カーライフ
更新日:2024.09.12 / 掲載日:2024.09.12

安全につながる、大人のドライブテクニック

あおり運転してる場合じゃない!
もっと上手く運転したい! とは、ハンドルを握る多くの人が考えること。しかし、「上手く」と言ってもその塩梅は人によってさまざま。多くのクルマ好きが、若い頃は「速く走りたい」と思っていても、歳をとればそれ相応の、大人らしい走りを身につけたいと思うものだ。今回は、現代を生きる我々に、今いったいどんな運転が求められているのか、多方面からの声を聞きながら考察していこう。

構成・文/フォッケウルフ 撮影/茂呂幸正、木村博道 本音トークまとめ/瀬 イオナ
(掲載されている内容はグー本誌 2024年9月発売号掲載の内容です)

 スポーツに“上手い・下手”があるように、クルマの運転にも“上手い・下手”がある。一方で、大半の大人がスポーツをプロとして極めるのではなく、たしなむ程度に楽しんでいる。言うまでもなく、クルマの運転も、最低ラインを超えてさえいれば極める必要のないものだ。
 かつてはスペシャルなドライビングテクニックを持っていれば人から羨ましがれ、異性からは特別な眼差しで見られたもの。つまりドラテクには強い発信力や訴求力があるわけだが、時代性に則してみれば、クルマの進化と同様、運転にも安全性や快適性が求められるようになった。
 現代人が求めるドラテクは奥深い。だからこそもっと知りたい。それを楽しむのが大人であり、楽しめるのも、やはり大人なのだから。

同乗者を安心させる、さりげない大人テクニックとは?

“大人らしい運転”を実践するための所作とはどんなものか。人から大人っぽく見られるさりげないテクニックや、できないと大人としてカッコ悪いこと。知っておきたいマナーやモラル、それから大人のドライブに欠かせない心の持ちようについて考える。

クルマのプロに聞きました 押さえておきたい基本的技術と心の持ち方

 私が若い頃、助手席に乗る女性たちは、スピードを出すと喜んだ。「もっと飛ばして!」「前のクルマ全部抜いて!」と言われたりした。スピードが豊かさと結びついていた時代だった。
 そんな昔話をすると、今の若い世代は「信じられない」と絶句する。飛ばす運転は、若い世代だけではなく、あらゆる世代に嫌われるようになった。嫌われるを通り越して正気を疑われる。クルマのスピードは、誰も喜ばない「悪」になったのだ。
 ただ、スピードが善だった時代にも、個人的にはスムーズな運転を心がけていた。スムーズな運転とは、Gの変化が穏やかということだ。
 たとえばMTのシフトチェンジ。いつギアを変えたのかわからない、「ATだと思った!」と言われるような運転を心がけていた。アクセルはオン/オフのスイッチではなく、無段階の微調整が可能。無限に繊細に扱うことができる。ハンドルも同様だ。
 最も重要なのはブレーキだ。いわゆる「カックンブレーキ」は、Gの変化が唐突なブレーキ操作のこと。同乗者を乗り物酔いさせてしまう。私は若い頃レースの先輩に、「エレベーターが止まるときみたいに止
まれ」と言われた。そのほうがサーキットでもタイムが出ると。
 高性能なエレベーターは、いつ止まったのかよくわからない。あれをクルマで再現すれば、現代でも「運転上手いですね」と喜んでもらえる。
 そんなテクニックを超えて、今の世の中で一番喜ばれるのは、決してカッとせず、周囲を思いやる運転だ。
 ドライバーがカッとすると、車内の空気がピリピリして、居心地が悪くなる。冷静な判断ができなくなって、安全も損なわれる。
 究極の大人の運転は、アンガーマネージメント(怒りのコントロール)ができる運転だ。どれだけ乱暴な割り込み方をされたって、たかが1台列の後ろになっただけのこと。取るに足らない損失だと、やりすごせるようになることだ。大人の余裕というやつである。
「ああいうのを許したら社会が悪くなる!」などと、正義を振りかざしてはいけない。自分一人で社会を正すことなどできないのだから。社会をよくしたいなら、乱暴な運転に出会っても、笑ってやりすごしたほうがきっと有益だ。

自動車評論家 清水草一 1962年東京生まれ。人生の半分以上を自動車評論家として過ごしてきた大ベテランで、『そのフェラーリください!』、『首都高はなぜ渋滞するのか!?』など著作も多数あり。

