新型車比較・ライバル車対決
更新日:2026.07.14 / 掲載日:2026.07.14
上級ミニバン戦線異状アリ!《新型エルグランド vs アルファード/ヴェルファイア 》
最上級クラスに殴り込み! ハイエンドミニバン選びは、どう変わる?
王座に君臨するトヨタ・アルファード&ヴェルファイアに、16年ぶりのフルモデルチェンジを遂げた日産・新型エルグランドが真っ向勝負を挑む。進化した走りが評判のエルグランドが、日本の最上級ミニバン市場の勢力図をどこまで変えられるのだろうか?
●本文:渡辺陽一郎
※本記事の内容は月刊自家用車2026年8月号制作時点(2025年6月中旬)のものです。
新型エルグランド vs アルファード&ヴェルファイア 先取り対決
エルグランドの登場で高級ミニバン市場はどう動く?
日本のファミリーカー市場において、3列シートミニバンは絶大な人気を集めている。現在、国内で販売される小型&普通乗用車の25%前後をミニバンが占めており、全長4500㎜以下のコンパクトクラス、4500〜4800㎜のミドルクラス、4800㎜を超えるLクラスに分類することができる。
この中で、Lクラスミニバンにおけるトヨタのアルファード&ヴェルファイアの販売比率は圧倒的だ。2025年の登録台数を見ると、アルファードはLクラスミニバン全体の65%(1か月平均登録台数は約6800台)、ヴェルファイアは25%(約2700台)を占めており、両モデルを合計すると90%近くに達している。実質的に1万台に迫る規模であり、高価格車でありながら、カローラシリーズと同等と考えていい。つまり、トヨタの国内販売を支える最重要車種だからこそ、ライバルとの販売競争には絶対に負けられない。
ただ、アルファード&ヴェルファイアは現在、生産が需要に追いついていない。2026年4月上旬時点で多くの販売会社が受注を停止しており、販売店では「受注再開は6月頃と予想している」という。とはいえ、待っているユーザーが非常に多いため、さほど時間を置かずに、再び受注停止する可能性は高いだろう。
そこで大きな注目を集めているのが、16年ぶりにフルモデルチェンジを受ける日産エルグランドの登場だ。かつて日産は海外市場を重視し、国内ミニバンをセレナに統合する計画を立てていた。セレナに500万円に達する最上級の「ルキシオン」を用意したのもそのためだ。
しかし販売店からは、「セレナをどれだけ充実させてもエルグランドの代わりにはならない」との声が出たことと、近年はアルファードを送迎用の社用車として使う法人が増えたことから、日産も新型エルグランドの投入を決定した経緯がある。
内外装の豪華さと3列目の快適性を重視
新型エルグランドは、各種機能を最新のものにアップデートするとともに、ボディを大幅に拡大している。全長は30㎜伸びて4995㎜、全幅は45㎜広げて1895㎜、全高は160㎜高くなって1975㎜に達する。アルファードと比べると45㎜ワイドで40㎜高くなる。
この新型のサイズ設定は、「外観が小さく見える」と不評だった先代の反省に基づく。先代エルグランドは全高を1815㎜に抑えて低重心によるスポーティさを売りとしたが、Lクラスらしい見晴らし感覚が得られず、格上のミニバンとしての存在感が薄れてしまい、シェアを落としてしまった。その点、新型は全高を高めたことで室内高も拡大し、床面を路面から持ち上げることで、見晴らしの良い最適な着座姿勢を実現。特に2列目&3列目の居住性が劇的に向上している。
内外装の仕立てを比べると、アルファードは装飾が多く派手で豪華な印象だ。フロントマスクやインパネは、エルグランドが少しスポーティで個性的なのに対し、アルファードは煌びやかに仕上げられている。2列目シートにおいて、エルグランドは一般的な左右独立式のセパレート(キャプテン)シートを採用するが、アルファードは売れ筋の「Z」以上になると、大きな固定式アームレストを備えた立派な造りになる。
アルファードは、天井にエアコン操作などが行えるオーバーヘッドコンソールを装着し、ステアリングもエルグランドの2本スポークに対して、アルファードは3本スポークで見栄えが良い。インパネや天井部分の豪華さでは、アルファード&ヴェルファイアが上回っている印象を受ける。
ちなみにすでに公開されているエルグランドのプロトタイプは、メッキパーツの使用が控えめで洗練感が強めだった。派手なフロントマスクを好むLクラスのターゲット層には物足りなさを感じさせる懸念もある。そこを補うため、新型エルグランドには「オーテック」仕様も用意され、フロントマスクやアルミホイールに輝度の高いメッキを多用するスタイリングを提案している。新型では、これまで以上にオーテックモデルの支持が高まりそうだ。内装まわりに関してもLクラスの最高峰を目指し、インパネには14・3インチの液晶メーターとディスプレイが並び、助手席と2列目にはオットマンも備わる。
