新型車比較・ライバル車対決
更新日:2024.02.28 / 掲載日:2024.02.28

新型クラウンシリーズ総研究〜ココが同じ! どこが違う?〜

16th CROWN Series《シリーズ共通点は?》《各モデルの個性は?》

’22年7月に世界初公開された新型クラウンシリーズ。
4タイプのうちまず「クロスオーバー」から国内販売を開始。「スポーツ」、「セダン」と順次リリースされ、
残る「エステート」も2024年半ばには発売予定だ。
ラインナップ完成を前に、今回は新世代クラウンならではの魅力とモデルごとの個性の違いをまとめてお届けする。

●文:川島茂夫

新型クラウンシリーズ総チェック

プラットフォームの統一に
こだわらず“最適”を追求
 VIPカー用途にも対応した最上級セダンがクラウンの原点だが、代を経る毎にオーナードライバー志向を強め、とくにゼロ・クラウン以降はコンセプトの柱となった感が強い。だが、16代目となる新型クラウンがもたらした衝撃に比べれば、これまでの変化は小さく穏やかなものに見えてしまう。
 激変の第一のポイントは駆動方式である。セダンのみ伝統を感じさせるFRを採用しているが、他の3車型は4WDのみの設定。しかも縦置(FR)プラットフォームベースではなく、横置(FF)プラットフォームを採用している。同一車種でFFシャシーとFRシャシーを採用した前例としては80型カローラがあるが、これはFFへの移行期の過渡的な対応であり、クラウンとは事情が異なる。
 エンジンレイアウトの異なるプラットフォームの採用理由は、ボディタイプへの適合そしてセダンとの適応用途や嗜好の違いと推測するのが妥当だろう。カジュアルな雰囲気とユーティリティ強化を目的に最適なプラットフォームを選択したと考えれば得心できる。ブランドを統一しながら遊び方のバリエーションに沿って多彩なモデルを揃える。この多面性が新型クラウンの革新となっている。

新型クラウンシリーズ《コンセプト&プロフィール》

シリーズ内で多様な
上級車ニーズに応える
 多少スペシャリティな雰囲気を漂わせるもののセダンはフォーマル志向のキャラ付け。先進的パワートレーンの採用もあり、クラウンの伝統とトヨタの大看板車種を実感させてくれる。
 同じように3BOXの車体構造を採用するクロスオーバーはSUV的外観だが、スペックはオンロード志向が強めであり、SUVモチーフの外観を採用したスペシャリティ志向のモデル。最もホットなパワートレーンの設定もキャラを裏付けする。
スポーツはクラウン初の2BOXモデル。車名とは異なりスポーツ性に特化したモデルではなく、気張らないカジュアルなキャラが特徴。新生クラウンの若々しさの象徴ともいえる。
 エステートは上級SUVそのものといった印象が濃い。詳細は不明だが、トヨタSUVの看板に育ちそうな予感大である。

クロスオーバー

●価格:435万〜640万円

2022年7月発売 2.5ℓ直4HEV・4WD 2.4ℓ直4ターボHEV・4WD

これがクラウン? シリーズ第一弾は2.4ℓターボハイブリッドが要注目
 プラットフォームを考えるとSUV嗜好スペシャリティのカムリという感もあるが、上位パワートレーンとして2.4ℓターボベースのパラレル式HVの設定に注目。オン&ラフロード二刀流のスポーティセダンという見方も可能であり、キャラも用途も個性的である。

スポーツ

●価格:590万〜765万円

2023年10月発売 ※PHEVは’23年12月発売 2.5ℓ直4HEV・4WD 2.5ℓ直4PHEV・4WD


クラウンシリーズ内では比較的パーソナル向けのキャラクターだ
 カローラスポーツにも似たプロポーションでサイズをふた回り大きくしたような外観。シリーズ内相対なら前席2名乗車を主用途に多様な使い方を求める多用途パーソナルカーという立ち位置。クラウンとしてもトヨタとしても新しい試みと言えるモデルだ。

