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更新日:2021.06.02 / 掲載日:2021.05.06
NISSAN「新型ノート e-POWER4WD」試乗レポート
「新型ノートの4WDモデルはスゴイらしい!」と前評判が高かっただけに、その登場が待ち望まれていたが、今回ようやく公道試乗のチャンスを得られた。リヤにも高出力モーターを搭載した走りの実力はいかほどのものか? 予想を上回る上質な走りに感動した!
走りの質感をさらに磨いたe-POWER4WD

先にリーフありきだがノートe-POWERの進化は興味深い。ハイブリッドとなれば最大の長所は燃費である。もちろんe-POWERも燃費は重要な訴求点だが、がむしゃらに「燃費一等賞」を目指していない。燃費はクラストップレベルにあればいい、というスタンスだ。代わって注力されるのは走りの質感。電動ならでは高精密制御を活かして内燃機車では困難なドライブフィールの改善を求めている。その進化版と言えるのがe-POWER4WDだ。
先代ノートe-POWERの後期にも電動後輪駆動を付加した4WD車をラインナップしていたが、新型のe-POWER4WDはまったくの別物である。先代の後輪駆動モーター出力は3.5kWでしかなく、雪路の発進補助が前提。一方、e-POWER4WDの後輪駆動モーターは50kW。主モーター(前輪駆動用)の約60%の出力を備える。一般走行なら後輪駆動モーターだけで賄える出力だ。
前後モーターの出力合計が1.6倍にもなればさぞ速かろう、と期待してしまうが、加速性能はFF車と同等。120kgの車重増を考慮すれば大差ないだけでも凄いのだが、PCU容量がFF車と同じなので加速性能の向上はなくても当然だ。狙いはあくまでも前後輪トルク配分領域の拡大と制御精度の向上にある。
Uターンするようなタイトターンで深めにアクセルを踏み込む。すると直後にリヤを僅かに沈ませるように後輪に駆動力が掛かる。4WDというよりFRに近いような感覚だ。もっとも、トルク配分インジケーターで確認した限りだが、前後輪のトルク配分は前後いずれか100%駆動といった状態にはまずならないようだ。走行状況に応じて前後のトルク配分は変化する。エネルギーモニターで確認しただけでも相当細かく変化しているが、表示は謂わばダイジェスト版のようなものであり、実際の制御はさらに緻密なのだろう。
ただ、それはe-POWER4WDのトルク配分制御の能力を示す一例でしかない。グリップのいいドライ路面でふつうに走らせていればFFだろうとFRだろうと問題はない。そんな4WD制御をする必要はないのでは? と疑問に感じる人もいるだろう。それはひとつの見方としては正しいのだが、要不要論を超えて走りの質感に踏み込んでこそe-POWER4WDの真の狙いが見えてくる。

e-POWER4WDは加減速、コーナリング等々で前後方向の負荷変動が起こった時のピッチ変化が非常に少ない。常に車体軸線がフラットに維持されるような安定感がある。FFのe-POWER車でもドライブトレーン系のバックラッシュや捻れ戻りによるスナッチングや急激なエンブレ時のピッチングを抑えるための駆動力制御を行うが、e-POWER4WDと比較すると姿勢の安定感で少し浮ついた印象を受ける。中でもe-ペダルの回生強化モードでのエンブレの利きと姿勢変化が分かりやすい。姿勢変化等の量的には僅かな違いだが、それが走りの質感に影響する。乗り味の肌触りがよくなったと言い換えてもいい。
機械式4WDでも4WD走行中は前後車軸の微妙な回転数差により微妙なトルク変動を抑える効果があり、2WD車よりも腰が据わった印象を受けるのもそのため。しかも力の掛かる量も方向も一定ではなく、その効果も不安定だ。
ところがe-POWER4WDはトルク変動を能動的に打ち消し、挙動を安定させるようにトルク配分しているので、据わりの良さや安定感が段違い。さらに前後輪に掛かる負担に応じて常時トルク配分を最適制御しているので、ハンドリングにも好影響。新しいプラットフォームの効果も少なくないが、コントロール性と安定性ともにFF車と比べて向上している。
その効果は都市部でも高速、ワインディング路でも変わらない。4WD車相対で言えば、4WDの新たな視点と可能性を求めたといっても過言ではない。
純電動のメリットを最大限に活かした第二世代e-POWERの精密制御による走りの質感の向上。フルタイム4WDの操安と乗り味のメリット。このふたつを指数関数的に掛け合わせた電動時代の革新的4WDシステムがe-POWER4WD。従来の4WD乗用車なら降雪地域等の雪路走行前提のユーザーが対象となるが、今まで4WDを必要としなかったユーザーこそ注目すべき。上級のプレミアム系からのダウンサイザーはもちろん、走りの質にこだわるユーザーにとってノートe-POWER4WDは車格を超えて最も魅力的な一車と言えるだろう。

