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更新日:2020.10.03 / 掲載日:2020.10.03
フェアレディZプロトタイプの全貌
今年5月の決算発表で公開された「NISSAN NEXT A to Z」の動画で流麗なシルエットを覗かせた新型フェアレディZ。そのプロトタイプモデルが9月16日、オンラインイベントで遂に初披露された。初代S30のエッセンスを色濃く受け継いだ7代目の魅力に迫ってみよう。
輝かしい歴史をもう一度!初代を現代流にアレンジ

去る9月16日、日産は新型フェアレディZのプロトタイプを、オンラインで開催されたファンイベントにおいて公開した。現行型が2008年に登場してから12年ぶり。1969年の初代誕生から、数えて7代目となるモデルだ。
新型フェアレディZの存在は、2020年5月の決算発表で公表された同社の事業構造改革計画「NISSAN NEXT」でもチラ見せされていたが、今回はほぼ全貌が明かされている。
そのデザインは、大ヒットして北米市場における日産の地位を確固たるものにした初代のS30型や、バブル時代の1989年に誕生して、Zシリーズのもうひとつの代表作となった4代目Z32型のイメージを巧みに受け継ぐものだ。 それらを知る人なら、誰もがひと目で新型フェアレディZと認識できるだろう。しかも日産が最も輝いていた時代の、華やかな記憶が想起されるはずだ。それは、このモデルが同改革計画でゴールとして明記している「『日産らしさ』を取り戻すこと」に、欠かせないピースであることを物語る。
新型のディメンションは全長4382mm、全幅1850mm、全高1310mmと発表されている。これはほぼ現行のZ34型と同じ。主な試乗である北米はもちろん、日本でも十分扱えるサイズ感だ。
歴代のフェアレディZを振り返りながら、新しいフォルムを創造した造形は、日本国内のデザインチームの手になるという。長いエンジンフードやティアドロップ型のLEDヘッドランプが醸し出す表情は、紛れもなく名車の誉れ高い初代S30型へのオマージュだ。
LEDヘッドランプユニット内にリフレクションのように組み込まれた半円のデザインは、ロングノーズとヘッドランプカバーを備えていた、北米向けの初代S30型240ZGの独特の表情を再現したもの。長いノーズと傾斜したルーフラインが形成する流れを潔く断ち切るテールエンドや、フロントフェンダーよりもわずかに低く、なだらかに傾斜したリヤフェンダー周りの量感あるデザインも、S30型を連想させるサイドシルエットの決め手という。
一方、横長のLEDテールランプを備えたリヤビューのデザインは、ロー&ワイドをテーマに堂々たる貫禄を醸し出していた、4代目Z32型から着想されたもの。明るいイエローとブラックルーフの2トーンカラーも、それぞれZ32型とS30型のイメージを受け継いだ取り合わせと説明されている。
インテリアにも、それらの名車のイメージは継承されている。メーターパネルは12・3インチのフルデジタルディスプレイに各種メーターを表示する最新型だが、ダッシュボード中央に3つのサブメーターを配置するなど、初代を知るファンをニヤリとさせるディテールが散りばめられている。
ステアリングのデザインも、クラシカルな3本スポークのディープコーンというこだわりだ。
そんな新型フェアレディZの最もスポーツカーらしい部分は、パワートレーンかもしれない。EVや自動運転技術で最先端を行く日産の最新モデルでありながら、新型ZにはV6のツインターボエンジンと6速のマニュアルトランスミッションという、極めつけのアナログな心臓が積まれるのだ。
現状では排気量や最高出力は公表されていないが、発表文には「Zはいつの時代もその時代をリードするパワフルなエンジンを搭載してきました」と誇らしげに謳われている。フロント255/40、リヤ285/35という極太の19インチタイヤに見合った、パワーとフットワークを期待できるだろう。
ちなみに現行のZ34型は、NAのV6、3・7Lから最高355PSを絞り出す。Z32型で日本車初の280PSに到達し、以後の最高出力自主規制値の先駆けとなったZだが、今なら堂々と400PSオーバーも謳えそうだ。
日本車を代表するスポーツカー、Zの出来栄えに期待しよう。
初代のDNAを継承。エレガント&マッシブスポーツ!

