新型車比較・ライバル車対決
更新日:2020.05.29 / 掲載日:2020.04.24
TOYOTAヤリス、HONDAフィット、NISSANノートで往復200km実走チェック!

目指す志向は異なれども、走りには自信があるこの3車種たち。ならばその実力を見極めるにはロングドライブに出かけるのが手っ取り早い。どのモデルが一番になるのだろうか?
房総半島縦断

11:00 千葉・木更津市
スタート地点からしばらくは木更津市街を走る。10kmを超えるころから燃費の伸びが目立って違ってきた。すでにヤリスがかなり優秀だ。
12:00 館山自動車道・鋸南町付近
館山道に入った直後は通行量も多かったが、南下するにつれて交通量は落ち着いてきた。フィットの和やかな乗り味が印象的だ。
12:20 千葉・富浦IC付近
インター出口のコンビニで一時休憩。4台とも難なく高速走行をこなす実力があるが、それでもヤリスが一歩リードの感を強く受ける。
12:50 千葉・館山市
館山エリアから南側は通行量は多いものの、信号で止まることも少なく淡々と走った印象。3台のハイブリッド車の燃費の伸びが著しい。
13:20 千葉・千倉町
目的地の房総半島南端の千倉エリアに到着。海岸線沿いはコーナーも多く走りごたえがある。ヤリス2台のドライバーが楽しそうだった。
15:10 千葉・館山市
休憩した後、木更津方面へ。帰路は交通量が多く速度が稼げないが燃費は上昇傾向。ヤリスのガソリン車はノート同等を記録したほど。
15:50 千葉・南房総市
ここから再び高速道路を走るルート。エンジン回転が上昇するため、高速を苦手とするハイブリッド車にとっては燃費が伸び悩むはずだが……。
16:20 館山道・金谷町付近
ヤリスはガソリン車もハイブリッド車も水を得た魚のよう。乗り味はもちろん、燃費もかなり良好。THS 2の苦手を克服したのかも?
17:00 アクアライン連絡道:木更津金田IC
アクアラインが大渋滞だったため、急遽ルートを変更してスタート地点と同じ場所をゴールに。走行時間は約6時間の旅となった。
ヤリスの長距離適性は 想像以上に優秀
今回比較するのは、ヤリス2車(ハイブリッド/1.5ガソリン)と、フィットのe:HEV車、そしてノートePOWERの4モデル。この4台を並べて頭に浮かぶ熟語は「下克上」。つまりユーザー視点で捉えれば、ダウンサイジングである。
まず驚いたのはヤリスの走り。THS 2ハイブリッドの武器である燃費性能はさらに向上した印象で、今回のロングドライブでハイブリッド車が示した燃費は約35km/L。途中の郊外路では41km/L超という驚きの数値も叩き出した。ガソリン車でも総合燃費は23km/Lを超えてくるなど、ガソリン車ですらノートePOWERに肉薄する性能を持つ。高速巡航の燃費性能は、ガソリン車でも他社ハイブリッド車と同等と考えていい。
さらに高速巡航時の余力感もクラス水準を上回る。高負荷がかかるシーンでの加速性能はハイブリッド車が勝るが、巡航時の余力感はガソリン車も良好。ヤリス・ガソリン車の高速巡航性能は、今回試乗した4モデルの中で最も大排気量的であり、速度維持のペダルワークも簡単。高速長距離志向の操安性の組み合わせもあって、クラス上のモデル以上のツーリング適性を示す。しかも、軽量小型車ならではの軽快なハンドリングもしっかり残っている。乗り心地が硬めなのが気になるが、それもスポーティな味わいとすればヤリス・ガソリン車は魅力的な存在だ。
そんなヤリスの走りとは別方向に進化を遂げたのがフィットだ。
高速域では少々頼りなく感じられるフットワークだが、先進運転支援機能との相性もよく、安心して身を委ねることができる。車軸周りの揺動感に多少雑な印象を覚えるシーンもあったが、それも雰囲気を壊すほどでもない。低速から高速まで安定したパワーフィールで、全開加速でも無理させた感はなく、同乗者に与えるストレスも少ない。e:HEVへの変更で気になる燃費性能に関しても、絶対値こそヤリスに及ばないが、ハイブリッド車の中では優秀だ。
スポーツ志向のファントゥドライブではなく、走りでもウェルバランスを目指す。そんな新型フィットの狙いが、何のケレン味もなく伝わってくる走りだ。
ノートの走りは志向的にはフィットに近い。ただ、パワーフィールもフットワークも洗練感で劣ってしまう。標準的なシリーズ式ハイブリッドであるePOWERには、強いエンブレ回生制御を行う走行モードなどが備わり、走りに独自の味わいや運転感覚を与えているが、どちらかと言えばパワフルさを売りとしている。また、燃費もアクセルワークの影響が出やすく、振れ幅も大きめだ。
フットワークは、段差乗り越え時の突き上げや車軸周りの揺動など、最新のライバル2車と比較すると、車体骨格周りの強靱さと減衰感に乏しい感じがする。ただし、穏やかな乗り心地と癖のない操縦性は魅力十分で、街乗りでもツーリングでも穏やかに走らせるにはこなれた味があり悪くない。
途中休憩を挟んで約6時間ほどのテストドライブとなったが、得られた印象はけっこう異なる。ヤリスの価値感に合わせれば他2車は劣るクルマとなるし、フィットの価値感、ノートの価値感に合わせてもそれは同様。それぞれのモデルの価値感をしっかりと確認できた試乗となった。
ヤリス
1.5Lガソリン車
最新パワートレーンを搭載するだけに走りの良さは予想していたが、それ以上に驚いたのは燃費性能。間違いなくガソリン車トップクラスの実力車だ。
ハイブリッド車
壁を突き抜けた感すら感じる燃費性能を確認できたが、最新THS2モデルらしいレスポンスの良さも改めて実感。走りの質で選ぶのもアリだ。
ハイブリッド車もガソリン車も ツーリング適性はかなり優秀
軽い車重と実用域で豊かなトルク、細かなコントロールに的確に追従するドライバビリティ。ハイブリッド車では何の不思議もないが、1.5Lガソリン車でも同様の印象を受ける。省燃費のための特別な制御を行っている感じもなく、ゆとりを感じながら燃費も稼げてしまう。フットワークは高速寄りの設定。タウンユースでは少々路面感覚が強く出てくる傾向がある。高速長距離ツーリングを得意とするスポーティモデルと考えてもいい。
フィット

