車種別仕様・中古車評価・まとめ
更新日:2018.11.07 / 掲載日:2015.05.22
日本のラリー活動を支えたハイパフォーマンス4WD

あのランサーエボリューションが、最終モデルへと進化した。当初はラリーで好成績を収めるためのスペシャルモデルであったが、時代にあわせてキャラクターも変化し、「エボX」では最高の性能を備えつつ快適性も向上。上級スポーツセダンとしての魅力も高めている。
ランサーエボリューションはこんなクルマ
小さくて軽いボディに高出力エンジンと高度な4WDシステムを組み込んだ、高い戦闘力が自慢のセダン。その研ぎ澄まされた走りは、世界第一級のスポーツセダンと言っても過言ではない。また最新世代の「エボX」はAT免許でも運転でき、数々の運転補助機能で安全に高性能を引き出せる。
三菱 ランサーエボリューション ファイナルエディション(5速MT)
新車価格帯:429万8400円 (ファイナルエディション)
主要諸元
平成27年式
三菱 ランサーエボリューション ファイナルエディション(5速MT)
全長×全幅×全高:4495×1810×1480mm
ホイールベース:2650mm
トレッド前/後:1545/1545mm
車両重量:1530kg
総排気量:1998cc
エンジン:直4DOHCターボ
最高出力:-
最大トルク:-
JC08モード燃費:-
サスペンション前:ストラット
サスペンション後:マルチリンク
ブレーキ前後:Vディスク
タイヤ前後:245/40R18
ついにランエボが最終進化モデルへ
ついにランサーエボリューション、いわゆる「ランエボ」がその幕を閉じることになった。三菱はその最終進化モデルとして「ファイナルエディション」を今年8月に発売することを発表。すでに先行予約が受付されていて、受注が1000台に達した時点で受付を終了する。
そもそもランエボの起源は、「世界ラリー選手権(WRC)での戦闘力を高めるための突然変異種」だ。初代ランエボが登場した当時の世界ラリー選手権は市販車からの改造範囲が狭く、市販車の素性の高さが競技マシンの速さに直結した。そこで、競技での戦闘力向上をねらって小型セダンであるランサーの軽い車体に、より高出力なエンジンを積んで速さを求めたのが初代ランエボなのだ。
セダンボディにハイパワーエンジンだけを搭載という、世間一般的にみれば少し特殊なクルマとなっているのはそのためである。
魅力は、なんといっても“速さ”にほかならない。実力はそのままサーキットを走っても速いタイムを出せるほどで、その類まれな戦闘力こそが根強いファンを引きつけてやまない理由。力強いターボエンジンとそれをしっかり路面に伝える4WDシステムは、登場以来こだわり続けてきたランエボの魂ともいえる。
しかし、10世代目となる「ランサーエボリューションX(以下エボX)」では、ランエボにとって大きな変化が起きた。より幅広い層への訴求である。それまでの殻を破り、競技直系モデルではなくプレミアムハイパフォーマンスセダンとしての素質が大幅に高まったのだ。
たとえばトランスミッション。従来のランエボはごく一部の例外(ランサーエボリューション7 GTーA)を除きATモデルがなかったが、エボXではAT感覚で運転が楽しめるデュアルクラッチシフト「TCーSST」をシリーズの主力とした。またインテリアの上質感や遮音性も大幅に高め、より幅広いドライバーに向けたモデルへと進化している。
ランサーエボリューション ファイナルエディションが登場

最高出力を高めた4B11型2Lターボ
新たにナトリウム封入エキゾーストバルブを採用し、最高出力を向上させるとともに中高速域で伸びのある出力特性としている。最高出力は現段階では公表されていないがランエボ史上最大となるのは確実で、310馬力以上と噂される。

レッドステッチをあしらった専用内装
インテリアは天井とピラーをブラックで統一。差し色としてシート(レカロ製レザー)、ステアリングホイール、シフトノブ、パーキングブレーキレバー、そしてフロアコンソールリッドにレッドのステッチを添えている。

BBS製18インチ鍛造ホイールを採用
ホイールは標準車に装着されるシルバーに対し、ダーク調の塗装を採用している。ボディはフロントグリルをダーククロームメッキに、バンパーセンターとボンネットフードのエアアウトレットをグロスブラック化している。
RIVAL ライバル
スバル WRX STI