初代と新型を見比べてみよう。細部はかなり異なるものの、全体としては驚くほど雰囲気が似ている。デザイナーのセンスと工夫が感じられる。
ボンネットフードやヘッドランプのティアドロップ形状は初代に通ずる特徴的アイコンだ。
V6ツインターボエンジンのエキゾーストノートを響かせてテストコースを疾走する新型フェアレディZ。パワフルでスタビリティの高い走りを見せてくれるはずだ。
ボンネットフードやヘッドランプのティアドロップ形状は初代に通ずる特徴的アイコンだ。
4代目Z32を思い起こさせるテールランプ。左右2本出しのマフラーもスポーティだ。


2つの半円デザインは、初代S30のバリエーションとして登場した240ZGをイメージ。
高性能を予感させる大開口ラジエターグリル。スポーティで精緻なデザインが目を引く。
水平に広がるテールランプはリヤの角まで回り込んでいる。シャープに光るLED仕様だ。
Cピラーの「Z」が誇らしげに輝く。初代S30のデザインが現代流にアレンジされている。
ノーズには7月に発表された日産の新しいブランドロゴが光る。シンプルかつスマート。
足元を引き締める19インチアルミホイール。ドリルドタイプのブレーキディスクを装備。
初代をイメージした流麗かつグラマラスなサイドシルエット

新型ではカーボン部品の採用も積極的に行われている。サイドシルやリヤバンパー、フロントバンパー下のチンスポイラーがカーボン製だ。正式アナウンスはされていないが、CFRP部品成型の新技術が使われていることは想像に難くない。
【フェアレディZ プロトタイプ】主要諸元 ●エンジン:V6ツインターボ ●トランスミッション:6速マニュアルトランスミッション●全長:4382mm ●全幅:1850mm ●全高:1310mm ●ホイール/タイヤ寸法:フロント(255/40R19)、リヤ(285/35R19)
最新技術を注入したスポーティなコクピット

コクピットと呼ぶのが相応しい、ドライバーオリエンテッドなレイアウト。Z専用ステアリングはスポーツカーらしいディープコーン形状だ。
中央部分にグラデーション加工が施されたシート。イエローのパイピングが印象的だ。
12.3インチのフルデジタルメーターディスプレイを装備。高精細で視認性に優れる。
トランスミッションは6速マニュアル。オーセンティックスポーツに相応しい装備だ。
現行モデルZ34と比べてみると……

デザイン的なキーワードは現行型と共通する点が多いが、新型はよりスマートにまとめられている印象だ。ロングノーズ&ショートデッキのスタイリングも同様。ただしボディ曲面の抑揚を強調する現行型に比べると新型はよりスリーク。大人っぽい雰囲気を漂わせる。インテリアは両者ともスポーツカーならではのストイックな空間になっており、3連メーターなどのZならではのアイコンも共通しているが、フル液晶メーターなどのデジタル装備の差が決定的。12年の時の流れを感じてしまう。
フェアレディZの歴史
初代S30(1969年から)
2代目S130(1978年から)
3代目Z31(1983年から)
4代目Z32(1989年から)
5代目Z33(2002年から)
6代目Z34(2008年から)
フェアレディZの開発は、安価でスタイリッシュなスポーツカーが欲しいという北米日産のオーダーで始まった。少人数の開発チームの手で1969年に誕生した初代は、狙い通り北米で人気を呼び、「ズィーカー」の愛称で多くの若いファンを獲得する。1978年の2代目、1983年の3代目とキープコンセプトで進化したが、その間に進んだ円高の影響で価格上昇を余儀なくされ、1989年の4代目はより格上の本格スポーツカーとなった。バブル景気を背景に、1990年までに走りで世界一になるという日産開発陣の「901活動」から生まれた4代目は日米の市場で高く評価されたが、バブル崩壊後に経営難に陥った日産は後継モデルが開発できず、4代目が10年余り作られた後、Zは2000年に一度は絶版となる。それを蘇らせたのが1999年にルノーから送り込まれたカルロス・ゴーン元社長だ。日産復活のシンボルとして2002年には5代目がデビュー。2008年には現行の6代目が誕生し、改良を重ねて今に至る。
日産のこれからに期待大!

今年5月の決算発表において、日産はドラスティックに「選択と集中」を行うことをアナウンスした。2023年度までに車種数を20%削減し、全世界69車種から55車種に絞り込むと同時に、今後18か月で12の新型車を投入するというものだ。年内にはコンパクトカーのノートがフルモデルチェンジすることが噂されており、今回プロトタイプが披露されたフェアレディZもその流れにそったものだ。また、これまで高価だったカーボン部品をより積極的に市販車に採用するための新技術開発を行うなど、今後の展開を見据えた日産の活動に注目したい。
●文/横田 晃、月刊自家用車編集部