【グー連載コラム】永福ランプのマニアック車パトロール隊　（2020年10月）

取締り理由「あまりにも運転がうまかったから」
　先日、長野県の国道152号線を、高遠から諏訪方面へ向けて走っていたときのこと。前を行く軽自動車の運転が、妙にうまいことに気付いた。決して飛ばすわけではない。直線ではゆったり流しているが、コーナーでも速度をほとんど落とさず、ブレーキランプもほとんど灯けずに、それはそれはスムーズに走っている。我々はピンときた。
「あれはカーマニアの走り！」
　車種は、初代アルトラパンである。
　ラパンといえば、女性向けに企画された軽。そのラパンがあれほどスムーズな走りをするとは……と思い始めた頃、同乗者のひとりが気付いた。
「なんかリアにSSって書いてありますよ」
　おお！　アルトラパンSS！　好評だったラパンの男性向けバージョンとして、03年に追加発売された、ハイプレッシャーターボエンジンを持つストリート・スポーツ（SS）である。
「SSってことは、MTかもよ！」
「MTなら、次の発進で少しバックするかもしれませんね」
　ラパンSSは、次の坂道発進時に、見事に少しだけバックしてくれた。その瞬間、こちらの車内は「おおーっ！　MTだぁ！」という歓声に包まれた。
　それから約30分。我々はラパンSSの一挙手一投足に「うまい！」「さすが！」などと夢中になった。まさかラパンSSのドライバーも、後続車の車内がこんな騒ぎになっているとは、思いもしなかっただろう……。
　アルトラパンSSをグーネットで検索してみたところ、執筆時点の流通台数は108台。価格帯は5万円から110万円というところだった。安い個体はほとんどが4AT車で、108台のうち70台を占める5MT車は、年式を考えると非常に相場が高く、隠れた人気車であることがわかる。なにせ軽のMTというだけで、希少なマニアック車。しかも「SS」ともなれば、さもありなん。

2002年　初代アルトラパン誕生
くつろぎ感覚のデザインを採用したアルトの派生車として誕生。フランス語で「ウサギ」の車名や、丸みのある箱型デザインなど、見るからに女性向け。
2003年　「SS」追加
男性にも売れるんじゃないかというねらいで追加されたスポーツグレード「SS」。64馬力のターボエンジンを搭載し、専用デザインも様になっていた。
2004年　一部改良
全グレードに足もとを広く使える前席ベンチシートが採用されるが、「SS」だけは採用されず、バケットタイプのシートが搭載されたままだった。
2007年　一部改良
新デザインのフロントグリルやカラーの異なるシートやドアトリム表皮などが採用された。ただし、元々が専用デザインだった「SS」だけは採用されず。
2008年　ラパンがモデルチェンジ
アルトラパン全体としては好評ということで、見事に2代目へフルモデルチェンジを果たす。だが新型で「SS」グレードが設定されることはなかった……。

昭和の名車だったフロンテSSへのオマージュとして、ラパンに設定された「SS」ことストリート・スポーツモデル。ボーイズレーサー的なフロントマスクが泣かせるぜ。後方から見ると、ベース車との違いはバッジのみというところもシブイ。

（掲載されている内容はグー本誌2020年11月号の内容です）※中古車価格はグーネット 2020年9月調べ。記事中の価格は参考であり、中古車価格を保証するものではありません。