新型車比較・ライバル車対決
更新日:2021.01.21 / 掲載日:2021.01.20
SUBARU「フォレスター」vs「レヴォーグ」新1.8Lターボ対決

昨年末に2020-2021日本カー・オブ・ザ・イヤーの栄冠を勝ち取った新型レヴォーグ。名実ともに「今イチバン良いクルマ」を証明したわけだが、そのしなやかな走りを支える新エンジンも大きな魅力のひとつだ。そして、レヴォーグの登場とほぼ同時期にこのニューエンジンを搭載した新しいフォレスターもデビュー。その走りはいかほどのものか?注目のスバル対決だ!
SUBARU 新世代1.8L ターボエンジン

●エンジン形式:CB18 ●種類:水平対向4気筒1.8L DOHC 16バルブ デュアルAVCS直噴ターボ“DIT” ●総排気量:1795cc ●最高出力<ネット>:177PS(130kW)/5200~5600rpm ●最大トルク<ネット>:30.6kg・m(300N・m)/1600~3600rpm ●燃料種類:無鉛レギュラーガソリン
従来と同じく直噴ターボを採用するが、まったくの新型として開発されている。実用性能の向上と燃費の改善に更なるロングストローク化と低負荷時の超希薄燃焼などを採用。1.8Lながらストロークは2.5LのFB25型に迫る。また、ボアピッチの縮小によりエンジン長を従来のFB16型より40mm短縮し、搭載時のフロントオーバーハング重量軽減を図った。組み合わされるCVTは強い屈曲率でも効率の落ちにくいチェーン式のベルトの特徴を活かし、変速比幅を拡大。柔軟なドライバビリティとターボらしい昂揚感のあるパワーフィールが見どころだ。
フォレスター SPORT

●発表(最新改良):2018年6月20日(2020年10月22日) ●車両本体価格:328万9000円
引き締まったフットワークでオンロード性能を高めた!
スバルSUV戦略の旗艦となるモデル。アウトドアレジャー用途への適性を高めたキャビン設計やパッケージング、4WD制御を採用している。マイナーチェンジでは2.5Lガソリン車を廃止。2Lハイブリッドのeボクサーを標準パワートレーンとし、レヴォーグから展開している1.8Lターボ搭載の「スポーツ」を最上級仕様として新設定した。

新型1.8Lターボを搭載するスポーツは、専用開発のダンパーとコイルスプリングを採用。スポーティな走りが魅力的だ。
ブラック塗装のフロントグリルや、ダークメタリック塗装のアルミホイールなどでより精悍なイメージに。左右2本出しマフラーが高性能をアピールする。

従来モデルとデザインは同様だが、加飾パネルやドアトリムにウルトラスエード表皮などの上質な素材を使用。高級感を高めている。
シート素材にはホールド性に優れたウルトラスエード/本革を採用。最上級スポーツグレードに相応しい質感だ。
後席は左右6:4で分割格納可能。荷室左右の操作レバーで倒せるのが便利だ。シート格納時にフロアには若干傾斜が残る。
■フォレスター SPORT(4WD)主要諸元
●全長×全幅×全高(mm):4625×1815×1730 ●ホイールベース(mm):2670 ●車両重量(kg):1590 ●パワートレーン:1795cc水平対向4気筒DOHC直噴ガソリンターボ(177PS/30.6kg・m) ●トランスミッション:CVT ●最小回転半径(m):5.4 ●燃料タンク(L):63<レギュラー> ●燃料消費率(WLTCモード:km/L):13.6 ●タイヤサイズ:225/55R18
レヴォーグ STIスポーツ EX

●発表(最新改良):2020年10月15日(―) ●車両本体価格:409万2000円
スポーツし過ぎない気持ちいい走りでバランス良し!
ワゴンブームを牽引してきた躍進期のレガシィ・ツーリングワゴンのコンセプトを引き継ぐモデルとして誕生し、2代目となる新型では同車の持ち味であるスポーツ&ツーリング性能の向上と走りの質感の改善が施された。また、新開発の1.8Lターボの搭載やスバル初となる電子制御ダンパーの採用などハードウェアも一新された。

今回の試乗車はスバル初の電子制御ダンパーを採用したSTIスポーツグレード。 サスペンションやステアリングなどの設定を自分好みにアレンジ可能だ。
新デザイン思想BOLDERによる、密度の高い塊感が見る者に力強い印象を与える。STIスポーツ系グレードは専用18インチホイールを装備。

