新車試乗レポート
更新日:2022.10.26 / 掲載日:2022.10.25

【ホンダ 新型フィット RS】良心的価格設定のRSに注目!

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス

 このところホンダ車の仕上がりがいい。e:HEVの精度が高まっているのもそうだし、ハンドリングや乗り心地にさらに磨きがかかっているようだ。2020年2月にリリースされた4代目フィットもそうで、当時行われた試乗会は印象的だった。正直それまでフィットの“走り”にはそれほど興味はなかったが、その日を境に考えは変わった。ヨーロッパ車に引けを取らないコントロール性の高いスポーティな走りを手に入れたのだ。

自然と笑顔になってくる乗り心地

新型フィットRS

 要因は高い剛性のプラットフォームで、それを実現したことによりサスペンションのセッティングの自由度が高まった。それまでボディが柔らかいことで足を固めなければならなかった呪縛が解かれたのだ。結果、サスペンションを柔らかく設定してもスポーティなハンドリングと快適な乗り心地を両立することができるようになった。
 ということで、マイナーチェンジしたフィットに乗ったのだが、その乗り味の良さにまたまた感動した。久しぶりのフィットの動きはイメージ通りで満足のいくものであった。
 最初にステアリングを握ったのはホームと呼ばれる標準車(FWD)だ。走っていると笑顔になってしまう。一般道もそうだし、箱根のワインディングでもそれは変わらない。15インチとのマッチングがいいのだろう。硬さはなく、ストロークのある足が終始気持ちのいい乗り心地を提供してくれる。これを他モデルで例えるならフランス車に近い。コーナーでのロールは違和感なく抑えられ、キャビンは常にフラットに保たれる。
 試乗後その辺を開発責任者に問うと、ホンダの目指す走りが偶然そこに類似したと話してくれた。どうやらフランス車に近い乗り味というのは何度か耳にしているようだ。そこで、それを表す数値的なエビデンスはあるのか聞くと、数値はちょうどドイツ車とフランス車の間にあるというこたえだった。乗員の頭と胸部の揺れに関する検査のようだが、そのデータがヨーロッパ車の水準であることを物語っている。


「RS」はトータルバランスの高さが魅力

新型フィットRS

 では今回の目玉RSに話を移そう。このモデルはその名が示す通り、よりスポーティな走りに寄せている。RSが目指したのは“Everyday sport”で、“Pure Sports”を掲げるタイプRとの違いはそこになる。レースのカテゴリーで言えば、タイプRは「スーパー耐久」、RSは「エンジョイ耐久」だそうだ。
 よって乗り心地は硬めかといえば、若干その方向にチューンされている。タイヤは16インチにアップされているし、バネレートも標準車から変更された。具体的にはフロントはバネレートを下げ、リアは上げている。とはいえ、全ての領域でそれは許容範囲で、フィット本来の乗り心地の良さがスポイルされるわけではないのでご心配なく。また、今回はアクセルレスポンスを高めているのもポイント。反応を早めれば感覚的にスポーティに感じられるというわけだ。ちなみに、タイヤはYOKOHAMAのBluEarth-GT AE51を履いていた。専用タイヤではなくリプレイス用なので購入に都合がいい。低燃費性能を担保しながら操縦安定性も高いのがウリとなる。
 個人的には16インチによくとどめたと思う。RSのようなコンセプトのモデルを開発するにあたり、開発者はより見栄えの良い17インチを選びそうだからだ。専用の前後バンパー、リアスポイラー等でお化粧されたスポーティなエクステリアに大径ホイールはよく似合う。もちろん、それによりスタビリティは上がるだろうが、本来フィットの持つ気持ちよさとトータルバランスは崩れてしまうような気がする。それを鑑みると16インチに軍配が上がるであろう。
 とはいえ、それでもより大径ホイールにしたいという方もいらっしゃるのは確か。見た目重視って思考もアリだ。なのでそんな方のために無限MUGENが17インチホイールを用意していることも付け加えよう。クルマに何を求めるかは十人十色である。
 この他ではパワーソースに手が入っているのがトピック。モーターの最高出力を14psアップの123psにすることで力強さを増している。アクセルレスポンスの向上と相まって動き出しのスムーズさはかなり良好だ。

まとめ

新型フィットRS

 ということで、マイナーチェンジされたフィットはさらにいい方向へと仕上がっていた。15インチの標準車の走りもスポーティなRSの走りも共にドライブを楽しくしてくれる。さらに言えば、RSの価格設定(e:HEV RS:234万6300円)が良心的なのも見逃せない。標準車をアフターマーケットでカスタムしたらこの価格差ではおさまらないのは明らかだ。その意味ではRSはお買い得かもしれない。11月10日に追加されるガソリンエンジンのRSともども要チェックである。

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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