車の最新技術
更新日:2020.11.03 / 掲載日:2020.11.03
【現場探訪】HONDA フィット開発の舞台裏

「フィット テクニカル ワークショップ」レポート最新技術で人に寄り添う「心地よさ」を目指したHONDAフィット。その技術的な側面に光を当てたワークショップが開催された。あらためて感じたフィット的なものづくりとは。
一歩踏み込んだ安心が、人への優しさをもたらした
小さな工夫を積み重ねて
「人とは何だ?」と問えば哲学的な印象を受けるが、新型フィットの開発背景を聞けば人の感じる心地よさが、普段気にしないような些細な事の積み重ねにあるように思えてきた。と言っても、フィットだけが気がついた訳ではない。そう感じさせるのは極細フロントピラーのせい。車体骨格となる本当のフロントピラーはフロントドア前に置かれ、極細ピラーは車体剛性には寄与しない。中折れ型ウインドウの桟と言うべきだろう。それでもウインドウを支えるためにはかなりの強度が必要で、アングル材を組み合わせたようなY字断面形状を採用する。外観写真でみると大して違わないのではと思えるが、実際に乗り込めば驚くほどの視野の広さ。この運転視界の検証ではVRを用いたシミュレーションが繰り返され、桟と柱の位置や形状の最適化が図られた。実走行では何時の間にか桟の存在を忘れてしまうのだが、VRシミュレーターでも同様に感じられたのが興味深い。サス周りでは軽量小型化が進められ、安心感と気軽な運転感覚の両立が主軸となる。空力は5ベルト式のムービングベルト型風洞で実走行に近いデータを検証。ちなみに風洞実験用クレイモデルはエンジンルームや床下まで再現。撮影不可だったのが残念だ。フィットの見所のひとつe:HEVは、論より証拠で高速周回路へ。せっかくの機会なので直動機構の作動上限を試す。140km/h超まで確認。聞けば150km/hくらいは守備レンジで、超高速巡航燃費が求められる欧州にも適合した設計とのこと。ちなみに歴代フィットの中でもソフトな乗り心地のサスチューンだが、140km/h超のコーナリングでもしっかり。「余裕」とひと言で済ませてもいいが、細かな改良や発想の積み重ねによる、さらに踏み込んだ「安心」こそがフィットが謳う「人への優しさ」の根源であることを実感した。
最新風洞

ホンダ最新の風洞で中央路面と各輪にムービングベルトを配し、新燃費計測基準のWLTCモードにも準拠。200km/hまで実走行に準じた空力テストが可能である。
VR

投影背景とゴーグルによる3D映像で走行視野の確認が可能。臨場感だけでなく、一瞬で走行状況や他車の運転視界に切り替えられるので、違いが分かりやすいのも特徴だ。
シャシー関連
シャシー関連
基本サス設計は先代を踏襲しているが、構造や素材の変更だけでなく、生産行程も含めて精度向上や軽量小型化を行った。
実走行
実走行
e:HEVは低中速だけでなく直動機構で高速域まで高効率。穏やかな乗り心地と高速域でも安心感の高いハンドリングも見所だ。
●文:川島茂夫 ●写真:本田技研工業(株)