水平基調に機能的にまとめられた先進のグラスコックピット。11.6インチの縦型センターインフォメーションディスプレイが目を引く。
STIスポーツはボルドー/ブラックの専用内装。フロントシートのホールド性を向上させ、姿勢保持もしやすいように配慮されている。
4:2:4分割可倒式後席のため荷室アレンジも豊富。荷室左右のスイッチで後席格納もワンタッチだ。トノカバーはラゲッジ床下に収納可能。
■レヴォーグ STIスポーツ EX(4WD)主要諸元
●全長×全幅×全高(mm):4755×1795×1500 ●ホイールベース(mm):2670 ●車両重量(kg):1580 ●パワートレーン:1795cc水平対向4気筒DOHC直噴ガソリンターボ(177PS/30.6kg・m) ●トランスミッション:CVT ●最小回転半径(m):5.5 ●燃料タンク(L):63<レギュラー> ●燃料消費率(WLTCモード:km/L):13.6 ●タイヤサイズ:225/45R18
フォレスターvsレヴォーグ試乗比較
スバル新世代を代表するハイレベルな2モデル!
前車軸周りの低重心は水平対向の大きな長所だが、縦置きFFベースのためフロントオーバーハング重量の増加が短所。また、エンジンルーム幅によるピストンストロークの制限もある。こういったデメリットの改善が、レヴォーグから採用された新世代エンジンのCB18の設計要点のひとつ。シャシー性能もそうだが、新型レヴォーグの開発時のノウハウが時間差僅かで現行モデルに注がれているのが昨今のスバル車の特徴である。
ここで試乗したフォレスター・スポーツもレヴォーグ開発技術波及モデルのひとつ。レヴォーグのパワートレーンを移植すると共に専用開発のダンパーを採用。スポーツの名のとおりオンロード性能を強化しているのが特徴だ。
ただし、フォレスターのラインナップとしてはオンロード寄りとなるが最低地上高は標準系同様の220mm。前後のエアダム周りも標準系同様。悪路向けの4WD制御システムのXモードも装備する。しかも装着タイヤはXブレイクと同じくオールシーズン。悪路対応力低下要素はロール剛性が高まったことくらいで、総合的な悪路適性はXブレイク並みと言える。
さらに言えばダウンサイジングターボらしく低回転から発生する太いトルクはオン&ラフロード両面で優れたドライバビリティを示す。30kg・mを超えるトルクは国内向け現行スバル車では最大であり、そのゆとりは日常走行域からも十分に活かされ、汎用性に優れた高性能エンジンでもある。
レヴォーグでは実用性能や余力感を基本に高回転まで伸びやかな加速性能が見所となるが、フォレスターでは車重を感じさせない大トルクがオン&ラフロードでの扱いやすさに活かされている。
ちなみにWLTC相互モード燃費は両車ともに13・6km/L。誇れるほどの数値ではないが、動力性能面のアドバンテージを考慮するなら納得できる範疇だろう。
フットワークについては前述のとおり従来モデルに比べると抑えが利いたロール制御など全体的に引き締まっているが、無理にストロークを詰めた印象はない。ストローク速度は程よく抑制されているが意外と深いストロークを使う。ストローク量よりも収まりのよさを重視した特性であり、安定感と穏やかさのバランスがいい。SUVとしては良質な乗り心地だ。
操縦性も同様である。切れ味や軽快感を誇張するような演出がなく、操舵初期から綺麗にラインに乗っていく。従来モデルに比べると回頭感覚とラインコントロールが一致。前後のグリップバランスがよくなっていた。
こういったフットワークの特徴もレヴォーグと似ている。もちろん、レヴォーグのほうがキレも限界付近での粘りでも勝っている。車重に大きな違いはないのだが、切り返し等の挙動に重心高の違いを意識させられる。低重心の小気味よさと高重心をストロークでいなすしなやかさの違いである。
もっとも、そこまで行けば善し悪しよりも好き嫌いの領域でもある。嗜好的な意味でのスポーツ性を求めるならレヴォーグのハンドリングは好ましいが、フォレスターの着座位置でキレを求めれば忙しい横Gの変化で乗員の負担が増大してしまう。スポーツ性という点では物足りなさを感じるかもしれないが、緊張感の少ない運転感覚を基準にするならフォレスターは好バランスだ。
こうして乗り比べてみるとフォレスター・スポーツがレヴォーグから発展したSUVのように思えてくる。同じパワートレーンを搭載しているせいもあるが、操安性や走りの味付けの根幹の部分を共用し、それぞれがスポーツワゴンとして、SUVとして進化した感じなのだ。
その共通した部分がスバルファン限定ではなく、同カテゴリーの一般的なユーザーにも理解しやすいのもスバル新世代と評する由縁。スバル車以外のユーザーも一考するだけの価値ある両車である。
フォレスターか?レヴォーグか?選び分けのPOINT
走りのテイストはどちらもかなり近い
ワゴンかSUVか、使用用途で考えたい
重心高の増加と乗り心地の面から従来のフォレスターは定常円旋回に入ってからの操舵応答を落としていた。操舵初期の回頭感覚にスバル車らしさはあるが、レヴォーグと比較すると如何にも別系統の車種といった印象である。しかし、今回追加されたスポーツのドライブフィールはパワートレーン関連だけでなくフットワークも含めてレヴォーグにかなり似た印象がある。スポーツ性に強くこだわればレヴォーグに分があるのは間違いないが、そこまででもないならワゴンとSUVの適応用途の違いだけで選び分けてもいいだろう。
●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之