もう少し元気があっても? と感じた瞬間もあったが、穏やかな走りに慣れてくると、そんな気持ちは消えていく。燃費も乗り味もかなりの優等生だ。
ハイブリッド車は万能タイプ 高速走行も苦もなくこなす
操舵感やペダルフィールも含めて、穏やかかつ滑らかな運転がしやすい。特にe:HEVにシステムを変更したハイブリッド車のパワーフィールは巧みで、電動ならではの力感や反応を持ちながら、ガソリン車から乗り換えても自然に馴染めるドライバビリティを示す。直動機構の効果で高速巡航時の余力感も高い。フットワークは日常域の乗り心地を優先したもので、軽快さや切れ味は今ひとつだが、穏やかな乗り味は幅広いユーザー層に満足してもらえるだろう。
ノート

最新2モデルと比べると荒々しい部分も目立つが総じて楽しいドライブ。燃費性能も及ばないが、唯一無二の走りの魅力を考えれば十分満足できる。
電動駆動らしさを楽しめる 力強いパワーフィールが魅力
モーターで駆動するため、運転感覚は限りなく電気自動車に近い。アクセル踏み込み時の強力なダッシュ力や、加減速が効いたメリハリのある走りは、e-POWERならでは醍醐味の一つだ。エンブレ回生を強化し停車までサポートする1ペダルドライブが可能だが、油圧式ブレーキシステムを採用するため、1ペダルドライブを用いないと加減速が頻繁な状況で燃費が低下しやすい傾向がある。フットワークは車軸周りの揺動感など雑味がちょっと多いが、このクラスとしては操縦性も乗り心地も良好だ。
さらに高まった ヤリスの燃費の良さに驚き
3車3様(ヤリスは2モデルだが)に走りの魅力を再確認できたが、やはり燃費の結果が最も印象に残った。カタログ値からある程度の優劣の推測はできていたが、そろそろ頭打ちかと思えたハイブリッド車で明らかな進化をしたヤリスには驚いてしまった。ガソリン車も合わせて内燃機の効率向上が新世代モデルでは重要ということを再確認させられた。また走りの志向の違いも予想どおり大きかった。先進運転支援機能もあって長距離ツーリング適性はいずれも優秀なのだが、何をして「良い走り」とするかは、乗る人の感性によるところが大きい。設計年次が古いノートにとってはやや分が悪いか? とも考えていたのだが、e-POWERがもたらす電動感はまだまだ魅力十分。よく持ち味を活かしていたのが印象的だった。