3列目の座り心地に関してはエルグランドが勝っている。アルファード&ヴェルファイアに比べて床と座面の間隔に余裕があり、足を前方へ投げ出す不自然な姿勢になりにくい。座面自体もエルグランドの方が柔軟だ。一般的に3列目は格納性を重視するため座り心地が悪化しやすいが、エルグランドは快適性を明らかに重視している。
それでいて荷室の機能も改善された。先代は背もたれを前側に倒して格納する方式だったため、シートの厚みで床が持ち上がり、自転車のような背の高い荷物を積みにくかった。しかし新型は、セレナなどと同様の左右跳ね上げ式に変更。レバーを引くと3列目が持ち上がりストラップで簡単に固定できるため、荷室高が十分に確保され、大きな荷物も積みやすくなっている。
最新電動の恩恵は明らか走りで勝負できる実力あり
動力性能はハイブリッド同士で比較。新型エルグランドのパワーユニットは、最新の第3世代「e-POWER」のみで、ガソリン車の設定はない。エクストレイルとは異なり可変圧縮比機構は採用されないが、直列3気筒1.5ℓターボエンジンが効率の優れた一定の回転域で発電を行い、駆動はすべてモーターが担当する。燃料消費を抑えつつ、圧倒的な滑らかさと静けさ、トップレベルの燃費を両立していることが特徴だ。
運転感覚は電気自動車に近く、アクセル操作に対する反応が極めて機敏。アルファード&ヴェルファイアのハイブリッドシステムは、直列4気筒2.5ℓエンジンが発電と駆動を兼任するタイプで、静かで滑らかな走りを特徴とするが、駆動力の力強さやノイズの小ささではエルグランドがリードする。
走行安定性もエルグランドが勝る。駆動方式は後輪を別モーターで回す4WDの「e-4ORCE」のみで、アルファード&ヴェルファイアで選べる2WDの設定はない。サスペンションは前輪がストラット、後輪がマルチリンクの4輪独立式。さらに、ショックアブソーバーの減衰力を走行状態に応じて変化させる「インテリジェントダイナミックサスペンション」を装着する。
このメカニズムの相乗効果により大柄なボディでありながら、峠道や高速道路での安定性は極めて高いはず。駆動モーターの最大トルクはなんと500Nm(50・1㎏-m)を上回るため、発進時から余裕のある加速を見せる。ブレーキ制御を伴うe-4ORCEが4輪を最適にコントロールし、カーブでも外側の前輪が確実に接地して旋回軌跡を乱さない。下り坂のカーブでも後輪の接地性が高く、全高が1900㎜を超えるミニバンでありながら、運転感覚はSUVに近いレベルにある。
乗り心地も快適で、ドライブモードを「コンフォート」にセットすると、路面のデコボコを柔軟にいなしてくれる。カーブでの傾き(ロール)は多少増えるが、挙動変化が穏やかなので乗員に不安を与えない。
アルファードも柔軟でリラックスできる足回りを持つが、注意したいのはヴェルファイアだ。ヴェルファイアはボディ剛性を高める補強ブレースや専用のサスペンション設定により、車両の向きを変えやすい半面、乗り心地が硬めになっている。スポーティな感覚を求める場合でも、ヴェルファイアよりエルグランドの方が自然な運転感覚だ。新型エルグランドが登場すればヴェルファイアを選ぶ価値は薄れ、実質的にアルファードとの一騎討ちになるかも知れない。
総括すると、Lサイズミニバンのユーザーが最も重視する「豪華な内外装」や「快適な乗り心地」を求め、予算も抑えたいならアルファードがやや優位。最新改良で実用装備を備えた「ハイブリッドG」を投入するなど、新型エルグランドを迎え撃つ体制を整えている。
一方、個性的なデザインや、運転する楽しさ、3列目まで全員が快適に長距離移動できる性能を重視したいなら、新型エルグランドはかなり魅力的。価格に見合うだけの「ミニバン最高峰」の走りがそこにはある。
NISSAN 新型エルグランド













TOYOTA アルファード/ヴェルファイア












〈編集部調査〉ディーラーでは先行予約はすでにスタート
7月中旬に正式発売される新型エルグランド。すでにディーラーでは先行予約が始まっており、販売店では「これからの契約では納車は年末になりそう」と、具体的なスケジュールも出ている。
ちなみに新型エルグランドの価格は、ベーシックグレードでも700万円に迫る水準となっていて、アルファードの売れ筋となっている「ハイブリッドZ・E-Four」よりも高い設定になっているようだ。装備揃えで比較するとエルグランドの方が割高といえるわけだが、その代わりエルグランドには卓越した走行性能や先進メカニズムが注がれる。価格差はそれらに対する対価というわけだ。
