カーライフ
更新日:2019.12.02 / 掲載日:2019.12.02
自動運転中の事故は誰が責任を負う?自動運転車普及の鍵を握る法整備
グーネット編集チーム
官民一体の強烈な推進力により実用化の近づいてきた自動運転車。すでに一部自動化された車が街路を行き交っています。
けれども、問題になるのは事故が起きた場合の責任の所在です。責任の所在を明らかにできない限り、メーカーの技術開発も消費者の購入も滞ってしまいます。
自動運転車普及の鍵を握る法整備について、2019年11月時点での現状を報告します。
自動運転中の事故は誰の責任?国の方針を確認しよう
グーネット編集チーム
2018年3月に行われた未来投資会議において「自動運転にかかわる制度整備大綱」が示されました。自動運転中の事故は、原則として所有者が賠償責任を負うという方針が決定づけられたのです。
方針決定により、これまで責任の所在を懸念していたメーカー側の積極的な開発が予想されます。政府の目標であった東京オリンピックまでの実用化が具体性を帯びてきました。
所有者による責任が認められるのは自動運転段階「レベル3」まで。「レベル3」とは、自動運転中であってもドライバーが緊急対応できる状態を指します。それ以上の自動運転段階「レベル4」に関しては、今後の検討に委ねるということです。
ハッキングによる事故の賠償責任は政府が補償しますが、システム更新とセキュリティ対策済みでなければなりません。また、事故原因解明のため、運転記録装置の設置が義務付けられます。
自動運転レベルとは?自動走行システムの段階を覚えておこう
内閣府の推し進める自動走行システムの研究開発計画によると、自動運転レベルは1~4の4段階に分類されています。以下がその概要です。
・レベル1 加速・操舵・制動のいずれかをシステムが行う
・レベル2 加速・操舵・制動のうちの複数をシステムが行う
・レベル3 加速・操舵・制動のすべてをシステムが行い、システムからの要請があればドライバーが対応する
・レベル4 加速・操舵・制動すべてをシステムが行い、ドライバーはまったく関与しない
レベル2までは運転の主体がドライバーにあり、すでに問題なく実践されている状態です。ところが、レベル3以上になると運転の主体がシステムに移り、ドライバーはサポートする立場になります。問われるのは事故のときの責任の所在です。
これに対し、レベル3までは所有者が責任を負う、という方針が決定しました。
しかしながら、気象条件や道路状況によって自動運転の正常な動作が妨げられる可能性もあります。どのような状態を正常動作と呼ぶかも議論の的となっており、場合によっては道路などの環境整備も必要でしょう。
事故が起こってしまったとき、地方自治体をも巻き込んだ論争になりかねません。法整備が急がれます。
今後の普及の鍵を握る、技術の進歩に合わせた法整備
政府は2020~2025年を自動運転実用化の過渡期と位置づけ、法整備と規制を進めていく方針です。
日本の道路交通法はジュネーブ条約に基づき、運転者の関与を前提に定められています。自動運転システムと矛盾するため、道交法改正の議論は深めていく必要があります。
手始めとして2019年5月に「改正道路交通法」が可決され、成立しました。
主な内容は「ながら運転」容認。自動運転車においては、運転者が緊急対応できる状態であれば、スマホや携帯電話を操作してもかまわないということです。
これに対し、従来の、自動運転でない車での「ながら運転」に対する罰則が強化されました。反則金の上限が6千円から1万8千円に上がる見通しです。また、飲酒に関しては従来通り、自動運転車においても厳しく罰せられます。
小さな前進ですが、しばらくは「レベル3」を前提に法整備を進めていくということです。すでにメーカー各社がレベル3対応の自動運転車を開発し、実用化へ向け各地で実証実験を重ねています。今後も完全自動化へ向けた、さらなる技術開発が進むことでしょう。
普及の鍵を握るのは法律です。罪のなすり合いにならないよう、しっかりとした法整備が望まれます。
まとめ
かつて夢物語だった自動運転システムの時代が間もなくやってこようとしています。すでにレベル2までは実用化され、レベル3が当たり前になるのも時間の問題です。次はレベル4、そして人は何もせずに移動できるようになるのでしょうか?
技術の進歩に置いてきぼりにされないよう、道路環境と法整備も進められつつあります。自動運転システムとは、人のための技術であることを認識し、所有者としての心構えを持つことも必要です。