新型ノートはFFモデルも走りの質感が高いが、4WDモデルはそれをさらにグレードアップした印象。フラットな乗り味が特徴だ。
メーター内に表示されるエネルギーモニターを見れば、前後タイヤへのトルク配分がとても細かく行われていることがわかる。リヤモーターを搭載するためエネルギー回生もFFモデルに比べてより効果的に行えるのが特徴だ。
新しいe-POWER4WDシステムの特徴

従来車の後輪用モーターは小出力の直流型。滑りやすい路面での発進補助以上の機能はなかった。新型は後輪用にも高出力モーターを採用し、前後輪完全電動駆動となっているのが大きな違い。ハイブリッドシステムの一環として制御されるとともに操安や乗り心地向上のために能動的なトルクの配分や制御を行っている。
雪道はもちろん、ウェット路面やドライ路面でもメリット大!

全域において後輪駆動を活用することでタイトターンから高速コーナリングまで操安性と乗り心地を向上。ただし、オンロードでのFF車との差は走りの質感の向上が主となり、性能的に大きな変化はない。性能面で大きな違いが出るのは滑りやすい路面での発進制御と操安性。従来車では生活四駆としての性能しかなかったが、新型では高性能フルタイム4WDと同等以上の機能を備えている。
●雪道での発進
●雪道の登り坂での発進
エクステリア&インテリアCHECK


後席スペースの広さを感じさせるオーソドックスな2BOXスタイル。余計なプレスラインを極力省いた滑らかなボディ造形だ。

シンプルながら上質な仕上がりのインテリア。大型モニター類が配置されたグラスコックピットは先進感もたっぷり。
座面サイズもたっぷり取られた前後シート。後席の居住空間は数値的には先代モデルよりはやや狭くなったが、体感的には十分な広さだ。足元スペースも十分でロングドライブも余裕でこなせる。
リヤにも高出力なモーターを搭載するが、駆動用バッテリーやPCUがFFモデルと同じため、加速力等の動力性能は変わらない。
リヤシートを格納すればフルフラットなラゲッジに。4WDモデルにはラゲッジアンダーボックス(ディーラーOP)の設定はない。
FFモデルとの外観上の違いはほとんどなく、リヤのエンブレムが異なるくらいだ。
ノート X FOUR(4WD)
●車両本体価格:244万5300円
●ボディカラー:プレミアムホライズンオレンジ(有料色4万9500円高)
●問い合わせ先:0120-315232(日産自動車お客様相談室)
■主要諸元 ノート X FOUR・4WD
●全長×全幅×全高(mm):4045×1695×1520●ホイールベース(mm):2580 ●最低地上高(mm):125 ●車両重量(kg):1340 ●最小回転半径(m):4.9 ●パワーユニット:1.2L直列3気筒DOHCガソリンエンジン(82PS/10.5kg・m)+モーター(フロント:85kW/280N・m、リヤ:50kW/100N・m) ●動力用主電池:リチウムイオン電池 ●トランスミッション:一段固定式 ●燃料:ガソリン<レギュラー> ●タンク容量(L):36 ●WLTCモード総合燃費:23.8km/L ●タイヤ:185/60R16
※撮影車両はメーカーオプションを装着しています。各数値はベース車両のもの。
<まとめ>新型ノート e-POWER4WDはダウンサイザーに好適だ
●おすすめグレード「ノートX FOUR」
<まとめ>新型ノート e-POWER4WDはダウンサイザーに好適だ
4WDシステムでは高性能型だが、FF車との価格差は約26万円。同クラスでは価格差が大きめだが、生活四駆型プラス5万円くらいの見当。ハードウェアの内容や性能からすれば買い得である。降雪地域のユーザーにはかなり魅力的。一般的なタウン&ツーリング用途での質感や操安性が向上しているので、プレミアム性を求めてノートを狙うなら同志向の最上位モデルとしての投資価値も高い。