろう。
 だが、2022年にルノーはSUVクーペのアルカナから「Eテックハイブリッド」という独自のハイブリッドシステムを日本仕様にも投入した。これがなかなかユニークなメカで、輸入車で唯一のフルハイブリッドであるのに加えて、ルノーに期待するキビキビした走りを両立してくれるのだ。コンパクトカーのルーテシアやキャプチャーとの相性は抜群で、指名買いするユーザーが多いのだとか。
 ちなみに、カタログ燃費は、ルーテシアが25.2km/Lでキャプチャーが22.8km/L、アルカナが22.8km/L。イベントを通じて、その勢いをさらに伸ばしたいというのがルノーの狙いだろう。

ルーテシア Eテックハイブリッド

 出発地に指定されたのは、ルノージャパン本社にほど近い、みなとみらいの日産本社。ここから愛媛県松山市にある歴史あるフランス建築「萬翠荘」を目指す。ルートは自由だが、当然無駄なまわり道をしては勝てるはずがない。最短ルートを通るのはもちろん、できるだけ渋滞も避けたいところ。クルマは加速するたびに燃料をたくさん使うので、ストップ&ゴーは少なければ少ないほうがいい。夜間であれば交通量が少なくなるだろうと考え、スタートを夕方に設定した。
 ところが、スタートし、東名高速に入る手前で渋滞に捕まってしまった。想定外の出来事に焦るが、淡々と距離を稼ぎ、できるだけ空気抵抗を減らすべく、安全マージンを確保しつつトラックの後方を走る作戦をとった。

 燃費走行というのは、じつは非常に奥が深く、好成績を収めるいくつものテクニックが必要とされる。
 一般的によく言われるのがアクセルの踏み方で、急に踏むよりも、ゆっくりと加速する「ふんわりスタート」が燃費にいいとされている。巡航中の速度は、できれば一定のスピードを保ちたく、加速も減速もしたくない。さらに、速度によっても効率が変わってきて、一般的には70km/hの時がもっともいいと言われている。ただし、ここは注意が必要で、いくら燃費のためといっても、周囲の交通を妨げるような運転は迷惑であり危険だ。

燃費チャレンジ中の車内。出来のいいクルーズコントロールのおかげで長距離移動の負担はだいぶ軽減された

 あらためてEテックハイブリッドについて簡単に説明しよう。メカニズムは、1.6L直4エンジンに発電とエンジン始動を行うサブモーター、そして駆動用のメインモーター、さらに電子制御式ドグクラッチマルチモードATという構成。このトランスミッションの構造がオタク的にはユニークなのだが、長くなるので割愛。
 発進時はモーターだけで走行し、その後は状況に応じて「モーターのみ」と「モーター+エンジン」を瞬時に切り替えて走行する。ほかのシステムに比べて高速走行に強いのが特徴で、高速走行時にアクセルを踏み込んだときにもアクセルの踏み方と車体の加速感、そして音がきちんとシンクロするため違和感がない。ハイブリッドシステムによっては、ここがズレて感覚的に気持ちの悪いことがあるし、日本製ハイブリッドはどちらかというと市街地に焦点を当ててセッティングされているため、高速での燃費の伸びはいまいちだったりする。ルノーのEテックハイブリッドは、まさに速度レンジの高い欧州で生まれたシステムだ。

メーター左上にあるのが燃費計。「3.7L/100」とあるので、100km走行するのに3.7Lの燃料を消費。わかりやすく計算すると27.0km/Lとなる

 話は燃費チャレンジに戻り、東名→新東名→伊勢湾岸→新名神と走り続けて時間は深夜2時。宿泊地のある大阪に到着した。ここまでの燃費は27.0km/L。ライバルであるほかの編集部がどれくらいで走っているのかはわからないが、カタログ値は超えた。

淡路SAの大観覧車をあおぎみる。コンパクトカーゆえ、扱いやすさは抜群

 翌日、9時30分に大阪をスタートし、ゴールである愛媛県を目指す。新名神から山陽道を通り、瀬戸大橋で四国へと渡る。初日は運転に集中していたが、2日目になってルーテシアのことを観察する余裕も出てきた。市街地ではちょっとゴツゴツとした感触のあるフットワークだが、高速では欧州車らしいフラットな乗り心地になることは昨日すでに経験済み。クルーズコントロールも良くできている。ベテランドライバーの感覚から見ても違和感が少なく、安心して操作を任せることができた。手足を使うことが少なくなるので当然、疲れにくい。
 疲れにくいといえば、筆者は男性のなかでも184cmと大柄で、クルマによっては正しい運転姿勢がとりにくく、長時間乗っていると身体が痛くなることもある。だが、ルーテシアは小型車にも関わらず正しい運転姿勢が取れるのだ。短時間の試乗では気にならなかったことが、長距離ドライブでは気になって仕方なくなるというのもよくある話。そういう意味で、ルーテシアは非常に印象がよかった。
 クルマ自体のデキはご機嫌だったのだが、山陽道はゆるやかな登り坂が続き、燃費運転をするドライバーとしては気をつかう時間が長く大変だった。アクセルを慎重に操作しても燃費は悪化していくので精神的につらくなってくる。これは道が悪いわけではなく、あくまでも燃費レースだからこその辛さなのだが、辛いものは辛い。

目的地である「萬翠荘」は、フランス様式の建築(写真=ルノー)


 夕方5時、ようやく目的地である「萬翠荘」に到着。最後まで気を抜かずにゴールまで走り切った。最終的な燃費は27.0km/Lであった。筆者が普段使っているドイツ車のセダンの燃費はだいたい13-14km/Lであることを考えると、同じ燃料で倍ほどの距離を走れることになる。「Eテックハイブリッド」の面目躍如といったところだろう。
 燃費レースの結果はともかくとして、帰路の道で非常に驚いたことがあった。燃費チャレンジから解放されて、ごくごく普通に走っているのに燃費があまり変わらないのだ。つまり、特別な運転を心がけなくても、ルノーのEテックハイブリッドは効率的な仕事をしてくれるということ。これがわかったことが何よりの収穫だろう。
 燃費チャレンジの結果は月末のセレモニーで発表されるとのことだが、たとえフランスに行けなくても、小型車離れしたルーテシアのたくましさとEテックハイブリッドの真価が味わえただけで十分だ。決してこれは負け惜しみではない(笑)

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グーネットマガジン編集部

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