輸入車
更新日:2021.09.04 / 掲載日:2021.09.04
DAIMLER【グーワールド コラム/トピックス】

文●岡本幸一郎 写真●メルセデス・ベンツ
(掲載されている内容はグーワールド本誌2021年10月号の内容です)
EUでは2035年には内燃エンジンを搭載する車両の販売が禁止となる見通しであることが報じられたばかりの7月22日、ダイムラーは、メルセデス・ベンツが2025年以降に発売する新型車をEVのみとし、2030年までにEVのみを生産するメーカーになる計画であることを明らかにした。
同社はすでに2017年に、全車を2022年までに電動化するとともに、すべてのセグメントでBEVをラインアップする旨を述べており、あくまで市場動向を見据えた上で判断するとしているが、“EVファースト”から“EVオンリー”へと方針の大転換を図ることになる。EVシフトを加速するために増額される研究開発費は、2030年までに400億ユーロ(約5兆2000億円)以上に達する一方で、内燃エンジンやプラグインハイブリッド技術への投資は80%減少する。
バッテリーについては200GWh超の年間生産能力が必要とし、英国拠点の電動モーター会社を買収したほか、欧州だけでなく米国も含め諸パートナーと8つのバッテリー工場を新たに建設する計画があることを明らかにした。
さらに、エネルギー密度を高め、これまでにない航続距離と、より短い充電時間の実現を目指し、高度に標準化した次世代バッテリーを開発するため、バッテリーのスタートアップと提携するほか、全固体電池についても技術パートナーとともに研開発究を進めていくという。
車両アーキテクチャについても、EVのみを生産するという計画を現実のものとするため、2025年までに3種類のEV専用プラットフォームを新たに導入することを予定している。従業員へのトレーニングも強化しており、雇用の転換を図るとともに、2020年には約2万人が、電動化車両に関するトレーニングを受けたという。
オラ・ケレニウスCEOは「EVシフトは特に我々が属する高級車の分野で顕著に加速しており、大規模な事業転換を決断した。次に訪れる時代での成功を確信している」という旨を述べている。こうしたダイムラーの大胆な方針転換が、自動車業界全体に与える影響は小さくない。

EQブランドのフラッグシップである「EQS」は、プラットフォームレベルから新設計で高性能モデルにはツインモーターを用意。まさに市場のニュータイプだ。

乗用車のみならず、商用車でも長い歴史を誇るメルセデス・ベンツ。当然、EV化の計画にはこれらトラック、バスなどの大型モデルも含まれている。

メルセデス・ベンツはボディに使う鋼板についてもCO2フリーとするべく、スウェーデンの新興企業の株式を取得。製造を含めてカーボンニュートラルを目指している。

カーボンニュートラルへの取り組みのひとつがクリーン電力の導入。2022年から太陽光、風力、水力で構成されるCO2フリーの電力を使い生産が行われる予定だ。