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更新日:2025.06.02 / 掲載日:2025.06.02
ホンダが次世代e:HEVで目指すもの【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】

文●石井昌道 写真●ホンダ
ホンダは5月20日にビジネスアップデートを開催し、三部社長自らが今後の戦略について語った。主な項目は、BEV(電気自動車)の普及スピードの鈍化等を受けて短期目標の見直し、足元で需要が底堅いハイブリッド戦略の強化、次世代ADASによる競争力強化などとなっている。
そもそも三部社長は2021年の社長就任時に2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、2040年にBEV/FCEVの販売比率を100%にすると表明。そこからのバックキャストで2035年に80%、2030年に40%を目指すとした。ところが、BEVの需要が思うように伸びないため昨年9月には2030年に30%へ、そして今回は2030年に20%へと目標を下げてきている。四輪全体の販売台数は現在360万程度で2030年もキープかそれ以上を目標としてるので、BEVは70万台強程度ということになる。

その他の理由としてはトランプ政権によって環境規制が緩和されそうでBEVの販売を急ぐ必要が薄れたこと、USMCA(アメリカ・メキシコ・カナダ協定)が再交渉もしくは不要とまで言われていることなどがあげられる。ホンダはカナダに年間最大24万台規模のBEV工場の建設を計画し2028年の稼働を目指していたが、関税の行方が不透明なためこれもとりあえず2年間後倒しとなった。2年後に状況をみて判断するようだ。
その一方で、足元ではハイブリッドカーの需要が底堅く、2030年の販売台数は220万台を目指す。2024年12月のe:HEV次世代技術公開時には2030年のハイブリッドカー販売台数目標は130万台だったので大きく上乗せしたかっこうで、ポートフォリオの見直しも大胆だ。ただし、2040年のBEV/FCEV販売比率100%という目標にかわりはなく中・長期的に見れば一般的な乗用車はBEVが本命という姿勢は崩していない。また、現在のところBEVは収益性が悪いのに対して、次世代e:HEVは性能を進化させながら2018年モデル比で50%のコスト低減を目指していて収益性は高い。短期的にはポートフォリオ見直しが業績に有利に働くとみていいだろう。
これからのホンダの強みになるとされているのが次世代ADAS (先進運転支援システム)だ。2021年に世界初の自動運転レベル3を販売した実績のあるホンダは、その知見をいかして安全性向上を主眼にADASの拡充に努めている。

いまのところアクセルやハンドルの操作支援は自動車専用道、高速道路が主だが、次世代ADASでは一般道と高速道路の境なく、目的地までの全経路で高度に支援する。それには電力確保やSoC(システムオンチップ)の冷却などといった課題があるため、BEVやPHEVのハイエンドモデルでないと実現できないのが現状だが、2027年から展開が始まる次世代e:HEVであれば本格的なフルハイブリッドと新たなE/Eアーキテクチャーによって課題をクリアできるといしている。

つまり、リーズナブルなモデルでも次世代ADASを搭載できることが競争力強化に繋がるわけだ。ホンダの新たなBEVであるゼロシリーズは、セントラル型ECUやアシモOSなどの新開発のE/Eアーキテクチャーの採用で知能化を推し進めるが、次世代e:HEVもゼロシリーズほどではないにしても、高度なE/Eアーキテクチャーを搭載することを意味してもいる。
2030年にホンダの四輪全体の約6割にあたる220万台を目指す次世代e:HEVは、次世代ADASを得てますます競争力があがる。2027年からその攻勢が始まる予定だ。