新車試乗レポート
更新日:2022.11.04 / 掲載日:2022.10.17

【試乗レポート スバル クロストレック】ルックスはトレンディながら中身は実直な進化

文●大音安弘 写真●ユニット・コンパス、スバル
 2022年9月にワールドプレミアされた新型車「クロストレック」は、スバルのエントリーSUVの役目を担う世界戦略車だ。もちろん、日本とも縁の深いモデルであり、日本名「スバルXV」で販売されてきたもの。第3世代となる新型では、世界共通のクロストレックの名で今秋に発表される予定だ。今回は一足早く日本仕様のクロストレックのプロトタイプに試乗する機会を得た。プロトタイプに、見て触れて感じたスバルの新コンパクトクロスオーバーのリアルな感想をお届けしたい。

スバルの最新スペックにアップデート

スバル クロストレック

 インプレッサシリーズのクロスオーバーモデルとして、愛され続けてきたスバルXVを取り巻く状況は、近年大きく変化している。世界的なSUVブームの恩恵により、スバルの身近なSUVとして、特にグローバルでの販売増に貢献してきた。今やインプレッサシリーズ(スポーツ、セダン、XV及びクロストレック)の世界販売の7割を超えるシェアを、スバルXV及びクロストレックが占めるほどなのだ。その一方で、ブームは多様なライバルSUVを生み、モデルとして更なる競争力が求められるようになった。そこで新型は、インプレッサのクロスオーバーモデルではなく、コンパクトクロスオーバーとしての機能や魅力を追求するべく、クロストレックの開発が先行された。もちろん、インプレッサから離れた存在になったようことではない。それを示すように、ボディサイズは、現行同等の全長4480mm×全幅1800mm×全高1580mm(ルーフレール・シャークフィン装着車)となり、道路や駐車場事情に影響する全幅はキープ。さらに全長が5mmショートとなり、全高が+25mmアップしているが、人気のルーフレール装着した状態を比較すると、1580mmとなり、現行型の1595mmよりも抑えられているのがポイントだ。プラットフォームは、現行の「SGP」を進化させた「SGP×フルインナーフレーム」ホイールベースも同じ、全長も同等なので前後オーバーハングもほぼ変わらない。SUVとして重要となる最低地上高も200mmがキープされている。

 アグレッシブとなったエクステリアは、SUVらしいワイルドさが強められている。大型ヘキサゴングリルとシャープなヘッドライト、ワイドなスタンスを演出するプロテクションモールなどのデザインが、勇ましいフロントマスクを作り上げた。サイドビューは、SUVよりもクロスオーバーであることを意識し、クーペのような尻下がりのラインと後方になるほどコンパクトとなるガラスエリアが疾走感を生み走りの良さを感じさせる。敢えてサイドモールやプロテクションを強調しないのも、そのためだろう。一方、リヤスタイルは、クロスーバーとSUVらしさの両方を強調。上部はスポーティなデザインだが、リヤバンパーはSUVらしい堅牢さを訴える。もちろん、そのフォルムは、XVの系譜を強く感じさせるが、よりクロストレックの独自性も強められている。今回の試乗車は上級仕様であるため、全車18インチタイヤを装着。タイヤ自体は新型よりオールシーズンタイヤが標準となる。

スバル クロストレック

パワーユニットはハイブリッドの「e-BOXER」に一本化

スバル クロストレック

 インテリアで目玉となるのは、最新のインフォメーションシステムだ。レヴォーグやアウトバックに採用される縦型11.6インチインフォメーションシステムが、上級グレードに標準化される。これまでのシステムと大きく異なるのが、ナビゲーションシステムがオプション化されたこと。スマホとの連携で良いという人は、車載ナビ無しという選択もできる。意外なことに、メーターパネルはアナログ2眼式を継承。ただ視認性に優れるものなので、その点も不足に感じることはないだろう。ダッシュボードまわりは、先進性が高まっているが、インテリア全体は、質実剛健な作りとなっており、過度な装飾もなく、落ち着いた雰囲気を放つ。しかし、そんな中にも隠された新アイテムが存在する。それが完全新設計のフロントシートだ。医学的知見を取り入れたもので、三半規管のある頭部の揺れを抑えることで、運転及び移動中の快適さを高めるのが狙いだ。このシートの実力は、今回の試乗でも体験することができた。

