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更新日:2020.07.28 / 掲載日:2020.07.28
日産パイクカーシリーズ第2弾! NISSAN PAO メカニズムとここに注意

今から30数年前となったバブル期は、その時代らしいクルマが多数誕生した。高性能を売りにしたNSXやGT-R、高級車志向のセルシオ、オープンを身近にしたユーノスロードスターなどがパッと頭に浮かぶ人が多いかもしれない。その他にも多くのバブル期ならではのモデルが発売されたわけだが、日産のパイクカーもバブル期ならではの車両である。その第1弾となったBe-1に続くパイクカー第2弾が、今回取り上げるパオだ。デビューから丸30年が経過したパオは、果たして今でも調子良く乗ることができるのか?
NISSAN PAO(PK10) の 入手難易度&購入予算は?
入手難易度:易★★難
中古車相場:19万から130万円
SPEC パオ(5MT)
●全長×全幅×全高:3740×1570×1475mm●車両重量:720kg●エンジン:MA10S型水冷直列4気筒SOHC ●排気量:987cc ●最高出力:52ps/6000rpm●最大トルク:7.6kg-m/3600rpm●サスペンション形式:ストラット/4リンクコイル●ブレーキ:ディスク/ ドラム ●タイヤサイズ:155SR12
パオキャンバストップ(3AT)
●全長×全幅×全高:3740×1570×1480mm●車両重量:760kg●エンジン:MA10S型水冷直列4気筒SOHC ●排気量:987cc ●最高出力:52ps/6000rpm●最大トルク:7.6kg-m/3600rpm●サスペンション形式:ストラット/4リンクコイル●ブレーキ:ディスク/ ドラム●タイヤサイズ:155SR12
左の写真を見て、当時のモーターショーに展示されたコンセプトカーと気付く人は流石です。それはさておき、パオの中古車市場は? 生産台数が3万台少々と少ない上に登場から30年以上も経ったことを考えれば、流通台数は今でもかなり多い。もちろん絶対数こそ少ないが、専門店も存在するので、乗り出の前の整備にある程度の予算が組めれば、安心して乗ることのできる車両も見つけられるはずだ。
30年以上を経た今見ても古さを感じさせない 日産がバブル期に送り込んだ名車というと、GT-Rやシルビアといったクルマを真っ先に浮かべる人が多いかもしれないが、パイクカーシリーズと呼ばれる、Be-1、パオ、フィガロも忘れてはならない名車だ。そんなパイクカーシリーズの中でも、今なおユーズドカー市場に小さいながらもある一定の流通量を誇るのが第2弾として登場したパオだ。「旅行やサファリの冒険気分を味わえるクルマ」というコンセプトでデザインされたパオ。そのエンジンやシャシーといったメカニカルな部分は、初代マーチとなるK10のコンポーネントを用いているのだが、ベース車マーチとは全くことなる価値観を有した1台に仕立て上げられている。マーチはいわばベーシックなコンパクトカーであり、ジウジアーロがデザインしたというボディデザインを持ってしても後世に多くのファンを残すことは無かったが、パオはその独自の世界観を形成し、30年以上の時を経た現在でも、多くのファンが存在する。 実際に今実車を見ると、リッターカーのチープさを感じさせないのはもちろんだが、しっかりとしたデザインテーマに則って作り込まれた内外装は、今でも全く古さを感じさせない。表面的な見方をすれば、いわゆるレトロカーといっしょくたにしてしまいがちだが、30年を経ても古さを感じさせないところが、パイクカーとしてバブルの時代に誕生したパオの価値なのかもしれない。
基本的には丈夫なエンジン&足回りだが、長期ノーメンテ車両がかなり多い! 初代マーチ用に開発された 1リットル4気筒のベーシックなエンジン

