輸入車
更新日:2019.08.22 / 掲載日:2018.11.20

【試乗レポート ボルボ V60】見てよし、乗ってよし、積んでよし。ミドルワゴンの本命来たる

ボルボ V60 T5 Inscription

文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス

 待望の、新しいボルボV60がデビューした。実車を目の前にしてまず驚いたのは、スタイリングの大幅な様変わりだ。デザインが直線基調になって精悍さが増し、先代とは別の車種かと思うほどイメージが変わっていたのだから。先代のスポーティな感じもよかったけれど、新型の直線基調のほうがボルボのステーションワゴンという雰囲気があると思う。

スタイリッシュに生まれ変わったデザイン。それでいて荷室容量は大幅アップ

 ところで、新しいV60を理解するうえで重要となってくるのは「キャラクターのチェンジ!」だ。2011年に登場した初代モデルはスポーティなステーションワゴンというキャラクターだった。だから兄貴分で実用ワゴンのV70に対して軽快なデザインで、荷室の広さを誇るような設計ではなかったのだ。 しかし、初のフルモデルチェンジで生まれ変わったV60に触れると、その路線がそのまま継承されているわけではないことがすぐにわかる。
 まずはデザイン。もっともわかりやすいのがDピラー、つまり車体のいちばん後方にある柱の形状だ。ここはその傾き方でワゴンやSUVのキャラクターを見分けるポイントのひとつなのだが、先代のV60は傾斜が強めだったが新型は立てて垂直に近づけている。そこからスポーティなフォルムよりも実用性(荷室容量)を重視していると受け取ることができるのだ。
 荷室容量も増えた。後席使用時の荷室は、430Lだった先代に対して新型は529L。なんと99Lも増したのだから、積める荷物の量はかなり違う。ちなみにこの数字は、ひとまわり大きな車体だったV70の最終モデル(575L)にこそ届かないものの、アウディA4アバント、メルセデス・ベンツCクラスエステート、BMW3シリーズツーリングなど同クラスのライバルには勝る数値。キャンプなどレジャーでステーションワゴンを使うのであれば、やはり荷室容量は気にしたいポイントだ。そんな意味でも、新型になって魅力は大幅に高まったといる。

後席のひざまわりに余裕が生まれファミリーカーとしての資質もアップ

 もうひとつ実用性で見逃せないのが、後席の拡大だ。先代V60ではあまり広くなかった後席乗員のひざと前席との間のゆとりは、大きく拡大。数値でいえば15mmだったのが51mmと大幅に増したのだからぜんぜん違う。参考までに、この数値はV70の最終モデルの「42mm」を上まわるものである。

 キャラクターが実用寄りになり、荷室や後席が広がったのはどうしてか? 実は大きな理由は「V70」が役目を終えたことにある。従来は「実用性を誇るV70に対してスポーティなV60」とわかりやすい住み分けがあったが、新世代になってV70はV90にバトンタッチ。空白になった「V70」の後継モデルも兼ねるのが、新型V60の使命なのだ。
 だから、ボディサイズも全長は125mmも伸びて従来のV70に近いサイズに成長。大型化しているのである。

ハイブリッドモデルを2グレード用意

 では、メカニズムを見てみよう。プラットフォームをはじめとするメカニズムは90シリーズやXC60と同じくボルボの最新アーキテクチャを採用。しかしながら興味深いのはパワートレインで、ガソリンエンジンとPHEV(プラグインハイブリッド)が用意されるものの、90シリーズやXC60に搭載されるディーゼルエンジンは設定がないだけでなく、追加される予定もないのだ(海外にはV60もディーゼルの設定がある)。
 ボルボカージャパンによると「日本サイドの方針で低燃費車として大きな車両はハイブリッドとディーゼルを用意するが、小さめの車両はハイブリッドのみで先進性をアピールする」という。その境目がXC60とV60の間にあり、V60ではディーゼルが用意されないというのである。
 その代わり、といってはなんだがこれまた大きなトピックが盛り込まれた。なんと、ハイブリッドが2タイプ用意されているのだ。これまでボルボのハイブリッドは1タイプだけだったが、新型V60から新たな展開がはじまったというのだからスルーできない。
 ボルボのPHEVシステムは前輪をエンジン、後輪をモーターで駆動するから「Twin Engine(ツインエンジン)」と名付けられているが、従来のシステムは「T8 Twin Engine」と呼んでいた。そして新しく加わったシステムの名称は「T6 Twin Engine」。数字から想像できるように、ポジショニングは従来のシステムの下となる。違いはどこにあるか? それはエンジンスペックだ。2Lの4気筒にターボとスーパーチャージャーでドーピングしたエンジンは、「T8 Twin Engine」では318馬力を誇る。いっぽうで新登場の「T6 Twin Engine」は253馬力とやや控えめとなっている。……とはいえ、253馬力もあれば一般的にいえばかなりパワフルな部類。認識としては「T8の318馬力が超高出力で、T6の253馬力は普通に高出力」という感じで覚えておけばいい。
 ちなみにバッテリーやモーターなど電気系統は両者とも共通で、モーター最高出力はフロントが34kWでリヤが65kW。エンジンとモーターを合計したシステム出力は、「T8 Twin Engine」が405馬力、「T6 Twin Engine」では340馬力とかなりのハイスペックだ。ただし、どちらも納車は来年春からの予定で、今回はまだ試乗することができなかった。