セダン

●価格:730万〜830万円

2023年11月発売 FCEV・RWD 2.5直4HEV・FR

歴代クラウンと同様にFRプラットフォームを採用
 シリーズで唯一FRプラットフォームを採用し、クラウンの正統な後継モデルとも言える。スプリット式ハイブリッドに多段変速機を組み合わせたHEVとFCEVを用意し、パワートレーンの先進性も最上位モデルにふさわしい。なお、他シリーズと異なり2WDのみの構成だ。

エステート

●価格:未発表

2024年央発売予定 HEV・4WD PHEV・4WD

実用性はシリーズ随一。パッケージングは上級SUV
 キャビン実用性の面でシリーズの最上位に位置するモデルである。全長はクロスオーバーより僅かに小さいもののキャビン容量を大きく採ったプロポーションを採用。車名はエステートだが、パッケージングやスタイルからは上級SUVと捉えるべきだろう。

新型クラウンシリーズ《エクステリア&パッケージング》

シリーズとしての共通性に
独自のキャラクターを注入
 全長はセダンのみ5mを超えているが、クロスオーバーとエステートも4930㎜であり、スポーツ以外は平面寸法に大きな隔たりはない。なお、クロスオーバーは全高を除けばカムリに近いサイズだ。スポーツはクロスオーバーよりも全長が210㎜短いがホイールベースの差は80㎜でしかなく、切り詰めたオーバーハングもあいまって、見た目の印象はシリーズの中でも軽快なものとなっている。
 フロントマスクのデザインも興味深い。細くシャープなランプグラフィックなど共通したテイストで仕上げられているが、すべて別デザインである。さらに言えば、スポーツのヘッドランプは上部の線状のランプではなく、サイドインレット部の丸形ランプだ。エステートもこれに倣っているが、もちろんマスク全体は別デザイン。各シリーズのキャラやコンセプトの違いを示すポイントのひとつだ。

クロスオーバー

比較的カジュアルなキャラで上級FFセダン的なパッケージ
 全長が20㎜、ホイールベースが25㎜長いが、全幅はカムリと同じ。ちなみに最低地上高も共通している。パッケージングは上級FFセダンに等しく、クラッディング等のSUVの外観艤装を取り込んで、セダンとは異なるカジュアル感を演出している。

スポーツ

高級車の車格で2BOX。これまでにない価値感を表現
 車体寸法はシリーズで最もコンパクトだが、短めのオーバーハングや高めの全高と相まってその寸法以上にコンパクトに見える。同車格では他にない2BOXスタイルは新クラウンの個性を際立たせるものであり、プレ&ポストファミリー向けの新たな選択肢と言える。

セダン

ショーファー用途も視野に入れた、新たな世代のFRサルーン
 先に登場したミライをベースにホイールベースを延長してキャビン長の拡大を図ったプラットフォームを採用。キャビン後半はファストバッククーペ風のデザインだが、VIPカー用途に向けて後席の居住性や乗降性を配慮したパッケージングとなっている。

エステート

名前はワゴン車のようだがキャラや用途は最もSUV的
 詳細スペックは不明な部分が多いが、全長とホイールベースはクロスオーバーと共通。荷室周りのボリュームを大きく採ったキャビンデザインがレジャー用途向けのSUVらしい。また、サイドシル高やホイール位置から推測するなら最低地上高はシリーズ最大と予想される。

新型クラウンシリーズ《キャビン&ユーティリティ》

インパネイメージは統一
荷室は志向の違いを反映
 新型クラウンの注目点のひとつがキャビン実用性。といってもスポーツとエステートの2系統限定だが、これまでクラウンの実用性といえばくつろぎを主とした居住性であり、多用途性などレジャー用途での使い勝手は選択の要点にならなかった。3BOX車体のセダンとクロスオーバーは従来のセダンと同様の解釈になるが、リヤゲートを備えたスポーツとエステートは荷室積載性の点から従来のクラウンでは対応できない用途までカバーすることが可能になった。
 興味深いのはインパネデザインである。一見しただけでは見分けがつかないほど4車が統一されたイメージでデザインされている。横置プラットフォームの3車が共通したデザインになるのは理解できるが、セダンもほほ同デザインだ。外観キャラの異なる4車だが、ドライバーの視る風景は統一されたひとつのクラウンなのだろう。

