輸入車
更新日:2024.10.04 / 掲載日:2024.10.04
ステアリングを握ればわかる!スペックだけでは伝わらない輸入車が持つ“走りの魅力”
写真●ユニット・コンパス ※ナンバープレートはすべて、はめ込み合成です。
(掲載されている内容はグーワールド本誌2024年11月号「ステアリングを握ればわかる! 輸入車らしい走りの魅力とは?」記事の内容です)
なぜ輸入車を選ぶのだろう?個性豊かなデザインやブランドへの憧れ、はたまた日本車にはないボディタイプなど輸入車を選ぶ理由はいくつもある。それだけではない。輸入車を乗り継いでいるファンは、走りにも独自の魅力を感じている。スペックや写真では伝わらない輸入車の走りとは。数ある輸入車から独自の世界観を備えた代表的なモデルを紹介する。目的地がなくても思わず出かけたくなるような、人生がもっとワクワクして楽しめる、そんなとびきりの1台に出会うために。輸入車ファンの仲間として、クルマ選びのお手伝いができれば幸いだ。
走れば走るほど感じるドイツ車の頼もしさと安心感[メルセデス・ベンツ Eクラス オールテレイン]
文と写真●ユニット・コンパス
輸入車を代表するラグジュアリーカー
輸入車らしい走りの魅力をテーマにしたときにいち早く候補に挙がったのがメルセデスだった。
理由はいくつかあるが、技術的にもコンセプト的にも自動車ブランドのトップランナーであることは、推挙する大きな理由になった。特に2017年に中長期経営計画として掲げた「CASE」というコネクト、自動運転、シェア&サービス、電気自動車の頭文字をとったヴィジョンはまさしく慧眼で、今の多くの自動車がその影響を受けている。
そんなメルセデスの最新作がEクラス。歴史あるラグジュアリーカーとして多くの愛用者がいて、モデルバリエーションも豊富。パワートレインもガソリン、ディーゼル、プラグインHVと、生活や興味、好みに応じて選べる自由がある。そのなかで選択したのは、オールテレイン。ディーゼル+エアサスというロングラン向きのキャラクターだ。
都内から富士山麓周辺を経由して小淵沢を目指すという今回たどったルートでは、市街地から都市高速、標高差のある高速道路やツイスティな山間路など、さまざまなシチュエーションを経験することができた。
Eクラスオールテレインが搭載するのはモーターを備えないシンプルなディーゼルエンジンなのだが、とにかく総合的な完成度に優れているという印象だ。発進加速のマナーに優れ、高速では極めてスムーズに大きな車体を走らせる。なにより、1000km近い航続距離は立派だし経済的だ。
長距離、長時間走らせたときの疲労の少なさも特筆すべきポイント。
国産車ではバブル期以降エアサス採用車はほぼ存在しないが、輸入車は高価格帯モデルを中心に改良を重ねてきた。そのおかげで快適性とスポーティさの両立は非常に高いレベルにある。ドライブモードにより、ラウンジのような快適空間からスポーティな走りまでを瞬時に切り替えられる。
新型Eクラスは、とにかく現在実用化している機能を全方位で搭載している最先端の輸入車だ。助手席にまで専用モニターが搭載された取材車両は、まるでモーターショーのコンセプトカーのごとし。高価ではあるが、それだけの内容を備えていることも間違いない。
メルセデス・ベンツ E 220 d 4MATIC オールテレイン(9速AT) ●全長×全幅×全高:4960×1890×1495mm ●ホイールベース:2960mm ●車両重量:2060kg ●エンジン:直4DOHCディーゼルターボ+モーター ●排気量:1992cc ●エンジン最高出力:197ps/3600rpm ●エンジン最大トルク:44.9kgm/1800-2800rpm ●新車価格:1098万円(Eクラス オールテレインのみ)
思わず笑みがこぼれる!つねに高揚感キープのイタリア車[アルファ ロメオ トナーレ ハイブリッド]
文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス
※ナンバープレートはすべて、はめ込み合成です。
レースで活躍したDNAが気持ちを盛り上げる!
