輸入車
更新日:2022.12.09 / 掲載日:2022.11.28

【VW ID.4】ついに上陸したVW製BEVの実力を見る【石井昌道】

文●石井昌道 写真●VW

 いよいよ日本発売となったフォルクスワーゲンID.4。同社のBEV専用プラットフォームであるMEBを採用したモデルとしては日本初上陸。欧州では先にハッチバックのID.3が発売されているが、いまのところおもに欧州向けとされており、クロスオーバーSUVのID.4がグローバル展開車となっている。


 MEBはBEV専用とすることで、効率良くバッテリーを搭載し、ホイールベースを長くとって広い室内空間を得ることを実現。エンジン車用プラットフォームのMQBを採用した7代目ゴルフのBEVバージョンであるe-GolfとID.3を比べてみると、e-Golfは全長4265×全幅1800×全高1480mm、ホイールベース2635mmでバッテリー容量は35.8kWhだったが、ID.3は全長4261×全幅1809×全高1568mm、ホイールベース2770mmでバッテリー容量は最大77kWhにも及ぶ。バッテリーの進化でエネルギー密度が高まっていることもあるが、じつに2倍以上の容量に達しているのだ。

 ID.4は全長4585×全幅1850×全高1640mm、ホイールベース2770mm。ボディサイズが近いティグアンは全長4520mm、ホイールベース2675mmとなっていて、ID.4のほうが全長は65mm長く、ホイールベースは95mm長い。エンジン車に対してショートオーバーハング・ロングホイールベースが可能になっているのは明らかで、とくに後席の居住性には余裕がある。フルサイズSUV並の広さだ。ホイールベースが長くなると小回りが効きづらくなりそうなものだが、MEBは後輪駆動を基本とするため前輪の切れ角が大きく、最小回転半径はティグアンと同一の5.4m。ドイツでは諸元として示されるW to W(オーバーハングまで含めたウォール・トゥ・ウォール)ではティグアン11.5mに対して10.2mと小さくなっている。W to WはBセグメントのポロでも10.6mであり、それよりも実質的な小回りは効く。BEV専用としたことで得られるパッケージングのメリットが最大限に活きているのだ。


 日本仕様はいまのところ2種類で、ID.4 Lite Launch Editionはバッテリー容量52kWh、一充電走行距離388km(WLTCモード)、車両価格499万9000円、ID.4 Pro Launch Editionは77kWh、561km、636万5000円となっている。


 ID.4 Pro Launch Editionに試乗がかなったが、フォルクスワーゲンらしさが存分に感じられた。わずかに硬めながら操縦安定性が高く安心感がある乗り心地、あまりとんがったところがなく馴染みやすい運転感覚、プレミアムブランドに匹敵する上質感など、ゴルフやパサートと同様なのだ。モーターは最高出力150kW(204PS)、最大トルク310Nmで0−100km/h加速8.5秒。とんでもなく速いというわけではないが、十分なパフォーマンスを備えていて、同等クラスのエンジン車に比べれば実用域の加速では上回り、ドライバビリティも良好。何よりも好ましいのは、トルクの出方が唐突ではなくスムーズで上品なことだ。

 回生ブレーキの強度はDレンジとBレンジの2種類で、前者はごく軽い回生なので街中などでは後者のほうが運転しやすいだろう。ワンペダルドライブではないのでブレーキペダルもしっかり使う必要があるが、踏み替え頻度は一般的なエンジン車よりも低い。流れのいい高速道路ではDレンジを使ったほうがスーッと転がっていく感覚が強く、気持ちがいいうえに電費も伸びそうだ


 ミッドサイズSUVは日本でも成長著しいセグメントであり、BEVでも日産アリア、トヨタbZ4X/スバル・ソルテラ、ボルボC40/XC40、アウディQ4 e-tron、メルセデス・ベンツEQB、BMW iX3、テスラ・モデルY、ヒョンデIONIQ 5、BYD ATTO3(2023年1月発売)などじつに選択肢が多いが、ID.4はバランスが良く、真剣に購入を考えたときに有力候補になりそうだ。その背中を押してくれるのが、急速充電ネットワークだ。フォルクスワーゲンは日本のインポーターのなかでディーラー数がもっとも多い246拠点だが、そのうち158拠点がID.4の取扱店で90kW以上の急速充電器を順次設置。さらに、グループの強みをいかしてポルシェ、アウディとともにプレミアムチャージングアライアンス(PCA)を組んだので3ブランドのディーラーで急速充電器が使えることになる。独自で数も多い急速充電ネットワークはかなりの強みになりそうだ。

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石井昌道(いしい まさみち)

ライタープロフィール

石井昌道(いしい まさみち)

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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