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更新日:2022.10.25 / 掲載日:2022.10.25
【BMW 新型X7】高級SUVに表現された次世代BMWの姿【石井昌道】

文●石井昌道 写真●BMW
BMWもSUVのXシリーズが販売の大きな柱となっているが、なかでもフラッグシップとなっているのがX7だ。メルセデス・ベンツGLS、アウディQ7などをライバルとするフルサイズSUVで全長5165×全幅2000×全高1835mmの堂々たる体躯。日本の都市部では持て余しそうだが、圧倒的な存在感があるのはたしかだ。そのX7がマイナーチェンジによって新世代のフロントマスクとなった。

キドニーグリルとツインヘッドライトという伝統的なデザインを守りつつも、上下二分割のスプリット・ヘッドライトとして表情を大きく変えた。ロービームとハイビームは下側に配置、上側はポジションライト、デイタイム・ランニング・ライト、ウインカーとなる。デイタイム・ランニング・ライトが左右二つずつというのが、従来のツイン・ヘッドライトの視覚的な役割を果たしているようだ。今後は他のモデルにもこういったデザインが採用されるものと思われる。キドニーグリルにはカスケード・ライト、アイコニック・グローなどキラキラと光るアイテムを用意してゴージャスな雰囲気を醸し出している。縦長キドニーグリルを採用した現行4シリーズなどは好き嫌いがはっきりと分かれるが、X7の新たなフロントマスクは好感を持つ人が多いのではないだろうか? 実際に走行しているのを見ると、迫力がありながら洗練されていて、素直にかっこいいと思えた。

インテリアはiXのようなワイドで湾曲しているディスプレイを採用。ドライバーの眼前でメーターの機能を果たすインフォメーションディスプレイは12.3インチ、中央のコントロール・ディスプレイは14.9インチでシームレスに繋げられ、一つのカーブド・ディスプレイを構成している。iDriveも最新のOS8となり、コントローラーやシフトセレクターが収まるセンターコンソール周りもiXに準じたものになっている。
現在の日本導入モデル(マイナーチェンジ前)は、直列6気筒3.0LディーゼルのxDrive40dとV型8気筒ガソリン・ツインターボのM50iの2種で、マイナーチェンジ後も基本は同じだが、BMWらしくアップデートを施している。
ディーゼル・エンジン本体は最高出力340PS、最大トルク700Nmとかわりないが、48V電源のマイルドハイブリッドが改良を受けている。これまでのモーターは最高出力8kW(11PS)、最大トルク53Nmだったが、新型は9kW(12PS)、200Nmとなった。加速ブーストにも使われるので、システムトータルでは352PS、720Nmまで増加される。
V型8気筒ガソリン・ツインターボはこれまで純エンジン車だったが、xDrive40dと同スペックのマイルドハイブリッドを追加。エンジン本体のパワー&トルクはかわりないが、加速ブーストをもったことでネーミングは新たにM60iとなった。

今回はM60iに試乗したが、V8エンジンはトルクに余裕があるため一般的な走行では静かで扱いやすく、極めて洗練された印象を受ける。その一方でアクセルを踏み込んでいけばパワーが炸裂。6000rpmまで勢いよく回すと頭が真っ白になるほど快感がある。2600kgのボディをたった4.7秒で停止から100km/hまで加速させるのだからおそれいる。xDrive なのでパワフルであってもトラクションに不足はなし。あいかわらず8ATも優秀で、コンフォートモードではスムーズに、スポーツモードでは小気味いいシフトショックを伴いながら素早くシフトチェンジ。アクセル操作からドライバーの意図を汲み取って適切なギアを選択してくれるのでドライバビリティにも優れている。
シャシーはエアサスペンションに電子制御ダンパー、アクティブ・ロール・スタビライザー、インテグラル・アクティブ・ステアリングなどハイテクがふんだんに用いられ、スポーティとコンフォートを高い次元でバランスさせている。マイナーチェンジで新たに23インチのタイヤ&ホイールが選択できるようになったのもトピックだが、試乗車は22インチ。それでもかなりの大きさだが、荒れた路面でもヒタヒタと滑らかに走って不快感はまったくなかった。大小様々な凹凸を乗り越えてもエアサスペンション特有の優しいフィーリングでいなしてくれる。その一方、ワインディングロードではアクティブ・ロール・スタビライザーの効果が大きいのか、ロールがグッと抑えられ、BMWらしいシャープなハンドリングが味わえる。道幅が狭くてもコーナーを自信を持って攻められるのは、正確性の高いハンドリングのおかげ。大きなボディを持て余さないことには感心させられた。
エクステリアとインテリアを大幅にアップデートし、走りは3列シートのフルサイズSUVとは思えないほどスポーティ。それでいて最新のシャシーテクノロジーで快適性もトップレベルと文句の付けようがない仕上がりのX7 M60i。マイナーチェンジながら、進化の度合いは大きいのだ。