車の最新技術
更新日:2022.11.07 / 掲載日:2022.11.07

【Honda CI】モビリティを進化させる人工知能技術を体験【石井昌道】

文●石井昌道 写真●ホンダ

 Hondaの研究開発子会社である本田技術研究所は、独自の協調人工知能であるHonda CIを活用したCIマイクロモビリティ技術を公開した。

 今でもAIを活用した音声アシスタント機能は実用化されていて自動車でも普及しつつあるが、Honda CIはそれらを発展させたものだ。従来の音声アシスタントは、何かの指令を与えればその通りに応えるワンウェイだったが、Honda CIはカメラと音声でユーザーの意図を理解しつつ、その指令よりももっといい案があれば提案をしたり、やってみようとしたけれど何かしらの障害があって対応策を考えたりと、意図理解・コミュニケーションをする技術となっている。言葉や身振りを理解して、人間同士のようなコミュニケーションを図るのだ。

 その協調人工知能であるHonda CIをマイクロモビリティに搭載して、茨城県常総市の水海道あすなろの里(2022年11月から)、アグリサイトエンスバレー(2023年春から)で実証実験を行う。搭乗型マイクロモビリティのサイコマ(CiKoMa)は地図レス協調運転技術を搭載。一般的な乗用車のレベル3以上の自動運転では高精度地図データが必須であり、レジェンドのHonda Sensing Eliteでもダイナミックマップと呼ばれる高精度地図データを搭載しているが、サイコマはカメラベースで周辺環境を認識して自動走行を行う。画像情報から交差点やカーブ、他の車両や歩行者などを認識しながら自律走行していくのだ。マイクロモビリティは道路以外の公開空地(建物周辺や公園など一般に開放され自由に通行できる区域)も走行することを想定しているため、障害物や物体などを認識して走行可能な領域を瞬時に判断する必要がある。また、走行環境を考慮して安心でスムーズに移動できるルートを選択する機能もある。

 サイコマは1人乗りから数人乗りまで想定していて、今回取材した実験車両は1人乗り、2人乗り、4人乗りだった。

自動でユーザーを迎えにくる1人乗りのサイコマ

 1人乗りのサイコマでは、シェアモビリティを通信で呼び出して迎えに来てもらう実験を行った。「○○のカフェに迎えに来て」と通信で語りかけると「了解しました」と答え、近くに到着するとサイコマがユーザーを探す。人が沢山いても、服装であったり、いまスマフォで話しているなどの身振りなどから判断していく。「青いジャケット着ていて、いまスマフォで話していますか?」「うん、そうだよ」などと会話してユーザーを特定するのだ。
 ユーザーが「じゃあ、あの青い自動販売機の前に停まって」と言ったところ、その前に人がたくさんいて相応しくないとサイコマが判断すると、「その横のパイロンがあるあたりでいいですか?」など、安全と利便性を考慮しながら提案。「じゃ、それでお願い」と答え、はれてお迎え完了といった具合だ。

カメラの画像情報だけで自動走行する2人乗りサイコマ

 2人乗りサイコマは試乗して、地図レス協調運転技術を体験した。カメラの画像情報だけで道路状況などを判断して自動走行していくが、ユーザーの判断で次の角を右に曲がりたいと思えば、ジョイスティックを右に倒すだけ。通常の運転でウインカーを出す感覚でジョイスティックを操作すれば、意思が伝わって思い通りに自動走行してくれる。目的地を設定して完全に自動運転にお任せするのではなく、乗り手の意思を伝えながら自動走行していくのは新しい感覚で、安心・安全、そして便利に自動運転技術を使いながら移動する喜びもある。

事故を防止する運転支援技術を搭載した4人乗りサイコマ

 4人乗りサイコマでは、事故を防止する運転支援技術としてドライバーをカメラで捉え、顔の角度や視線から、歩行者の見落としなどを伝える技術を体験した。それぞれのモデルで違った技術を開発しながら、将来的には一つにまとめてサイコマが出来上がる。シェアモビリティを想定していて、乗りたいところに呼び出せば迎えに来てくれて、高度な運転支援技術や自動走行などを使いながら自由に移動。目的地に到着したら、サイコマは自動で次のユーザーの元か待機場所等に向かうので乗り捨てできるという便利なモビリティだ。

 もう一つの実験車両がユーザーの特徴を記憶・認識し追従するマイクロモビリティのワポチ。ペットのようなネーミングの通り、ショッピングセンターなどで付いてきてくれるかわいいい相棒だ。荷物を持ってくれるので、手ぶらで買い物や散歩ができる。カメラは前方・後方に複眼、左右に単眼を搭載し、AIでユーザーを特定しながらトラッキングする。また、人混みなどでユーザーの前を先導して歩きやすく、周囲と協調もしながらサポートする機能も研究している。


 サイコマやワポチはいますぐに実用化されるものではないが、Honda CIはマイクロモビリティに限らず、運転支援技術や自動運転にも入っていく予定。Hondaのモビリティの高度な知能化を図っていく技術であり、誰もが自由に移動できる喜びを、安全にストレスフリーに実現するためのもの。モビリティの進化には欠かせない技術なのだ。

この記事の画像を見る

この記事はいかがでしたか?

気に入らない気に入った

石井昌道(いしい まさみち)

ライタープロフィール

石井昌道(いしい まさみち)

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

この人の記事を読む

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

この人の記事を読む

img_backTop ページトップに戻る

ȥURL򥳥ԡޤ