新車価格帯:379万800円~411万4800円 (WRX STIの全グレード)
フルモデルチェンジして新型へ
ランエボと同じく世界ラリー選手権を戦うことを目的に登場したスバル「WRX」。昨年登場の最新モデルは、幅広い層をターゲットとしAT(CVT)を組み合わせた「WRX S4」と、速さを追求したMTの「WRX STI」をラインアップしている。
HISTORY モデルヒストリー
PAST MODEL
平成4年10月 | ランサーGSRエボリューションを発売 |
平成6年1月 | ランサーGSRエボリューションIIを発売 |
平成7年2月 | ランサーGSRエボリューションIIIを発売 |
平成8年8月 | ランサーGSRエボリューションIVを発売 |
平成10年1月 | ランサーGSRエボリューションVを発売 |
平成11年1月 | ランサーエボリューションVIを発売 |
平成11年12月 | ランサーエボリューションVIトミーマキネンエディションを発売 |
平成13年2月 | ランサーエボリューションVIIを発売 |
平成14年2月 | ランサーエボリューションVIIGT-Aを発売 |
平成15年1月 | ランサーエボリューションVIIIを発売 |
平成16年2月 | ランサーエボリューションVIIIMRを発売 |
平成17年3月 | ランサーエボリューションIXを発売 |
平成17年9月 | ランサーエボリューションワゴンを発売 |
平成18年8月 | ランサーエボリューションIXMRを発売 |
ランサーエボリューションワゴンMRを発売 |
NEW MODEL
平成19年10月 | ランサーエボリューションXを発売 |
平成20年10月 | ランサーエボリューションXをマイナーチェンジ |
平成21年10月 | ランサーエボリューションXを一部改良 |
平成22年10月 | ランサーエボリューションXを一部改良 |
平成23年10月 | ランサーエボリューションXを一部改良 |
平成24年10月 | ランサーエボリューションXを一部改良 |
平成26年7月 | ランサーエボリューションXを一部改良 |
平成27年8月 | ランサーエボリューションファイナルエディションを発売 |
世代別中古車物件比率

中古車がもっとも多いのはX。その先代であるCT9A/CT9W系もかなり多め。I~IIIは、現在ではかなり希少。
※すべての価格は参考価格です

新開発パワートレーンを搭載してポテンシャルを飛躍的に高めたエボX
フルモデルチェンジでボディを刷新したエボリューションX(通称:エボX)。エンジンを刷新し、上級仕様GSRの主力トランスミッションをAT免許でも運転できる「TC-SST」とするなどランエボ史上もっとも大きな変化が起きたモデルといえる。
三菱 ランサーエボリューションX GSR(5速MT)

中古車参考価格帯:160万円~480万円 (平成19年~平成26年式 ※全グレード)
主要諸元
平成19年式
三菱 ランサーエボリューションX GSR(5速MT)
全長×全幅×全高:4495×1810×1480mm
ホイールベース:2650mm
トレッド前/後:1545/1545mm
車両重量:1520kg
総排気量:1998cc
エンジン:直4DOHCターボ
最高出力:280ps/6500rpm
最大トルク:43.0kgm/3500rpm
10・15モード燃費:9.9km/L
サスペンション前:ストラット
サスペンション後:マルチリンク
ブレーキ前後:Vディスク
タイヤ前後:245/40R18
その高い性能をだれでも引き出せる
もうひとつ、「エボIX」から「エボX」への進化にあたって見逃せないのは、「SーAWC」と呼ぶ車両統合運動制御システムとスタビリティコントロールの採用である。SーAWCは走行機能の電子システムを統合制御し、ドライバーの意図を汲んでねらった走行ラインを走れるようにサポート。そのうえで、競技直系モデルとしての色が濃い「エボIX」までは採用されていなかったスタビリティコントロール(ASC)が、限界走行域でのドライバーの操作ミスをフォローしてくれる。
この2つのシステムが組み込まれた意味は大きい。それらの運転補助デバイスによって、「エボX」は歴代のランエボが持ち続けていた絶対的な速さに加えて懐の広さを身に付けたのだ。腕に覚えのあるひとはもちろん、幅広いユーザーが気軽かつ安全にスポーツ走行を楽しめるクルマに進化したのである。
INTERIOR インテリア
戦闘力を高めつつ、上質な仕立て
インパネ形状はベースのギャランフォルティスに準じるが、加飾パネルは光の反射を抑える色へと変更されている。真円にこだわった専用のステアリングホイール(TC-SST車にはパドルシフトも装備)を採用し、メーターも専用設計だ。「GSR」のシートはレカロ製。


EXTERIOR エクステリア
さらにスポーツカーらしく そして、よりプレミアムに
「ジェットファイターグリル」と呼ぶ、従来とはまったく異なるイメージのフロントマスクを採用。強いダウンフォースを生む大型リヤウイングの採用はこれまでどおりだが、デザインは丸みを帯びている。また、ボンネット上にはタービン冷却用の空気を抜くダクトが設けられ、リヤバンパーも空力を意識した形状だ。「GSRプレミアム」はBBS製鍛造ホイールを装備。