差がつく! 大人目線の運転マナー

早めのウインカーが重要
 道路交通法では「車線変更時は変更する3秒前、右左折時は右左折地点から30m手前」でウインカーを出すよう定められている。出さない人は問題外だが、曲がる寸前やギリギリになってウインカーを出すのは、後方の車両に失礼だし、事故につながる恐れもある。なるべく早めに出して、周囲のドライバーに知らせたい。

ハイビーム・ウォッシャーにも配慮を
 近年はハイとローを自動で切り替えるオートヘッドライトも登場しているが、対向車や先行車がいるときにハイビームのままにしないよう注意。ロービームを使えば問題ない。また、高速道路走行中にウォッシャー液を使用すると、たいてい後方車両にもかかるので、なるべくなら後ろに誰もいないときに使いたいものである。

急停車・急発進はNG
 同乗者だけじゃなく、後方車両にも気を配れるのが大人である。自車の後方に車両がいるとき、当然ながら急停車はアウトだ。ブレーキが間に合わずに追突される恐れがあるし、後方のクルマに「あおられた!」と受けとられることもあるだろう。逆に急発進もよくない。タイヤが路面の石などを後方へ弾き飛ばす可能性がある。

いつだって走行車線をキープ
 近年、よく渋滞の原因になっているとされているのが、追い越し車線をキープして走り続けるクルマ。それが意図的なものなのか、気づいていないだけなのかは問題ではなく、とにかく追い越し車線を走り続けることは違反だと知ってもらいたい。「キープレフト」を心がけて、後方車両のイライラにつながることはもうやめよう。

トラブルシューティング こんなときどうする?

Q.追い回されたら?
 あおり運転などのトラブルで相手がヒートアップしてしまい、ひたすら自車についてくるような状況になってしまったらどうするべきか。相手はこちらが停車するのを待っていると考えられる。同乗者がいれば警察へ電話してもらいその指示に従う、あるいは警察署など警察関係の建物や、身の安全が確保できる場所で停車したい。

Q.割り込まれたら?
 急にウインカーを出して、あるいはウインカーを出しもせずに自車の前に割り込んでくる車両は必ず存在するもの。そんなときは大人の寛容な心で先を譲ってあげようではないか。もしかしたら体調不良なのか、急用があるに違いない。あるいは運転しているのは知人や恩人……そんな風に考えれば、きっと許せるはずだ。

Q.あおり運転されたら?
 後方車が威圧的に追い立ててくる「あおり運転」。自分がそうされたら、まずはその原因を考えてみよう。交通の流れに沿って走れていない(速度が遅すぎる)のか、あるいは追い越し車線を走行し続けているか。ともあれエキサイトしている相手に相対してはいけない。安全を確保しながら避けて、先に行ってもらうようにしたい。

Q.バイクや自転車への対応は?
 すり抜け行為や通行区分違反などをする二輪車がたまに見受けられる。しかし、あちらが違反をしているからといって、自分も同じことをしてはならない。まずは冷静になって、もしバイクや自転車とぶつかったら、事故になったら……と想像してみるべきだ。よける、あるいは近づかないくらいの気構えでいたほうがいいだろう。

Q.クルマを降りてきたら?
 トラブルになった相手が自分の前で停車してクルマを降りてきたらどうするべきか。まずは焦らず、クルマにロックをかけて、絶対にクルマから出ないこと。そして警察へ通報するべきだ。このとき、スマホなどで相手を撮影する人も多いようだが、相手が逆上する可能性もあるので注意。何はともあれ身の安全を第一に。

Q.道を譲ってくれたら?
 車線変更や合流などの際、道を譲ってもらったお礼としてよく使われているのが「サンキューハザード」。後方の相手車両に対して、お礼の意味をこめてハザードを数回点滅させるのは通例となっているが、じつはハザードの本来の使用目的と異なるため違反行為となる場合も。手や会釈などで感謝の気持ちを伝えられればベストだ。

女性たちの本音トーク 〜じつはこんなところを見ています!〜

最近の淑女たちはドラテクやクルマに対してどんなことを考えているのか。クルマに乗る機会が多いという
アラサー女子に集まってもらい、自由に語ってもらった。ドライブデートを成功させたいならぜひご一読あれ!

かっこいい大人ドライバーなら相手の気持ちを読み取るべし!

[瀬 イオナさん] 神奈川県出身の28歳。レーサーの中谷明彦氏に師事し、“走って書ける”ジャーナリストを目指して活動中。「距離ガバ」勢なのでついつい長距離運転し過ぎてしまう。

洗車しておいてくれたけどシートの下にゴミ発見!