ラインアップを通じてパワフルなエンジンを搭載

 今回試乗したのは日本上陸第一弾となる「T5 Inscription(インスクリプション)」。エンジンは2Lのガソリン4気筒ターボで254馬力。ちなみにベーシックグレードの「T5 Momentum(モメンタム)」もパワートレインは共通で、ライバルのドイツ勢はベーシックグレードだと出力の低いエンジンとなるが、ボトムモデルでも高出力エンジンを搭載するのがV60のライバルに対するアドバンテージのひとつだったりもする。

スマホ感覚で扱えるナビ画面など使いやすさに好印象

 この馴染む感じがいいよね。「T5 Inscription」で走りはじめてみれば、ボルボの近年の好調さの理由がよくわかる気がする。インテリアは上質かつ洗練されていて、インパネ中央の縦長で大型のディスプレイにより先進感もバッチリ。このあたりの雰囲気は、最新世代のボルボは本当に上手だ。
 そして大型ディスプレイはドイツのライバルたちと違ってタッチパネルだからスマホ感覚で扱え、日本人にも馴染みやすいのも乗るたびにいいと思う。
 254馬力もあれば、エンジンパワーは十分すぎるほど。アクセルを踏み込めば勢いよく車体を加速させてくれるが、あくまで急激に出力を立ち上げて荒々しく速度を増すのではなくジェントルな感じを持っているのがボルボらしい。そしてシャープだけど過敏すぎない挙動を示す操縦性は、プラットフォームの出来のよさを実感。気持ちよく反応してドライバーが楽しめつつ、同乗者にもやさしいしロングドライブでも疲れない走りの味付けだ。

立体駐車場を意識して1850mmに抑えた全幅など日本市場への理解も深い

 実用的な荷室、広い後席、質の良い走り。新しいボルボV60はいま、このクラスのワゴンを選ぶ人にとってかなり魅力的な1台。対向車と衝突しそうになった時にも作動して減速し被害を軽減する自動ブレーキをはじめ、世界最高水準の先進安全性能を全車に標準で備えているのも積極的に選びたくなる大きな理由である。
 そしてもうひとつ、このV60には大きなトピックがある。それは全幅だ。1850mmという全幅は、先代より15mm狭くなっている。なんと、その理由は日本にあるという。
 じつは最近の機械式立体駐車場の多くは、駐車できるクルマの全幅が1850mm。つまりは先代ではNGだったけれど新型だとOKという環境が多いのだ。そして驚くことに、この基準は日本だけのもの(そもそも海外には機械式立体駐車場がほぼない)。ボルボの日本法人によると「日本からのお願いが認められてこの全幅に決まった」のだとか。


ボルボ V60 T5 Inscription(8速AT)


全長×全幅×全高 4760×1850×1435mm
ホイールベース 2870mm
トレッド前/後 1600mm
車両重量 1700kg
エンジン 直列4気筒DOHCターボ
総排気量 1968cc
最高出力 254ps/5500rpm
最大トルク 35.7kgm/1500-4800rpm
サスペンション前/後 ダブルウィッシュボーン/インテグラル
ブレーキ前後 Vディスク
タイヤ前後 235/45R18

販売価格 499万円~819万円(全グレード)




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グーネットマガジン編集部

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