新型車比較・ライバル車対決
更新日:2022.01.25 / 掲載日:2021.12.08
GR86 vs BRZ 「宿命の兄弟モデル」対決!
水平対向2.4ℓエンジンを新採用し、シャシー性能を大きく高めることで魅力的な第2世代へと進化した新型スポーツ、GR86とSUBARU BRZ。
注目すべきは、トヨタとスバルの開発陣がこだわり抜いたという「それぞれの走りの味付け」の違いだ。
紅葉の箱根でその走りを確かめてみた!
●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之
晩秋の箱根を駆ける注目NEWスポーツ!
外見は似ているけれども
性格はかなり異なる2台
全長はカローラスポーツより100㎜以上短く、ホイールベースはアクアより25㎜短い。このサイズで2.4ℓ4気筒をフロントミッドシップに近い後方に配置でき、FR方式が成り立っているのはクーペのボディ形状と水平対向エンジンの賜と言っていいだろう。
これらの基本レイアウトやパッケージングはGR86、BRZともに初代を踏襲しているが、新旧のスペック面の大きな違いはパワースペックだ。2ℓから新開発の2.4ℓに変更。サーキットのプロト車試乗では速くなった程度の印象だったが、公道での変化は劇的だった。従来型は低中回転域のトルクが細くスポーツドライビングではレブリミットから逆算したシフトワーク、一般走行では加速の度のダウンシフトを強いられた。ところが新型は2000回転以下から力強く、浅い領域での踏み増し反応も機敏。MTもATのマニュアル変速も2000~4000回転でリズミカルなシフトが心地いい。巡航ギヤ維持でこなせる登降坂や速度域も大幅に拡がっている。
全開加速は7500回転まで一気。レブリミット直前で多少の落ち込みはあるが、追い込んだスポーツドライビングにもしっかりついてくる。それほど回転を上げなくても速いが、許容回転数まで使い切る醍醐味もある。付け加えるなら5000回転に近づく頃からエンジン音の迫力がグンとアップ。威圧されるほどではないが回す昂揚感も備わっている。
動力性能に関してGR86とBRZに差異はないが、フットワークについては両車で印象が異なっていた。試乗グレードはGR86がRZ、BRZがSであり、装着タイヤサイズは同じなのだが、GR86のほうが路面の当たりがダイレクトできつい。速度抑制段差(ニート)舗装でも細かく突き上げられる。BRZは往なし感あるいは微小ストロークのしなやかさを感じさせるもので衝撃も収束も穏やかだ。
こういった違いはサスストローク制御にも現れ、うねり等の上下動もコーナリング時のロールでもBRZのほうが挙動の連続感や収まりがいい。例えば上下の入力の波形がGR86がギザギザ形ならBRZは波形というような違い。ドライバーの昂揚感を高めるならばGR86の乗り味は効果的かもしれないが、快適性や助手席乗員の立場ならBRZが好まれるだろう。
もちろん、BRZが乗り心地を重視したサスチューンを採用したわけではない。乗り心地は操縦性に対する考え方の違いから派生したに過ぎない。
操舵に素直な回頭とラインコントロール性は両車に共通する特性。ほどほどの速度で走らせているなら操縦性に大きな違いはない。速度が高まるほど、入力が大きくなるほどに違ってくる。
GR86の反応は俊敏だ。どの方向からの入力も力で抑え込む。負荷変動はピーキーであり、かつ忙しい。極めてダイレクト感のある操縦感覚だ。先だってのプロト車でのサーキット試乗ではスリップアングルが大きい時のトラクション抜けはGR86のほうが大きかったが、そういった面も含めてレーシングカートを思わせる。
BRZは繋ぎとの滑らかさで忙しい負荷変動を抑える。4輪のグリップバランスは操作に呼応するように連続的に変化。理性的にコーナリングをまとめていく。反射的な対応をあまり求めず、パフォーマンスの安定を図った特性。GR86がコーナーひとつひとつの速さを追求するタイプなら、BRZはラップタイムを求めるタイプとも言える。
見た目やスペックでは大きく変わらないGR86とBRZだが、ファントゥドライブの捉え方は結構対照的だ。どちらを選んでも楽しめるはずだが、クルマとの付き合い方が異なってくるのも面白い。
BRZ BRZ BRZ BRZ BRZ
TOYOTA GR86
●発表(最新改良)年月日:’21年10月28日(未実施)
●価格帯:279万9000~351万2000円
●販売店:トヨタ全系列全店
●問い合わせ:0800-700-7700(トヨタ自動車お客様相談センター)
サーキットが似合うレーシーな走り! ソリッドなハンドリングも魅力
切れ味鋭いシャープな走りはまさにカート感覚だ!
ドライバーの本能に訴えかける、あるいは反射的対応を求めるような操縦感覚。往なして繋げるような感覚は希薄だが、ダイレクトな操縦感覚はカートを思わせる。良い意味でヤンチャなスポーツ感覚と言い換えてもいいだろう。スウィートスポットが大幅に拡大した新パワートレーンを採用しているが、レブリミット基準で回して走らせたくなるような走りだ。
主要諸元(GR86 RZ・6AT)
●全長×全幅×全高:4265×1775×1310(ルーフアンテナ含む)㎜ ●ホイールベース:2575㎜ ●車両重量:1270㎏ ●パワートレーン:2387㏄水平対向4気筒DOHC ●エンジン最高出力:235PS/7000rpm●エンジン最大トルク:25.5㎏・m/3700rpm ●WLTCモード燃費:11.7㎞/ℓ ●燃料タンク容量:50ℓ<プレミアム> ●サスペンション前/後:マクファーソンストラット式コイルスプリング/ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング ●ブレーキ前/後:ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク ●タイヤサイズ:215/40R18
SUBARU BRZ
●発表(最新改良)年月日:’21年7月29日(未実施)
●価格帯:308万~343万2000円
●販売店:スバル店
●問い合わせ:0120-052215(スバルお客様センター)
公道ステージがターゲット! 路面対応力に優れているのが見どころだ
スポーツからツーリングまで
フレキシブルで懐の深い走り
効率のいいラインをトレースしやすく、乱れたとしても大崩れせずラインを再構築しやすいハンドリング。スバル4WDほどの懐深さはないにしても走りのアレンジ能力と不要なストレスの軽減が心地よく、セオリーにも適っている。限界走行も実用もこなす柔軟性と余力を高めたパワートレーンと相まって、スポーツ&ツーリングを高水準で両立させている。
主要諸元(BRZ S・6MT)
●全長×全幅×全高:4265×1775×1310(ルーフアンテナ含む)㎜ ●ホイールベース:2575㎜ ●車両重量:1270㎏ ●パワートレーン:2387㏄水平対向4気筒DOHC●エンジン最高出力:235PS/7000rpm ●エンジン最大トルク:25.5㎏・m/3700rpm ●WLTCモード燃費:11.9㎞/ℓ ●燃料タンク容量:50ℓ<プレミアム> ●サスペンション前/後:ストラット式独立懸架/ダブルウィッシュボーン式独立懸架 ●ブレーキ前/後:ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク ●タイヤサイズ:215/40R18
ライタープロフィール
オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。
オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。