MECHANISM メカニズム
エンジンは世代交代 自慢の電子制御もさらに進化
エンジンは新世代の4B11型へ世代交代。登場時は280馬力だったが、その後の改良で300馬力へと進化している。タイヤの性能を最大限に引き出してドライバーが意のままにクルマを操るのを助ける思想の「S-AWC」の採用で、より安全に走りを楽しめるようになった。


PICK-UP

エボXに初採用された
デュアルクラッチ「TC-SST」
「TC-SST」は、デュアルクラッチ式と呼ぶ新世代トランスミッション。奇数ギヤのクラッチと偶数ギヤのクラッチを交互に繋ぐことで、素早くスムーズな変速を行えるシステムだ。自動変速付きでAT免許でも運転可能。
MARKET DATA マーケットデータ
中古車は高値安定で250万円が相場
エボXはファンに根強い人気を誇るクルマで、中古車は大幅な値下がりをしていない。7年落ちの平成20年式で224万円、5年落ちの平成22年式で287万円。物件の中心が平成19年~22年式で、低走行車は意外と少ない。
グレード×年式別相場
平成19年 | 平成20年 | 平成21年 | 平成22年 | |
---|---|---|---|---|
エボリューションX GSR | 211万円 | 224万円 | 242万円 | 287万円 |
平成23年 | 平成24年 | 平成25年 | 平成26年 | |
---|---|---|---|---|
エボリューションX GSR | 294万円 | 328万円 | 362万円 | 359万円 |
走行距離×年式別相場
平成19年 | 平成20年 | 平成21年 | 平成22年 | |
---|---|---|---|---|
3万km未満 | 230万円 | 257万円 | 246万円 | 307万円 |
3万km~5万km | 244万円 | 241万円 | 260万円 | 276万円 |
5万km以上 | 201万円 | 206万円 | 218万円 | 254万円 |
平成23年 | 平成24年 | 平成25年 | 平成26年 | |
---|---|---|---|---|
3万km未満 | 311万円 | 335万円 | 376万円 | 360万円 |
3万km~5万km | 292万円 | 298万円 | – | – |
5万km以上 | 261万円 | – | – | – |
走行距離別に見ると、1万km未満の車両は思いのほか少ない状況で、全体の1割にも満たない。3万km~5万kmの相場に注目すると、7年落ちで241万円、5年落ちで254万円、3年落ちで298万円。過走行車や改造車も目立つので、じっくりと状態のよい車両を探そう。
年式
平成19年の秋に発表されたので、その年の物件数はやや少なめ。しかし、翌年の平成20年式の車両は多い。走行距離
3万km未満が全体の3割とやや少なめ。5万km以上走った車両が43%と多く、走行距離にこだわると探し難い。

グレード
エボXのグレード構成は「GSR」、「GSRプレミアム」、競技用の「RS」の3機種。しかし、ほとんどが「GSR」だ。
MIVEC搭載で低回転域のトルクを高め扱いやすくなったエボIX
「エボX」の1世代前となる「エボIX」。プレミアム路線を目指して上質化した「エボX」に比べると、競技直系モデルらしい荒々しさが色濃く残っているモデルといえる。
三菱 ランサーエボリューション IX GSR(6速MT)
中古車参考価格帯:140万円~340万円 (平成17年~平成19年式 ※IX系の全グレード)
主要諸元
平成17年式
三菱 ランサーエボリューション IX GSR(6速MT)
全長×全幅×全高:4490×1770×1450mm
ホイールベース:2625mm
トレッド前/後:1515/1515mm
車両重量:1410kg
総排気量:1997cc
エンジン:直4DOHCターボ
最高出力:280ps/6500rpm
最大トルク:40.8kgm/3000rpm
10・15モード燃費:10.0km/L
サスペンション前:ストラット
サスペンション後:マルチリンク
ブレーキ前後:Vディスク
タイヤ前後:235/45R17
熟成された最終形の4G63エンジン
最新のランエボである「エボX」のフルモデルチェンジ前のモデルが「エボIX」だ。エンジンにはランエボではじめて「MIVEC」と呼ばれる連続可変バルブタイミング機構を採用。従来モデルに対して最大トルクの発生回転数が低くなり、より扱いやすく戦闘力の高いエンジンに仕上がっている。
また、「エボIX」で外すことのできないのが「ランサーエボリューションワゴン」と呼ぶステーションワゴンモデルの存在だ。ランエボのエンジンやシャシーに荷室の広いワゴンボディを組み合わせた実用的なモデルで人気も高く、新車販売も絶好調だった。ランエボワゴンは、後に搭乗したエボIXの進化版「エボIXMR」でも用意されている。
INTERIOR インテリア
「GSR」のシート表皮はアルカンターラと本革
ステアリングホイールはMOMO製の3本スポーク。上級仕様の「GSR」ではアルカンターラと本革をコーディネートしたレカロ製のバケットシートを標準装備している。トランスミッションは「GSR」が6速で「GT」と「RS」が5速。「GSR」のリバース時のシフト操作は、ノブを引き上げながらレバーを動かすいわゆるゲトラグ式だ。

