車の最新技術
更新日:2021.06.10 / 掲載日:2021.06.10
SIP自動運転試乗会レポート【ニュースキャッチアップ】自動運転レベル4を体験した!

文と写真●ユニット・コンパス
(掲載されている内容はグー本誌 2021年6月発売号掲載の内容です)
ドライバーに変わってシステムが車両の周辺を監視し、操作を代わりに行う自動運転。最新技術を搭載した自動運転レベル4相当の車両を集めた試乗会が開催された。
お台場は自動運転開発の世界的な聖地だった
自動運転の未来はどの程度まで近づいているのか。そんな興味深いテーマを体験できる試乗会が開催された。主宰したのは、「SIP自動運転」。内閣府が中心となり、産官学で日本の将来に必要となる技術を開発している機関だ。
自動運転といえば、ホンダがレベル3の機能を備えたレジェンドを世界で初めて市販した。だが、人間が完全に監視をシステムまかせにできるレベル4以上の実用化には、高いハードルがあると言われている。
今回の試乗会では、自動車メーカー以外にも部品メーカーや研究機関が参加。自動運転レベル4のテスト車両に同乗試乗することができた。 その舞台は一般の歩行者や車両が行き交う東京お台場。じつはお台場は、国が定めた自動運転の実証実験エリアで、信号機にも切り替えまでの時間を無線で発信する特別な装置が取り付けられている。ここの実験で得られた知見やデータをもとに、さらに研究を重ね、基礎的なデータを共有することで、日本の技術力を高めようというのが「SIP自動運転」のテーマでもある。
テスト車両は、どれもゆっくりではあるものの、歩行者や併走する車両を検知し、適切に走行してみせた。道はまだ半ばだが、着実に自動運転のある未来へと進んでいる。
高度な自動運転に欠かせないLiDARを製造している部品メーカー

自動車部品メーカーの「ヴァレオ」が製作したテストカー。LiDARという物体までの距離や形状を正確に測定できる装置を搭載することで、衛星情報に頼らずに誤差10cmクラスの正確な自車位置を測位する。こうした高性能なセンサーが自動運転レベル4には不可欠になっている。
自宅から自動運転の自家用車で出かけ都市内は自動運転シャトルで移動する
未来の自家用車を想定した「コンチネンタル」のテスト車。同社が得意とするミリ波レーダーを駆使したレベル4相当の自動運転車両で、今回の試乗会ではお台場の街中に設定されたコースを自動運転で走りきった。自動バレー(駐車)を備え無人でパーキングを入出庫する。
こちらは「コンチネンタル」による無人シャトルバスのテスト車両。将来的には完全無人での(遠隔監視)運用を想定しており、ステアリングやペダル類は存在しない。試乗したところ、ゆっくりながら、想定ルートを自動運転でクリア。歩行者にゆずるシーンにも遭遇した。
未来のシャトルバスをイメージしたレベル4相当の自動運転水素バス

羽田イノベーションシティと羽田空港を結ぶシャトルバスをイメージした実証実験も行われている。ベースとなっているのはトヨタの水素バス「SORA」で、レベル4相当の技術を搭載。街中や首都高を自動で走り、ETCゲートの進入やバス停への停車も自動で行われる。
無人での走行実験も行っている「ティアフォー」の自動運転タクシー

大学発ベンチャーの「ティアフォー」が目指すのは、自動運転の技術を開放することにより、社会のより多くの人々が自動運転技術の恩恵を受けられる世界。写真は自動運転タクシーの事業化に向けて実証実験中のJPNタクシーを使った実験車。遠隔自動運転も可能な車両だ。
自動運転について長年研究を行っている大学の研究室がSIP自動運転に貢献

金沢大学は、学術機関という立場から自動運転にまつわる技術的な要件を明らかにすることを使命にSIP自動運転に参加している。たとえばカメラが逆光などどのような状況で視認性が落ちるのか、自動運転用信号機はどの程度の数が必要なのかといったことを分析し、提言している。

レベル4以上の自動運転の実用化はまだ先だが技術は確実に進歩している
テスト車両はどれも所定のコースをトラブルを起こしたり、同乗者を不快にさせることなくクリアしてみせた。だが、実用化には、どのような天候や状況でも、周囲を混乱させることなく安全に走る技術が必要で、その実現にはまだ越えるべきハードルが数多くある。