輸入車
更新日:2020.10.01 / 掲載日:2020.09.28
【試乗レポート ランドローバー ディフェンダー】思わずうなる完成度の高さ

ランドローバー ディフェンダー 110
文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス
1948年から続くランドローバーブランドに新たな風が吹いた。レンジローバーと双璧となるアイコニックのディフェンダーが生まれ変わったのだ。すでに自動車メディアでは大きく取り上げられているので、それを目にした方も多くいらっしゃるであろう。とにもかくにも世界での注目度は高く、日本もすでに多くの予約が入っている。
日本で話題となったのは、2019年のラグビーワールドカップ最終戦に違いない。試合後リーチ・マイケルを乗せて登場したのが新型ディフェンダー(コンセプトモデル)だ。オフィシャルスポンサーのランドローバーはそんな演出をした。TVを見ながら「あれって、もしかして新型ディフェンダー?」と思った方も少なくないだろう。
そんな新型ディフェンダーをテストドライブする機会を得た。場所は上越妙高。そこでは市街地とワインディング、それとオフロードコースを走ることができた。
ディフェンダー 110
ディフェンダー 110
先代モデルのディテールを上手に取り入れたデザイン

ディフェンダー 110は5ドアで3列シートを備える
エクステリアの印象はインパクトが大きく、これまでにすでに何度か見ていたものの、それでもジーっと見つめてしまう仕上がり。また、その中に従来型のシンボリックなデザインを探してしまうのはワタクシだけではないだろう。ランドローバーを長年愛してきた者にとって普通の行為である。で、それがヘッドライトユニットだったり、グリルやバンパー形状だったり、ルーフサイドの天窓だったりというディテールにちりばめられている。背面タイヤもそう。これまでのモデルへのオマージュだ。長年ランドローバーデザイン部門のトップを務めてきたジェリー・マクガバン氏から我々へのプレゼントである。
骨格となるアーキテクチャーは新設計のD7xが採用される。といってもベースになるのはレンジローバー系なので、そのクオリティは初めから担保される。ラダーフレーム&リジッドアクスルという旧態依然な方式からは卒業だ。もはやモノコックでそれ以上の剛性は保たれる。

用途や好みに応じるパッケージオプションが豊富に用意される
ディフェンダー 110 前席
ディフェンダー 110 2列目シート
ディフェンダー 110 3列目シート
3ドアの「90」と5ドアの「110」をラインアップ

ディフェンダー 90
ボディタイプはこれまで同様2種類用意される。「90(ナインティ)」と呼ばれる3ドアショートボディと5ドアロングボディの「110(ワンテン)」だ。後者はかつてのモデルでホイールベースが110インチだったことにちなんだ命名だが、新型はそれ以上の長さとなる。3メートル超えだ。今回試乗したのはこちら。新型コロナの影響で生産工場がストップしたことから輸入台数が絞られていることもあり、今は人気の高い110のボリュームが多いのだとか。
そこに載せられるパワーユニットは、300馬力を発揮する2L直4ターボ。すでにイヴォークなど多くのモデルに使われているガソリンユニットだ。本国には6シリンダーエンジンもあるが、日本仕様はこれ1本となった。ただ、この辺も新型コロナの影響とも考えられる。生産ラインが順調に復活すれば、エンジンバリエーションも今後増えるであろう。
リアルオフローダーのイメージを覆す軽快な走り

視界の良さに加えて、カメラを使ったサポートも充実している
では実際に走らせた印象だが、市街地やワインディングでの動きは思いのほか機敏でストレスはない。一見して鈍重なので、出だしは少々もっさりしているのではないかと想像していたが、そんなことはなかった。アクセルやステアリング操作に対する反応もよく、運転は楽しい。この辺の扱いやすさはひと昔前のオフローダーとは別物と言えよう。
ただ、今回の試乗では高速道路を走らせていないので、もしかしたら高速巡航においてはもっと排気量の大きなエンジンが欲しくなるかもしれない。2Lユニットはそもそも回して走らせる性格なので、高速では音や振動が気になる可能性がある。そこは次回に試したいところだ。
ディフェンダーにしか出せない唯我独尊の世界が広がる

悪路走破性はランドローバー車のなかでもトップクラス
そんなディフェンダーで、ここはさすがだとうなった部分がある。快適な乗り心地だ。エアサスペンションのセッティングは絶妙で、低速から高負荷時までずっと快適さが保たれる。これはレンジローバーのそれと近い。これまでレンジローバーで培ってきたノウハウが注入されているようだ。長年エアサスを研究開発してきた彼らのセッティング技術は世界有数だと思っている。
乗り味はしっとりしているところもあればガチッと路面を捕まえる場面もある。路面の入力に対し、絶妙な反応だ。きっとサスペンションストロークを長く取れる構造もそれを助けていることだろう。ちなみに、19インチでも十分合格点だが、オフロード用に用意された18インチはさらにランドローバーらしさが増す気がした。特にコーナリング中のフロントサスの動きがそうで、少しロールをさせながらの荷重の抑え込み方が彼ら流だ。
なんて感じの新型ディフェンダー。エクステリアはもちろん、インテリアも唯我独尊の世界が広がる。ワタクシを含め好きな人は好きなんだよね、この世界。それに世の中キャンプブーム。こんなクルマでテンションアゲアゲなんて作戦もいいかも。
3列目シートまで乗員がいる状態
3列目シートを格納した状態
2列目シートまで格納した状態
ランドローバー ディフェンダー 110 S 5+2シート(8速AT)
■全長×全幅×全高:5018×2105×1967mm
■ホイールベース:3022mm
■車両重量:2243kg
■エンジン:直4DOHCターボ
■総排気量:1997cc
■最高出力:300ps/5500rpm
■最大トルク:40.8kgm/1500-4000rpm
■サスペンション前/後:ダブルウィッシュボーン/マルチリンク
■ブレーキ前後:Vディスク
■タイヤ前後:255/65R19