クロスオーバー

FFプラットフォームにより広々した室内空間を獲得
 スペース効率に優れた横置レイアウトとロングホイールベースにより同クラスセダン対比でも最大級の有効室内長を備える。後席ヘッドルームは必要十分レベルだが、ゆったりとした居心地。荷室は奥行きが広いものの開口部が狭いため、荷物の積み降ろしが難点だ。

スポーツ

ショートワゴンフォルムながら広さ、居住性ともに水準以上
 他シリーズと比較するとひと回りコンパクトであり、キャビン長も多少短め。それでも大柄な男性4名の長時間走行にも不足ない居住性を実現。荷室はミドルクラスのショートワゴンと同等以上の床面積があり、レジャー用途にも対応できる使い勝手を備えている。

セダン

寸法的な数値以上に後席居住性に優位性がある
 有効室内長はクロスオーバーと同等だが、後席の視覚的圧迫感の低減や乗降時の身体捌きを配慮した設計が施されている。また、後席の座り心地も他シリーズよりゆったりしている。荷室はシリーズ他車とくらべて最も余裕がなく、狭い開口部で積み降ろしの作業性も今一歩。

エステート

空間効率はシリーズ最良。荷物満載のレジャーも余裕
 ホイールベース設定からすれば室内有効長はクロスオーバーと同等と見込まれ、後席のヘッドルームと開放感は向上している。寸法面の居住性はシリーズのベストだろう。荷室はスポーツより奥行きが大きくなるが、床面の地上高は同等。レジャー用途にも余裕で対応できそうだ。

新型クラウンシリーズ《メカニズム&装備》

共用部分も多いが
セダンのみFRがベース
 現在公表されているパワートレーンは4系統で全5タイプ。セダンは2.5ℓマルチステージハイブリッド(FR)とミライ譲りの燃料電池(RWD)を設定。ともに環境&動力性能でトヨタ車をリードするユニットである。
 その他の3車はNA2.5ℓスプリット式ハイブリッドのほか、上位設定としてクロスオーバーにはパワフルな2.4ℓターボハイブリッド、スポーツとエステートにはプラグインハイブリッドが用意される。3車いずれも独立した電動後輪駆動系を備えた4WDのE-Fourを採用する。
 ADAS(トヨタセーフティセンス等)はトヨタ車最新にして最も充実した機能が用意されている。ただし、セダンとスポーツは全機能全車標準装備だが、クロスオーバーは一部がグレード別設定。エステートについては未発表だが全車フル装備となると予想する。

クロスオーバー

好燃費の2.5ℓハイブリッドと高性能な2.4ℓターボハイブリッド
 標準設定のHEVにはNA2.5ℓを核としたスプリット式を採用し、同クラスでは最高水準の燃費を誇る。RS系に搭載されたハイブリッドシステムは272PSの最高出力を発生するターボと相まって4系統の中でも最も高い動力性能を誇り、刺激的な加速性能が魅力だ。

■2.5ℓハイブリッドシステム トヨタ得意のシリーズパラレル式でシステム最高出力234PS。WLTC燃費は22.4㎞/ℓだ。

スポーツ

2.5ℓハイブリッドのほかプラグインハイブリッドも
 外観の印象でシリーズ最軽量と誤解してしまうがクロスオーバーよりも多少重く、モード燃費は若干低下するものの動力性能や実用燃費は同等と考えていい。PHEVのパワートレーンはレクサス車に展開しているものと同型式。パワースペックはHEVを上回る。

HEVのパワートレーンはクロスオーバーに準ずる。システム234PS、WLTC21.3㎞/ℓ。
■2.5ℓプラグインハイブリッドシステム よりスポーティな走りを狙う。システム306PS、WLTC20.3㎞/ℓ、EV走行距離90㎞。