MECHANISM メカニズム
4G63エンジンは最終ステージへ
初代ランエボに搭載以来進化を続けてきた4G63型エンジンは、このエボIXで最終仕様へ到達。エンジン回転数と負荷に応じてバルブタイミングを最適に制御する「MIVEC(マイベック)」の採用で、さらに扱いやすく速さを引き出せるトルク特性を手に入れた。状況に合わせ最適な前後駆動力配分をコントロールする「ACD」も継続採用。


エボIXがベースのステーションワゴンも発売された。実用性とハイパフォーマンスを両立し、人気を博した。
MARKET DATA マーケットデータ
物件は揃うが、走行距離が伸びた車両が多い
ひと世代前のエボIXだが、Xと比べるとグッと物件が減っている。2万km程度の低走行な車両もちらほら存在するが価格は高め。予算重視だと8万km以上の車両になってくる。すでに生産終了して希少価値の高いモデルゆえ、程度重視を肝に命じて選ぼう。
グレード×年式別相場
平成17年 | 平成18年 | 平成19年 | |
---|---|---|---|
エボリューションIX GSR | 186万円 | 130万円 | – |
エボリューションIX GSR MR | – | 208万円 | – |
走行距離×年式別相場
平成17年 | 平成18年 | 平成19年 | |
---|---|---|---|
5万km未満 | 251万円 | 314万円 | 321万円 |
5万km~8万km | 211万円 | 239万円 | – |
8万km以上 | 144万円 | 153万円 | 169万円 |
エボIXでは、街乗り重視の「GT」や競技向けの「RS」なども存在したが、これらはほとんど流通していない。中心となるのはやはり「GSR」。進化形であるエボIX MRもそれなりに存在する。ただし、グレードの差よりも、車両状態による差のほうが価格に強く影響する。概ね、220万円の予算は必要だろう。
過去モデルの中古車状況はいまどうなってるの?

中古車参考価格帯:140万円~240万円 (※I~IIIの全グレード)
CD9A/CE9Aと呼ばれるこの世代は残存する中古車はわずかで、Goo-netでは10台前後がヒット。Iは皆無で中心となるのはIII。5万km未満の車両が流通し、一部プレミア価格が付く。

中古車参考価格帯:40万円~180万円 (※IV~VIの全グレード)
プレミア価格のため相場が高めなI~IIIに対し、こちらは走行距離が伸びて安価な物件が多い。物件数はVがもっとも多くIVが少なめ。低走行車も存在するが、先代ほど高額ではない。

中古車参考価格帯:50万円~230万円 (※VII~VIIIの全グレード)
CT9A/CT9Wの世代は、中古車物件が豊富で、まだ十分買える状況。程度によって価格に開きがあるが、走行距離5万kmで160万円がおおよその相場。物件数はVIIIのほうが多めである。

IMPRESSION
自動車ジャーナリスト工藤貴宏の○と×
GOOD
つねに最速・最強もはや日本の誇る伝統文化だ
生まれのルーツが競技だけあって「速さ」を抜きに語ることができないランエボ。高出力エンジンと自慢の4WDシステムにより、だれが乗っても速さを引き出せるのがその凄さだ。4ドアセダンなので実用性の高さは従来から折り紙付きだが、エボXならAT免許で運転できるので超高性能車ながら奥さまも使うファミリーカーにだって最適なのも○。
BAD
エコモデルではないから燃費の悪さは仕方ない!?
ハイパフォーマンスが自慢なので燃費は二の次。だから昨今の低燃費車に比べるとガソリン消費は多く、頻繁にクルマを使う人にとっては気になる部分だろう。とはいえ、走る悦びを考えればクルマ好きにとっては十分に納得できる範囲ではないだろうか。かつては悪かった乗り心地も、エボXではかなり改善されているので心配はいらない。
※すべての価格は参考価格です
※中古車参考価格はすべてGoo-net4月調べ