輸入車
更新日:2022.08.06 / 掲載日:2022.08.06
新型レンジローバーを軽井沢で試す

文●九島辰也 写真●ランドローバー
昨年ワールドプレミアされ、今年1月に日本でも正式な発表に至った新型レンジローバーのステアリングを握りました。場所は毎月訪れている軽井沢。勝手知ったる試乗コースです。

新型の特徴は見た目のインパクトでもわかるように、ライバルとは一線を画すデザイン性の高さと多彩なるパワートレイン。マーケットニーズを熟知したラインナップ構成となります。求められるのは、パワーとサスティナビリティってところでしょうか。2024年にリリースされるフルバッテリー電気自動車(BEV)を睨んだパワーソースが並べられます。
では、まずデザインですが、テーマは“リダクション”、つまり削ぎ落とすことで完成されます。グリルやヘッドライトの位置や形状はアイコンとしてイメージを生かしながらも、その他の部分をシンプルに仕上げています。凸凹のないサーフェイスが個性的ですね。最新の溶接技術がそれを可能にしました。また世代を超えて受け継がれるサイドビューのルーフ、ウエスト、シルの3本のラインとクラムシェルボンネットはそのまま継承。変えるところは変え、そうでないところは技術革新を取り入れています。いやはやお見事。レンジローバーとしての存在感を残しながらモダナイズされました。
しかも空気抵抗値0.30は立派です。きっとロングドライブで役に立つことでしょう。そうそう、ボートテールと呼ばれる後ろ姿もこのクルマの特徴。かつて高級クラシックカーに使われていたデザイン用語が使われました。それを取り入れたことは、新型レンジローバーがラグジュアリーモデルである証でもあります。
インテリアも新しさが前面にアピールされます。スイッチ類はセンターの大型モニターに集約され、ダッシュボードやセンターコンソールはフラットな部分が多く占めます。クルマはどんどん多機能になっていくのに、スイッチが減っているのですからユニーク。チーフ・クリエイティブ・オフィサーのジェリー・マクガヴァン氏のデザイン戦略です。先代がリリースされた時も、「従来型よりスイッチ類を50%削りました」と話していました。さて、今回は何%減らしたんですかね。興味津々です。



ボディタイプは2つで、スタンダードホイールベース(SWB)とそれを200mmストレッチしたロングホイールベース(LWB)が用意されました。後者はレンジローバー史上初めてとなる3列シート7名乗車仕様。ですが、ファーストクラス的に使える4名乗車もあります。新型ランドクルーザーにも同様の4名仕様がありますが、もしかしてこれは流行りなんですかね。ドバイやアブダビあたりのホテルのVIP用リムジンとして使われそうです。
そんな新型レンジローバーの走りについてですが、試乗は2つのモデルで行いました。3リッター直6ディーゼルターボエンジン+マイルドハイブリッドで動かすスタンダードホイールベースと4.4リッターV8ターボガソリンエンジン搭載のロングホイールベースです。最高出力は前者が300ps、後者が530psを発揮します。
言いたいのは、ディーゼルエンジンの秀逸さ。これまで乗ったどのディーゼルユニットよりも静かでパワフルでした。しかも、走り出して1分と経たずにディーゼルと忘れてしまうほど加速は滑らかで、エンジンの吹け上がりもシームレスに気持ちよく回ります。出だしやアイドリング部分をマイルドハイブリッドが積極的に働き、ディーゼルのネガティブポイントをうまい具合に消しています。それに力強さも文句なし。これだけのボディを軽々しく押し出します。
ディーゼルの出来の良さでガソリンエンジンの印象は薄れましたが、もちろん力強さは一級品。ただこちらはロングホイールベースだったので軽快さは感じませんでした。ゆったり走るといった印象です。それでも4WSを装備することで回転はそれほど気を使わなくてもすみます。この辺はありがたい。
時間が少なかったのでそれほど走れませんでしたが、今回はすべてディーゼルエンジンにいい印象を持っていかれました。レンジローバーのような高級車がそれとマッチするのは意外ですよね。やはりクルマは乗ってみないとわからない。その意味からも全パワーソースを試さなくては。近未来に来る完全EV化目前のガソリン&ディーゼルエンジンに期待大です。