セダン

2タイプのパワートレーンはともに静かで上質な走りが持ち味
 FCEVのシステムはミライ譲り。燃料電池の環境性能の高さと電動による静かで力強い走りが特徴だ。HEV車はトヨタ初となるマルチステージハイブリッドを採用。NA2.5ℓの設定で幅広い速度域での心地よい運転感覚と安定したドライバビリティが特徴だ。

■高性能FCEVシステム 182PS以上/300N・mの高性能モーターで後輪を駆動。水素満タンで約820㎞走れる計算となる。
■2.5ℓマルチステージハイブリッドシステム 2モーター式ハイブリッドで180PS/300N・m/18㎞/ℓ。高速走行時に回転数を抑制する制御を行う。

エステート

HEVとPHEVの2本立てだがスペックなどの詳細は未発表
 HEVとPHEVの2タイプが用意される以外の情報がないのだが、おそらくスポーツと同様の構成になると予想される。また、外観の比較ではサイドシルの高さから最低地上高は165㎜のスポーツ以上と予想され、レジャー用途向けの悪路踏破性も期待できそうだ。

他車との最大の差別化ポイントは使い勝手で、積載に配慮した装備が充実している。

新型クラウンシリーズ《まとめ》シリーズ4車の選び分けポイントとは?

複数のタイプを揃え
幅広い用途に適応
 シリーズの多様化により多方向の用途をカバーする、いわばグループ戦略的な展開が新クラウン最大の特徴である。あるいはカローラやヤリスの手法をクラウンに当て嵌めたと考えてもいいだろう。
 走りの質感ではFRプラットフォームと横置プラットフォームの走りの違いもあるのだが、それ以上にボディタイプによるキャラや適応用途の差が新クラウンの評価と選び方では重要。従来の延長ならセダン、スポーツ性と高性能ならクロスオーバーのRS系、カジュアル感や実用性を求めるならスポーツやエステートという具合に選び分けるのが基本である。さらにスポーツとエステートは従来のクラウンとは適応用途が異質。2BOXで気軽にプレミアム、SUVでさらに上級ステップアップを狙っているユーザーにとってクラウンというブランド価値に関わらず新鮮にして魅力的な存在だ。

クロスオーバー

敢えて言えば従来の「アスリート」的だ
 SUVルックのセダンと言うべきモデル。セダンのフォーマル感を抑えてスペシャリティな味わいを与えているのが特徴。嗜好は異なるがアスリートの後継に据えると理解しやすい。その方向性ならばシリーズ最速のターボHEVが設定されているのも納得だ。

新開発のデュアルブーストハイブリッドシステムを唯一搭載するなど、走り志向が強い。

スポーツ

前席2名乗車がハマる上級5ドアハッチバック
 コンパクトというほど小さくないのだが、5ドアHBらしいプロポーションによる気軽さが魅力。レジャー&ファミリー用途にも対応できるキャビンだが、相対的には前席2名乗車を基本に多様な使い方を求めたモデルと理解するとキャラ的にも収まりがいい。

クラウンの名にふさわしい車格だがリヤが短く、シリーズ中もっともカジュアルで若々しい。

セダン

伝統的なクラウンの価値感を体現
「ザ・クラウン」と言いたくなるモデルである。FRプラットフォームの走りに質に対する優位性やセダンの心配り、さらには環境性能をリードするパワートレーン設定などトヨタのフラッグシップは健在。新味に欠くものの伝統の重みを実感できるモデルだ。

オーナードライバー向けはもちろん、後席居住性の高さからVIP用途まで対応可能だ。

エステート

トヨタ最高峰のクロスオーバーSUV
 これまではRAV4/ハリアー以上のトヨタSUVと言えばランクルになったが、そこに新たな選択肢として加わるのがクラウンエステート。レジャー用途向けでもハードクロカンは不要なユーザーのための国産プレミアムSUVの定番になる気配濃厚である。

正式発売前だが実車展示などを見るにつけ、クラウンのトップセラーとなる予感濃厚だ。
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内外出版/月刊自家用車

ライタープロフィール

内外出版/月刊自家用車

オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

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