新型車比較・ライバル車対決
更新日:2021.03.24 / 掲載日:2021.03.23
NISSAN 新型ノート vs HONDA フィット ガチンコ対決

新型ノートとフィットハイブリッドは、共にモーター主体の走りがストロングポイント。それぞれの走りの違いは大いに気になるところだ。ここではこの2台を乗り比べることで、どちらの走りが優れているのか? を確認したい。
NISSAN ノート

価格帯:202万9500~276万3200円

e-POWERはエンジンで発電した電気でモーターを動かすシリーズ式ハイブリッド。高速走行時はエンジン負荷が高まるため、燃費が落ち込むという弱点があるが、電動走行を身近にした功績は大きい。
HONDA フィット ハイブリッド

価格帯:199万7600~253万6600円

フィットに搭載されるe:HEVは、通常はモーター駆動を用いるが、高速走行時など負荷が高まる状況になるとエンジン駆動に切り替わる。シリーズ式ながらも高速走行も難なくこなせる実力ユニットだ。
共に走りは電動主体だが、味付け方向に個性が宿る
以前、ホンダは小排気量のハイブリッドモデルにはパラレル式のi-DCDを採用していたが、現行フィットからシリーズ式ハイブリッドに、巡航用エンジン直動機構を備えたe:HEVに変更。ホンダのハイブリッドモデルはすべてe:HEVになることが決定した。ブレーキシステムもハイブリッド車では標準的な回生油圧協調型を採用するなど、直動機構も含めて構造的にはノートよりも凝ったシステムである。
ノートのe-POWERに対してe:HEVの長所は、高速巡航時に直動機構が働くことが挙げられる。巡航/緩加減速ではエンジンパワーを主駆動力として電動が補助的に介入する、いわゆるパラレル式として振る舞うのだ。
フィットとしては初のe:HEVだが、上級クラスでのノウハウがあるせいか、シリーズ制御走行でも、ノートと比べてドライブフィールで目立って劣る部分はない。しかし、加速性能はノートが上回る。パワーウエイトレシオを見てもノートが勝っているので当然だが、加速移行時の小気味よさとか伸びやかさも一枚上手。機敏さと滑らかさが巧みに両立しているのも魅力だ。
ノートは、加減速や速度とエンジン回転数の一致感はフィットに劣るのだが、静粛性の高さもあってエンジンの存在を感じるシーンが少ない。市街地走行はもちろん、高速走行でも意外と気にならない。フィットはハイブリッド車的、ノートは電気自動車的と理解してもいいだろう。
ノートの走りは車格以上、高速域でも抜群の安定感
機敏さと滑らかさの両立したフットワークはノートのアドバンテージだが、サスストロークの使い方の深さや硬柔の感触は、フィットのほうがファミリー&レジャーに向いた乗り味を持つ。ただし、ノートと比較すると軸周りが緩いような微小な揺れ返しが多い。高速域では据わりとか、収束感等にも甘さを感じられる。4名乗車で和気藹々のドライブを楽しむならフィットの方が似合いだが、安定感や車格感ある走り味を求めるならばノートの方が適している。
また2台にとって大きな武器となるACCとLKAの運転支援機能は、両車ともに優れた実用性を示す。ただ、ACCのコーナーでの減速制御やLKAの車線内の位置取りなどでの制御の精度感はノートが優れていた。とはいえ、フィットが不正確という訳ではなく、ドライバーの感性との馴染みよさの違いを感じる程度の僅かな差だ。

フィットにはホンダセンシングが標準装着されるため、運転支援機能などを同レベルで揃えて比較すると、ノートの方が割高な価格設定になるが、キャラも走りも近い2台だ。

フィットの方が若干ソフトなセッティングだが、2台ともモーター出力には余裕があるため、高速走行をまったく苦にしない。ただ、燃費に関してはエンジン直動機構を持つフィットにアドバンテージがある。
新型ノート vs フィット ガチンコ対決【結論】
共にクラストップの実力派だが走りの方向性は好対照

フィット試乗車のリュクスは内装の設えにプレミアム感を持たせたグレードだが、それでもフィットの基本コンセプトはファミリー&レジャー。今回のツーリングでも、走りや音の品質にまでこだわってプレミアム性を高めたノートと比較すると、車格感で劣るのは否めない。もちろん、見晴らしの良さや多様な積載性など楽しく使うならフィットが勝る。また走行条件がフィットに合っていたせいか、大差と言う程ではないが燃費でも優位。フィットに比べるとノートの方が運転状況に対して燃費の振れ幅が大きかった。
全般を通して感じたのはそれぞれのキャラに似合いの性能と走りの味わいを持つということ。両車とも外観や内装、ユーティリティ、走りの嗜好が抜群にまとまりが良く、違った視点での明快な主張を持った「両雄」と呼ぶにふさわしい。共にコンパクトクラスの代表として、申し分のない存在だ。
●文:川島 茂夫 ●写真:奥隅 圭之