新車試乗レポート
更新日:2023.01.19 / 掲載日:2023.01.19

新型ホンダZR-V/春まで待てない! 公道試乗インプレ

走り自慢のSUV、ついにその実力を披露!

受注が開始されたことで、より注目が高まるホンダZR-V。納車が始まるのは2023年4月からだが、それに先駆けて公道での試乗会が実施された。走り自慢のSUVと評判だが、その実力は本当なのか? じっくりと吟味してみた。

●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之

HONDA 新型ZR-V

HONDA 新型ZR-V 公道試乗インプレ

スポーティと快適性が
高い次元で融合した好モデル
 以前、クローズドコースで行われたプロトモデル試乗の時は、やや荒れたロードコースということもあってドライビングの信頼感や安心感のチェックが中心。シビック譲りの基本性能の高さに好印象を抱いたが、それがストップ&ゴーが絡む公道でどう変わるのか?
 まず街乗りの乗り心地で感じたサスの硬さはスポーティ。引き締まっているが妙な荒さはなく、短いストロークの中にしなやかさが練り込まれている。タイヤ接地面から車体まで一体となった感触の良さが印象的だ。
 強いて難点を挙げるならば、ざらつくような細かな振動やロードノイズが気になったこと。この程度は車格相応とも思えるが、乗り心地の良さが際立つだけにかえって気になってしまう。ちなみにFFと4WDを比べると、細かな揺れの収束が早い4WDが勝る印象だ。
 高速道路に入るとZR-Vの本領が発揮される。速度域が高くなるほどストロークはしなやかさを増し、操縦感覚でも乗り心地でも据わりのいい落ち着きを示す。ルーズといっては語弊があるが、操舵時の初期挙動から収束感が強く、挙動も神経質な部分を感じない。路面のギャップなども何気ない所作で済ませてしまうような安心感すら覚える。ロングドライブに対する適性も明らかに高い。
 高速長距離時に重宝するLKAの補正のかかり具合も好感触。車線内の位置取りよりも車線方向と車体軸線の一致を優先させた制御で、システム側からの補正操舵と自身の操舵がぶつかることもなかった。現実的な状況で使いやすい、もしくは違和感を覚えにくい最小の制御といえる。
 パワーフィールはe:HEV車とガソリン車の違いが最も大きいポイントだ。e:HEV車はアクセル操作に素直。電動らしい演出は少なく即応性が高いが、急激なペダル操作でも自然なトルク増減反応を示す。欲しい加速と狙った巡航速度への移行がしやすい特性である。また、シリーズ式(電動)走行時のエンジン稼働では速度変化と一致感のある回転数制御を行い、ドライバーの感覚によく合っている。
 一方、ガソリン車はターボらしい加速感が見所。1.5ℓとはいえダウンサイジングターボは低回転から太いトルクを発生する。それでいて高回転も伸びやかだ。e:HEVに比べると急アクセルでは一瞬の間があり、ダウンシフトのラグもあるが、瞬発力が効いた加速の印象にも繋がる。また、CVTながらステップ変速的な制御を行っているのでドライビングのリズム感も良好だ。滑らか運転をすれば回転変化穏やかに力感のあるパワーフィールを示すが、パワーフィールはe:HEV車よりも活発。スポーティ&スペシャリティなSUVとして選ぶならe:HEV車よりも似合いとも言える。

スポーツ寄りの万能タイプ
実用性の高さも見逃せない
 ZR-Vの走りを一言に喩えれば「自然体」。プレミアムとかファントゥドライブで背伸びしている感覚がない。運転を意識しないでドライブを楽しめる。初見のコーナーもうねりやパッチで荒れた路面もいつもの運転でこなしてくれる。
 それでいて運転も乗り味もストレスが少ない。開発責任者の言を借りるなら”求めたのは疲労少なく目的地に辿り着く走り“であり、そのとおりのクルマである。レジャー&ツーリングのための良質な走りに感心させられた。
 レジャー用途での使い勝手を考えた居住性や積載性も備えた、履き替え時のコスト負担も考慮したタイヤサイズを選択している。さらに実用性の高い運転支援機能も併せ持つ。見た目からスペシャリティなキャラを第一に感じるが、その中身はユーザーの現実に立って実践力を高めた、とても真面目なSUVなのだ。

