ドライブ
更新日:2018.02.08 / 掲載日:2018.02.08
テスラ ロードスター火星へ! スターマン視点で宇宙ドライブを楽しもう

SpaceX「Live Views of Starman」より
文●ユニット・コンパス 写真●テスラ
電気自動車専門メーカーであるテスラは、2月7日未明(米国時間2月6日午後)に、テスラにとっての初めての市販EVである初代テスラ ロードスターを火星に向けて出発させたと発表した。スーペスX社のロケット「ファルコンヘビー」のペイロードに搭載されたテスラ ロードスターは打ち上げ後、地球と火星の公転軌道を遷移する楕円軌道へと投入される。成功すれば、このクルマは今後、半永久的に太陽を周回するという。
自動車が宇宙空間を“ドライブ”するのはもちろん史上初のこと。コックピットには宇宙服に身を包んだ「スターマン」が乗り込んでおり、デビッド ボウイの「Life on Mars?」がBGMとして流されている。ナビゲーションモニターに掲げられた「DON’T PANIC(慌てないで!)」というジョークも気が利いている。
打ち上げの模様やその後のドライブ風景は、スペースXが動画配信サイトなどを通じてリアルタイムで配信され、多くのユーザーがこの挑戦を見守った。「Live Views of Starman」とタイトルされたこの動画は、現在も公開されている。フロントガラスの先には青く輝く地球や広大な宇宙空間といった、まさに絶景がシェアされているので、ぜひご覧いただきたい。

実はこの夢のある取り組みは、テスラを率いる実業家のイーロン・マスク氏がCEOを務めるスペースX社の新型ロケットの試験打ち上げの一貫として実現したもの。スペースX社は、民間宇宙企業として有人火星飛行を目指しロケットを開発中で、今回高さ70mの2段式新型ロケット「ファルコンヘビー」のデモミッションを行なったが、ペイロードになんらかの重量物をバラストとして搭載する必要があった。そこで、重しの代わりにテスラ ロードスターを搭載するというアイデアが生まれたというわけだ。

ちなみにこの新型ロケット「ファルコンヘビー」は、非常に進歩的かつ先進の設計が行われている。打ち上げ時に推力を発生させる第1ブースターは、小型エンジンを多数組み合わせたクラスタタイプとすることで、信頼性と高性能化を両立。さらに、この第1ブースターは、打ち上げ後に指定された基地に自分で戻ってきて再着陸する設計となっている。通常では使い捨てにされるブースターを再利用することで、従来とは比べものにならない低コストが可能になると言われている。今回の打ち上げでは、3本のブースターのうち2本が再着陸に成功。これは航空宇宙産業的には非常に大きなニュースである。
ロケットにおける能力の指標は「信頼性」、「価格」、「積載力」と言われているが、「ファルコンヘビー」が開発に成功すれば、これらすべての能力においてライバルを大きく凌駕するゲームチェンジャーになると分析されている。
スペースX社の新型ロケット「ファルコンヘビー」
第1ブースターは9基のエンジンを備えるロケットを3本束ねた構造で、打ち上げ後はそれぞれが再着陸する設計

ブースターが再着陸する様子。ランディングギアが展開されているのが見える

今回のプロジェクトを記念し、2月12日(月、祝)までテスラ青山にて初代ロードスターを展示している
スペースX社では、ロケットによる旅客ビジネスも視野に入れており、これらの技術が実現した暁には、飛行機で10時間近くかかっていた日本とアメリカの移動も、1時間以内になるというから興味深い。将来、「宇宙ドライブ」に出かけたスターマンのように、我々が愛車とともにロケットに搭乗する日が来るのかもしれない。