アルミブロックを突き破りコンロッドが顔を出す!MA10Sエンジンは基本非常にタフなエンジンのようだが、メンテナンスに無頓着なオーナーが乗ることが多かったパオだけにメンテ不良が原因となる重大トラブルも発生する。酷い場合だと焼き付きにより2番シリンダーからコンロッドが顔を出すこともある。
オイル漏れ部分は多数ありタイベルは指定通りでOKオイル漏れ発生箇所は非常に多い。クランクの前後やカムのオイルシールの他、オイルパンの合わせ目や油圧センサーのOリングなど、完全に修理するならエンジンO/Hを考えた方がいいような場合も。ちなみにタイベルはメーカー指定で交換していればOKとのこと。
オイルフィラーキャップの劣化にも要注意オイルフィラーキャップはゴム系素材でできているが、経年劣化で硬化しオイル漏れが発生する。またEGRのパイプが接続される矢印部も、ゴムの劣化でオイル漏れが発生する。
いろいろな不具合の原因となるキャブキャブも30年という時を経て各部の部品が経年劣化したり、内部に汚れが蓄積するなどで不具合を発生していることが多い。アイドリングやCOやHCを調整するスクリューが機能しなかったりするなど、エンジン不調の原因となっている。
燃料ポンプ内のシール切れでオイルにガソリン混入燃料ポンプは機械式だが、その内部シールが切れ、エンジン内にガソリンが入ってしまうことがよくある。オイル量が増加していた場合はポンプからのガソリン混入を疑うべし。
デスビの注意点はオイル漏れと機能しないダイヤフラムデスビもトラブル発生ポイントとなる。トラブルは、シャフトのオイルシール切れが原因となるオイル漏れの他、自動進角用のダイヤフラムが機能しなくなることで、点火が固定になっていることも少なくないそうだ。エンジン不調の原因のひとつとして認識しておこう。
冷却水パイプから漏れ発生冷却水漏れも定番トラブルとなる。ラジエーターのカシめ部と共に、ブロックに組み込まれた冷却水パイプの先端が、錆びて冷却水漏れの定番部分となっている。
パワステはオイル漏れと…パワステはホースからのフルード漏れの他、キャブ本体やセンサーの不具合でポンプ作動時にアイドルアップがされず、エンストするという困ったトラブルが発生しやすい。
駆動系 MTとATの比率は1:9ぐらい 共に補修用の部品がないのが問題

身近なトラブルはドラシャのブーツ切れやシール部オイル漏れクルマのキャラクター的に新車販売時からAT比率が多かったというパオ。現在ではMTは全体の1割程度とより少なくなっている。これはMTの部品の入手が困難になっているためで、MTを希望する場合はその点覚悟が必要だ。
教えてくれたのはスピードウェルの森本さん
SPEEDWELL
所在地:大阪府羽曳野市野々上3-535
電 話: 072-952-3578
URL:http://www.speed-well.jp/スピードウェルは、大阪の羽曳野市にあるパオの専門ショップだ。代表の雑喉さんと森本さんをはじめとする整備、鈑金塗装のプロが、30年前に登場したパオを、今でも古さを感じさせず、なおかつ安心して乗ることができる車両に仕上げて販売している。納車前にキャンバストップやシート表皮などを選べるセミオーダー方式も特徴となる専門店となる。
足回り ストラット+4リンクの足回りは 前後ともに要メンテ部あり
30年が経過した限定生産車部品供給されている? 30年以上も前に登場した限定生産車両であるパオ。生産台数も少ないわけで、昨今の旧車パーツ供給事情を考えれば、部品がほとんど出ず、車両を維持するのも困難。そんな先入観を持って、パオの専門店であるスピードウェルでメンテナンスのお話を伺ったのだが、いい意味で期待を裏切られた。「パイクカーシリーズの3台の中で、Be-1などは内外装の部品供給が壊滅的ですが、パオだけはまだまだ多くの部品供給があるんです。もちろん製造廃止となっているものも多数ありますが」 驚くことに、リヤはバンパー、リヤゲート、クオーターパネルなどが未だに新品供給されているそうだ。「とはいえフロントまわりは、ボンネットなど主要な部品が欠品しているので、壊さないで乗ったほうがいいのはいうまでもないです」 それではメカ系はどうなのか?「メンテナンスにあまり気を使うことのないオーナーさんが乗られてきていることが多いので、メンテ不足が原因のトラブルが出てきています。具体的には、オイル交換がほとんどされてこなかったようなエンジンのメタルが焼き付いて、ブロックからコンロッドが飛び出すなんていう、チューニングカーみたいなトラブルも年に数回見たりします。中古車を買ってこれからパオを楽しみたいなら、一度エンジンや足回りをしっかりメンテした方がいいと思います」
走行中の足元からの異音はフロントブッシュが原因?フロントロワアームのブッシュが劣化しているクルマが多いという。前後2か所あるブッシュが劣化すると、ブレーキング時などアームの前後方向に力が加わった際にガタが発生するという。ブレーキを掛けた際、自分の足元付近から異音が聞こえるようなことがあれば、ブッシュが要交換な状態と思っていい。
トレーリングロッド曲がりリヤは4リンクを採用する。基本丈夫な足回りだが、トレーリングロッドが曲がっていることが多いという。部品はまだ供給されているようなので、曲がっていれば要交換となる。
ブレーキは前後共要メンテブレーキは前後共、長期間ノーメンテの車両が多い。フルードがシールではなくブーツで止まっていたなんてことも多いという。一度徹底的にO/Hを施しておいた方がいい。