ZR-V e:HEV Z(FF)

■主要諸元(ZR-V e:HEV Z・FF)
●全長×全幅×全高(㎜):4570×1840×1620 ●ホイールベース(㎜):2655 車両重量(㎏):1580 ●パワーユニット:1993㏄直4DOHC(141PS/18.6㎏・m)+モーター(135kW/315Nm) ●WLTCモード総合燃費:22.0㎞/ℓ ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)ディスク(R) ●サスペンション:マクファーソン式(F)マルチリンク式(R) ●タイヤ:225/55R18

e:HEVはシビックから採用が始まった2ℓエンジンの新開発ユニットがベース。SUVの車重増に対応すべく、低中速域の力強さを意識した制御が施されている。
必要十分のパワースペックに加え卓越したシャシー性能を持つことで高速走行は得意。操舵支援もサポートに徹した制御でドライブする楽しみを損なわない味付けだ。

ZR-V Z(4WD)

価格:376万8600円

■主要諸元(ZR-V Z(4WD))
●全長×全幅×全高(㎜):4570×1840×1620 ●ホイールベース(㎜):2655 車両重量(㎏):1540 ●パワーユニット:1496㏄直4DOHCターボ(178PS/24.5㎏・m) ●WLTCモード総合燃費:13.9㎞/ℓ ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)ディスク(R) ●サスペンション:マクファーソン式(F)マルチリンク式(R) ●タイヤ:225/55R18

ツーリング性能が際立つe:HEV車に対して、1.5ℓターボ車は加速やハンドリングを巧みにアピールするスポーティ仕様という印象。微妙なキャラの違いがある。

新型ZR-V 最終結論

やっぱりe:HEVが鉄板か、それともターボもアリ?

性能機能が凝縮された
全方位に秀でる新世代ミドルSUV

 スペシャリティ感のあるスタイルが曲者だ。走り最優先とかプレミアム性とか少しハードルの高さを感じてしまうかもしれないが、ZR-Vの実態は高い実践力を持つ真面目に本気で造られたSUV。
 走りはごく大雑把な分類では「スポーティ」となるが、クルマ趣味の魅力を求めた特性ではなく、精神的にも肉体的にもストレス少なく扱える走りを狙って開発されている。操る手応えがないと言えば誤解されそうだが、高速も山岳路も状況が変わっても細々と考えたり操作したりする必要がない。長距離ツーリングも苦にならないタイプであり、走りの汎用性はすこぶる高い。
 スペシャリティの視点ではコスパも気になるが、これも現実的。ヴェゼルとは車格差があるため約100万円ほど高くなるが、ガソリン車ならヴェゼルのe:HEV車とラップしてくる。CR-Vのハイブリッド車と比べると少し安い価格帯が中心だが、オンロードの走行性能に重きを置けば、コスパはトップレベルといえる。
 レジャー&ツーリング向けのSUVを探しているユーザーにとっては鉄板の選択とまではいえないが、必ず比較検討の中に入れるべきモデル、これがZR-Vの立ち位置。ミドルSUVの新定番になりえる存在だ。

後席格納時は完全にフラットになり、荷室床面と開口部の段差を最小限にするなど、日常生活での使いやすさ意識した設計も見所。
通信連携機能にも対応するホンダコネクトディスプレーはZ系は標準、X系はOP設定となる。機能面でもデザイン面でも装着を推奨する装備だ。
4WD車に採用されるリアルタイムAWDは上級モデル譲りのシステムがベースとなり走破力が向上。雪路はもちろん、オンロードでも走行性能向上に貢献してくれる。
スタイリングに個性を求める向きには、ホンダアクセスからリリースされる純正ドレスアップパーツも見逃せない。標準車以上にスポーティな魅力を味わえる。
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内外出版/月刊自家用車

ライタープロフィール

内外出版/月刊自家用車

オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

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