新型車情報
更新日:2019.12.27 / 掲載日:2019.12.27
NISSAN アリアの中身!? 2モーター4駆EV先行試乗でわかったこと

実は、アリアの中身となるであろう「ツインモーター4WD・EVシステム」については試乗して体験する機会を得ている。その乗り味をレポート!
まず通常のリーフで走行し、次に開発中システム搭載車に乗るプログラム。見た目はライトチューンリーフといった感じだが、中身は正に「別物」!
ニッサンのテストコースで試乗。各輪のトルク配分や回生の状態は、インパネに設置された大型モニターで確認できる。
ハイパワーなだけでなく 快適性にも配慮している
外観はリーフのスポーツ仕様という体だが、ツインモーター4WDによる4輪制御技術開発の純粋なテストベッドである。パワートレーンはリーフe+用ユニットを前後に搭載。システム最高出力は309PS、最大トルクは69.4kgmに達する。凄いスペックだが、これは控え目な数値。最大トルクは単純に倍増しているが、2倍ならば436PSになる最高出力は七掛けの見当。効率の低下する高回転域での負担軽減と高速域の実用性能も狙いなのである。
パワースペックだけ見ていると豪快な走りを想像してしまうが、制御のアプローチは逆である。ドライバーや同乗者に負担の少ない走りが狙いである。すでに採用されているが、急加速初期のスナッチングをなくすためのトルク制御と同様の考え方を走り全般に展開したと考えれば分かりやすい。
例えばeペダルのエンジンブレーキ。リーフやノートeパワーの加減/エンブレの反応は鋭く、よく言えば切れ味がいいのだが、ペダル操作に素直過ぎて、雑な操作ではギクシャクしやすい。プロト車では始めに後輪に強めのエンブレを利かせ、前のめりの挙動を抑えると共に同乗者に予兆を与えることで体感での滑らかな減速感とした。言い方を換えるなら滑らか運転の勘所を制御システムが代行してくれているわけだ。
こういった「勘所」は操安性向上にも活かされている。例えば転舵時に前輪駆動力を弱めることで回頭追従性とライントレース性を向上。また、コーナリング限界で前輪や後輪が滑り出した時にはブレーキ制御によるスタビリティコントロールが介入するが、従来のシステムのように辻褄合わせのリカバリーといった印象はない。滑り出しを予測でもしているかのように早いタイミングで介入し、失速感もなく、狙ったラインをトレースしてくれる。
左右輪の制動トルク分配は従来システムと同じブレーキ制御。ならば、この滑らかさは駆動系の高精度なトルク補正と前後トルク配分によるものだろう。もちろん、これだけのパワーを持ったモデル。全開での加速はスペックどおり。相当な高性能車である。それだけ負荷変動も大きくなり、普通なら操作は神経質になり、応答遅れ対応の予備操作や反動を抑えるための補正操作も必要だ。だが、この技術開発プロト車はそういう苦労を省いてくれる。駆動トルクの精密制御が可能なツインモーター4WDのポテンシャルの高さがあればこそ。同時に電気自動車の走りが単純な速さから動的な質の向上に向かったことを実感した。