自動車がもし単なる移動手段で、無機質な乗り物だったら今日のような発展はなかっただろう。エスカレーターやエレベーターに乗って、「これどこ製?」なんて気にする人は少ない。というか、メーカー名すら知らないのが一般的だ。
ところが、自動車は違う。国産か輸入車かという区別はあるものの、ほとんどがメーカー名で語られる。特にフェラーリやポルシェやBMWなど、“クセ強”なブランドこそ、その傾向は強い。
ここで紹介するアルファ ロメオもそのひとつ。このイタリアを代表するブランドのクルマは、個性的なものばかりだ。イタリア特有のデザインから始まり、エンジンやハンドリングのフィーリング、エキゾーストノートまでこだわりを感じる。
トナーレはそんなアルファ ロメオの最も新しいモデル。彼ら初のSUVステルヴィオの弟分として開発された。なので、カテゴリーはコンパクトSUV。日本でも扱いやすいサイズに仕上がっている。
そしてその中身は、同門の類に漏れずアルファ ロメオらしさ全開。コンパクトながら艶っぽいスタイリング、鋭い目のようなヘッドライト、それと伝統のデザインを継承するホイールなど一目でそれとわかる要素を満載する。彼らのアイコンとなる盾型グリルを隠してもわかる装いだ。
それはドライバーズシートに乗り込んでもそう。コックピットのタイトな空間が気分を盛り上げる。シフトチェンジはボタンやダイヤルではなく、レバーをしっかり握って動かすのが彼ら流だ。さらにいえば、円形の大型で奥行きのある2つのメーターがアルファ ロメオであることを強くアピールする。アルファ ロメオのクラシックカーを一台持っているが、そこはまさに伝統の意匠である。
なんてスペースに身を置くだけでワクワクするが、このクルマは走らせるとさらにクセの強さが顔を出す。ステアリングはクイックで、シャシーの反応は早く、硬めのサスペンションがレーシーな気分を盛り上げる。かなりスポーティなのだ。
その背景には彼らが戦前からレース業界で幅を利かせていた歴史がある。そもそもアルファ ロメオはF1の前身グランプリレースやミッレミリアなどで活躍していたレーシーなブランドなのだ。
というように、自動車は移動するプロセスが楽しめる。なので、どのブランドを選ぶかがキモ。自分好みのテイストをチョイスして楽しむのが正しいカーライフである。
アルファ ロメオ トナーレ プラグインハイブリッド Q4 ヴェローチェ(6速AT) ●全長×全幅×全高:4530×1835×1615mm ●ホイールベース:2635mm ●車両重量:1880kg ●エンジン:直4SOHCターボ ●排気量:1331cc ●エンジン最高出力:180ps/5750rpm ●エンジン最大トルク:27.5kgm/1850rpm ●モーター最高出力(前):33kW/8000rpm ●モーター最大トルク(前):5.4kgm/8000rpm ●モーター最高出力(後):94kW/5000rpm ●モーター最大トルク(後):25.5kgm/2000rpm ●新車価格:620万円〜762万円(トナーレ 全グレード)
普通なのに気持ちがいい!それでデフォルトなフランス車[ルノー ルーテシア E-TECH フルハイブリッド]
文と写真●ユニット・コンパス
※ナンバープレートはすべて、はめ込み合成です。
気心の知れた相棒と過ごすような旅の時間
煌びやかな装飾より、実用性のなかにある美しさに価値を感じるのがフランスらしさ。
実用車であるルーテシアも、旅先でふとクルマを振り返ったときに、まるで一枚の絵画のように思える瞬間がある。立体的で抑揚豊かなボディサイドに夕焼けが映り込んだときなど、思わずハッとする美しさだ。
フランス車といえば、古くはリビングのソファを思わせる座り心地のいいシートで名を馳せた。布生地を張ったシンプルな形状のシートに身体を預けると、まるで包み込まれるような柔らかさに驚いたものだ。
ではルーテシアのシートは? 見た目はシンプルでオーソドックス。でも腰掛けてわかるのが想像以上のしっかり感。身体をきちんと受け止め、路面からの不快な振動をシャットアウトする骨太な座り心地。それが時間と距離を重ねるほどありがたく思えてくる。サポートが適切だからなのだろう。無意識にふんばるようなこともないため疲れにくい。シティ派コンパクトカーかと思いきや、ロングドライブが苦にならない。
そうした印象を後押しするのが、輸入車としてはユニークなフルハイブリッドシステム「E-TECH」。低速ではモーターを活用して効率よく静かでスムーズに、80km/hを超える高速域ではエンジンが主体になって巡航し、追い越しなどで加速が必要な際にはモーターが後押しするというもの。運転した感覚もナチュラルだから、ルノーに期待する元気のよさは健在だ。
高速道路での快適さと余裕は確実にワンランク上がった。フランスは最高速度が130km/h制限なので、日本の環境では余裕ある印象。小さな車体を感じさせないゆとりのクルージングが見事だ。
正直にいうと、パワートレインの制御は完璧ではない。シチュエーションによってはドライバーの意図にそぐわないギア選択をする場合もあった。それでもルーテシアのことが嫌にならなかったのは、このクルマがチャーミングだから。つまらない人間がミスをしたら腹が立つが、好感を持っている相手ならそれも愛嬌だと我慢できる。ルーテシア、得なキャラだと思う。
すでにモデルライフは終盤。ルノー車の常としてわかりやすい先進装備などの売りがあるわけではない。それでも、開発時に上級車からのダウンサイザーを想定していただけあって、いまだに実力は一線級だ。基本性能を実直に磨き上げた結果、そのデザインと同様に長く愛用できるタイムレスな魅力を備えている。