車内まで掃除していたようで一見キレイでしたが、よく見ると座席の下に空のペットボトルが落ちていました。「この人、じつはズボラなのかな……?」と思ってしまいました。(イオナ)

[黒木美珠さん] 静岡県出身の28歳。自動車ジャーナリスト志望でライターやYouTuberとして活動中のクルマ系インフルエンサー。95日連続車中泊で日本一周をしたほどのクルマ好き。

クルマのおもてなし機能といえば一番はシートヒーターかも!

助手席のサンバイザーにミラーがあるとうれしいけど、もっとうれしいのはシートヒーターが付いてること。寒い冬の待ち合わせの際、事前に温めてくれていたときは思わずキュン! でした。(美珠)

[大島このみさん] 東京都出身の33歳。秘書の経験から経営に関心を持ち、合同会社を設立したクルマ好き女子。人生のバイブルは『頭文字D』で、エンジン始動音とブリッピング音が大好物?

ドライブミュージックは一緒に楽しめるジャンルがいいな

突然、知らない曲をかけた人がいました。好きな曲を聴きたいのはわかるけど、少し気を使ってほしい。何を流せばいいのかわからなければ聞きましょう。そこから会話が生まれます。(このみ)

このみ「イオナちゃん、最近、元同級生と久々に会ってドライブしたんだって?」
イオナ「そうなの! そしたら張り切っていいところ見せたかったのかよくわからないんだけど、かなりスピードを出す人だったんだよね……。優しい見た目と行動が全然合ってなくてびっくりしちゃった」
美珠「いるいる! 自分では普通だと思っているのかもしれないけど、前のクルマと車間距離が近い人もヒヤヒヤしちゃう。ブレーキかけるのが遅い人もヒヤヒヤする」
イオナ「運転するときはなおさら紳士的で心に余裕を持ってほしいな。ハンドル持ったら性格変わるとかマジやめてー!(泣)」
このみ「紳士的といったら、譲り合い精神を持っている人を見るとキュンとくるかな」
美珠「周囲の道路状況を考えて運転する人とかね! 渋滞中に停車するとき、横に路地があったら手前に止まって少しだけ間を空けておくとか、ちょっとしたことでも、気遣い上手で素敵だなって思う」
イオナ「大人の余裕というか、ゆとりというか。親の世代はクルマを持つことがステータスだったって聞いたことあるけど、今はそこが第一条件ではないよね!」
美珠「このクルマ乗っててほしいとか、この車種じゃないからセンスビミョーとか、そういうのはないかな。むしろ車種は問わないもん」
イオナ「何に乗っているかより、運転しているときの性格重視だね」
このみ「私はスポーツカーが好きだから、音で楽しませてくれるクルマが来たら正直おっ! と思っちゃ
う(笑)。だからといって、イキって一般道でオラオラされたら萎えちゃうけど。サーキットでやって(笑)」
イオナ「速く走るための運転スキルとか普段はいらないよね。ちゃんとまわりが見えていて、ルールを守って運転してくれる人が優勝!」
美珠「ルールといったら、駐車場から道路に出るとき、歩道の手前で一時停止しない人がいて、ドン引きしちゃった。私がそれで巻き込まれたことあるから、結構気にするポイントなんだよね。歩行者の気持ちも考えて運転してほしいな」
このみ「とにかく、男女問わず視野を広く持って、余裕のある運転をしてほしいと願うばかりだよね」
イオナ「私のクルマが見えてないのか、ヒュッと横から入ってきて、私のほうを見てびっくりした顔をされたときは、『こっちがびっくりだよ!』ってなった。普段運転してないのか、視野が狭いのかなと思った出来事だったな」
美珠「“だろう”運転が減って、“かもしれない”運転が多くなるのを願うばかりだね!」
このみ「そろそろ秋の行楽シーズンだし、心に余裕を持ったドライバーが多くなりますように!」

ひと昔前は当たり前だったが今ではめずらしいモノ(!)になりつつあるMT車。普段見慣れないからこそ目を惹くポイントでもあり、かっこよさを引き立ててくれること間違いなし。
荷物が入るのはやっぱりうれしいポイント。キャンプやスキー、スノボ、ゴルフなどのアクティビティや遠方へのドライブでも安心だし、お買い物デートも余裕を持って楽しめちゃう。

車高が低いと乗り降りが大変。女子がこういった世界の魅力を知らずに初ドライブデートを迎えたら悲惨かも。低さの魅力に触れて、こちらの世界へ引きずり込めればいいけど……。
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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
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