カーライフ
掲載日:2022.08.12 / 更新日:2022.08.12

ガソリン価格問題を基本から考える【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】

文●池田直渡

 世間ではガソリン価格の高騰がだいぶ問題化している。政府では「燃料油価格激変緩和補助金」を石油元売り各社に対して支給することで、ガソリンや軽油の価格を抑制する措置を取った。

 当初1Lあたり5円を上限としてスタートした補助金だが、4月25日からはこれが35円に拡充された。さて今回はこの補助金について考察していきたい。

 まずは補助金の趣旨から考えて見よう。言うまでもなく、生活必需品の物価安定策である。わが国では特に地方都市において、公共交通の衰退が著しく、現実の生活にはクルマが不可欠になっている。

 だからこそ地方では1人1台保有という流れになっていて、そうした生活のアシとして軽自動車が普及している。こうした人々にとっては、ガソリン価格の急激な高騰は生活の破綻を招きかねない。そこで補助金というわけだ。

 それはそれで一定の対策にはなるだろうが、泥縄の感は否めない。かねてより「ガソリン価格の半分は税金」と言われて来た。本質的な話をすれば、この税制の見直しこそが議題に上がるべきである。

 例えば、補助金を考慮しないレギュラーガソリンの価格を165円/Lとした場合、40Lのタンクを満タンにしたとして、総額は@165×40=6600円になる。このうち消費税が600円。つまり消費税抜き価格は6000円だ。

 6000円が本体価格と言えない理由はこの内「ガソリン税」が2152円、石油石炭税(含む温暖化対策税)が112円。ガソリンそのものの本体価格は3736円という内訳になっているからだ。ここで本体のみならずガソリン税に消費税が課税される税の二重徴収の問題もあるが、争点が増えすぎるのでひとまずおく。要するに、税は総額の43.4%。半分は少々大げさだが、4割を越えている。満タン1回あたり2864円の税を支払っている計算になる。

 もう少し詳細を見ていこう。ガソリン税は53.8円/Lとなっているが、その内訳は以下の様になっている。

 揮発油税 48.6円/L(内本則税24.3円/L)
 地方揮発油税 5.2円/L(内本則税4.4円/L)

 揮発油税の48.6円/Lの内、税率が定められた本則で規定されているのは半分の24.3円/Lのみ、地方揮発油税 5.2円/Lも同様に本則規定は4.4円/Lのみである。では48.6円から本則分の24.3円と4.4円を引いた差分の25.1円の暫定税率とは何かと言えば、1974年に「道路整備の税源不足を理由に一時的に増額された」暫定税である。

 筆者に言わせれば寸借詐欺を48年間続けていることになる。「それでも道路整備費用が足りないなら仕方ないじゃないか?」という声があるかもしれないが、道路財源は余っていると国は明言している。

 国交省の「道路特定財源の一般財源化について」を見ると、以下の様に記されている。

 〝道路特定財源は、長年にわたり、立ち遅れた我が国の道路の整備状況に鑑み、自動車利用者の負担により、緊急かつ計画的に道路を整備するための財源としての使命を担ってきた。

 しかしながら、その後、道路の整備水準の向上する中、近年の公共投資全体の抑制などを背景とする道路歳出の抑制等により、平成19年度には特定財源税収が歳出を大幅に上回ることが見込まれるに至っている。このため、現時点において、改めて、今後、真に必要となる道路整備のあり方について見極めるとともに、特定財源のあり方について、納税者の理解を得て、抜本的な見直しを行うことが喫緊の課題となっている。〟

 このあと続く基本方針には〝特定財源制度については、一般財源化を図ることを前提とし、来年の歳出・歳入一体改革の議論の中で、納税者に対して十分な説明を行い、その理解を得つつ、具体案を得る。〟と説明される。

 つまり、道路整備費用が足りないから、緊急避難的に自動車使用者に暫定税率での協力を求めた後、いざ予算が余ったら、手のひらを返して、一般財源化し、他に流用するという話である。これが詐欺でなくてなんだろうか?

 「お袋が命の瀬戸際でどうしても手術費用が必要なので借りられないか?」と善意に頼って金を借りておいて、残念ながら手術が間に合わず、お母さんが亡くなって使わなくて良くなったので、借りた金を返さず海外旅行に行く。みたいな話ではないか?

 そして今回の様にガソリン価格の高騰が発生した時ですら、かつて緊急避難的に協力を求めて上げた税を戻そうともせず、補助金で誤魔化そうとしている。受益者負担の名目で実施した暫定税率の一般財源化には、税根拠がないので、一度譲ったら元に戻せないからである。

 税金は払わなければ脱税として犯罪になる。そういう強制力を伴うものの根拠が正当性がないのは法治国家として異常事態である。補助金というインチキで欺されてはいけない。税制度の抜本的改革を強く求めて行くべきである。

池田直渡(いけだ なおと)

ライタープロフィール

池田直渡(いけだ なおと)

1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(『カー・マガジン』『オートメンテナンス』『オートカー・ジャパン』)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。

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1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(『カー・マガジン』『オートメンテナンス』『オートカー・ジャパン』)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。

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