 パワーユニットは、ハイブリッドの「e-BOXER」に集約。145ps/188Nmを発生する自然吸気仕様の2.0L水平対向4気筒エンジンに13.6ps/65Nmの電気モーターを追加したもの。エンジンとモーターの性能は、現行型にも搭載されるものと同様だが、制御が変更されている。さらにAWD車だけでなく、新たに前輪のみを駆動するFF車が追加されたのも大きなトピックだ。構造上は、後輪を駆動するドライブシャフトと後輪用デフが省かれるので、10kg~20kgほど軽量になるようだ。

ボディのしっかり感や操作に対する正確性は期待値以上

スバル クロストレック

 今回の試乗場所は、クローズドのワインディングコース。道幅が狭く傾斜の強い上りもあるため、舗装された林道を彷彿させる。但し、路面状況は極めて良好なのでロードノイズや路面変化による影響も少ないことを付け加えておきたい。

 試乗に用意されたのは、新型クロストレックプロトタイプのAWD車とFF車の2種類。どちらも18インチ仕様の上級グレードだ。評判の良い現行型インプレッサと現行型XVで採用される新世代プラットフォーム「SGP」を進化させた「SGP×フルインナーフレーム」だけあって、ボディはしっかりしており、ドライバーの操作に対して、俊敏な反応を見せる。現行型でも高められたステアリングの応答性も、2ピニオン式電動パワーステアリングに変更されたことで、よりリニアさが増した印象だ。走りの好印象に大きく貢献したと思われるのが、新開発フロントシートだ。より腰をしっかりと支えられるようになったことで、ワインディングのようなシーンでも、身体の全体の無駄な動きが抑制された。それを証明するように、従来型と似たシート形状でありながら、サイドサポートが体に押し付けられるようなシーンはなかった。同じコースを現行型XVでも走行したが、そちらではシートの形状を体で知ることが出来たことからも効果は明白だ。新構造を持たないリヤシートでは、身体の触れが大きくなるシーンあったので、今後はリヤシートにも同様の機構が取り入れられることを望みたい。もちろん、その実力を図るのは路面変化の激しい公道を試すまでお預けとしたいが、かなり期待して良いだろう。

 走りの要となるe-BOXERも、制御を大きく変更したようで、繰り返されたエンジンの始動と停止が抑えられ、パワーが必要とされるシーンでは、エンジンをしっかりと動かすように。これによりモーターとの相性も良くなり、走りに気持ち良さが生まれた。それでいて、エンジン始動時や回転数が高まるシーンでのノイズも低減。正直、これまでのe-BOXERとは別物に思えた。いよいよe-BOXERの本領発揮かもしれない。

FFモデルがかなりの好印象。オンロード中心なら積極的に選びたい

スバル クロストレック

 予想外だったのが、駆動の異なる2台の走りの差だ。現行型インプレッサでも、前輪駆動車の魅力が見直されているが、新クロストレックでは、足回りや電動パワステを専用の味付けにするなど、改めてFF車としての魅力を追求している。FF車は、強いボディを活かしたソフトな足の味付けとし、軽快な動きとスムーズな曲がりを得意とする。一方、AWD車は、高いボディ剛性を活かし、悪路も安心して走れる堅牢さを意識した味付けで最近のスポーティな走りも得意とするSUVらしいもの。ハードというほどの硬さはないが、路面をしっかりと4輪で掴むような手応えを感じられる。コーナーをオンザレールで駆け抜ける感覚は、スバルのAWD車らしいものだ。「剛」のAWD車と「しなやかさ」のFF車となっており、そのキャラクターは明確に差別化されている。

 どちらかベストかは、ユーザーが求める活躍シーンで異なるだろう。ただFF車を廉価版と見くびることだけはやめておくべきだ。そもそもスバルの普通乗用車の歴史は、水平対向エンジンのFF車からスタートとしている。その歴史に恥じない出来の良さだ。プロトタイプでの私の評価では、走りの気持ち良さを含め、FF車に軍配を上げる。オンロード主体ならば、良い選択だと思う。

まとめ

 新クロストレックは、スバルのエントリーSUVとしての価格帯も重視しているため、アイサイトXや高性能オーディオなどは非設定。しかし、新世代フロントシートをはじめ、単眼カメラやドライバー異常時対応システムの搭載などのスバル初の試みもあり、必要なものはしっかりと盛り込んでいることが分かる。流行に合わせたコンパクトSUVではなく、真面目に生んだ新しい実用車なのだ。それを証明するように、価格を抑えられるFF車にもしっかりと個性を与えた。このプロトタイプとのコミュニケーションでは、スバルを支える次世代車の気合を感じることが出来た。それだけに価格にも期待したい。

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大音安弘(おおと やすひろ)

ライタープロフィール

大音安弘(おおと やすひろ)

1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。

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