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更新日:2018.11.23 / 掲載日:2017.11.29
クラウンが58年目のReBorn
「日本車」の名にふさわしいクラウン

【本記事は2013年1月にベストカーに掲載された記事となります。】1955年1月1日、1台の国産車が誕生した。日本の高度経済成長期を支え続け、高級車の代名詞として君臨し続けたトヨタの、いや日本の代表車、クラウンである。そのルーツは終戦直後にさかのぼる。GHQの方針により日本の製造業は解体され、車両製作はバス・トラックに限られるなか、「なんとしても国産車を」という思いを込めて開発がスタート。デザインこそ’49年型フォードの影響を強く受けているものの、バス・トラックとは違う低床型の乗用車専門シャシーが開発され、エンジン、ミッション、サスペンションにも国産部品を採用。「日本車」の名にふさわしい第一号車となった。それから58年、クラウンは常に時代の最先端を走り続け、13代にわたる歴史のなかで販売台数は累計約520万台にのぼる(ベストカー推定で稼いだ金額は15兆800億円也!?)。そんな名門中の名門であるクラウンが、いよいよ14代目にフルモデルチェンジを果たした。本項では、受け付け開始1週間でいきなり受注5000台を突破した新型クラウンの全貌を詳しくお伝えしていきたい。
ロイヤル

ロイヤル:最大の特徴はやはりグリル。縦に厚みをもったアッパーグリルとワイド感をもったロアグリルが融合しており、クローム加飾でモチーフにした王冠のフォルムを際立たせている。
フロントデザインはまさに「再生」新型クラウン最大の特徴は、言うまでもなく「王冠」をモチーフにしてデザインされた特徴的なフロントグリルにある。「販売店マニュアル」を入手してそのスタイルを最初にすっぱ抜いた本誌11/10号は異例の売れゆきを見せるなど、クルマ好きならずともそのインパクトは近年最大級レベル。ここ最近トヨタはエクステリアデザインに対して非常に強いこだわりを持つようになってきた(それが好意的に評価されてきたかどうかはともかく)。そして’11年10月から展開している「Reborn(再生/生まれ変わり)」キャンペーンにより、大幅な変化を求めている。そうした「大胆に新しいことをしたい」という上層部の考えが、この新型クラウンのフロントグリルには濃縮されていると考えるべきだろう。またこの無理やりにでも目を惹いてしまう「顔」に注目が集まりがちだが、クラウン史上有数の流麗なサイドラインを持っているところもポイント。ロイヤルは全高が(先代比)10mm下がっており、水平で低重心なショルダー軸に対して、フロントの重心を低くおさえたフォルムになっている。
アスリート

アスリート:ロイヤルと同じく王冠をモチーフとしながら、さらに過激でダイナミックなグリルを採用、また左右ライト下はラジエターとブレーキダクト位置に冷却用開口を儲けて、スポーティさを強調。
アスリートはさらに全高が10mm低く、よりスポーティさが強調されている。フロントフェンダーの盛り上がりが特に、このクラウンのスポーティさの演出にひと役買っている。また内装の質感も「さすがクラウン」と思わずうなるレベル。ゆったりとした書斎を思わせる雰囲気で、高級感と機能性を併せ持っている。センタークラスターにはカーナビ画面のすぐ下に5インチのサブモニターが付く「トヨタマルチオペレーションタッチ」を採用。エアコン、走行制御モード選択(パワー/ノーマル/エコ/スノーの4種類が選択可能)、クリアランスソナーの確認などがこの画面で見られる。ディメンションはロイヤルが全長4895×全幅1800×全高1460mm(アスリートは1450mm)で先代比だと全高が10mm低く(アスリートは20mm)、全長が25mm長くなっているが、特に「大きくなった」というイメージは感じられなかった。全高に合わせてヒップポイントも10mm下がっており、アジャスターが先代比+15mmの60mmとなることで、幅広いドライビングポジションを選べるようになった。
パワートレイン

直4、2.5L+モーターのハイブリッド。エンジンは175ps/22.5kgm。2AR-FSE型
エンジン&価格&グレード体系はさてパワートレインだが、新型クラウンはこれまで伝えてきたように3タイプのエンジンを搭載する。◆ロイヤル=V6、2.5Lガソリン仕様と、直4、2.5L+モーターのハイブリッド◆アスリート=V6、2.5Lガソリン仕様、V6、3.5Lガソリン仕様、直4、2.5L+モーターのハイブリッド中心となるのは新開発となる直4、2.5Lエンジン+モーターのハイブリッドシステム。先代のクラウンハイブリッドは3.5LのV6エンジン+モーターの組み合わせでシステム出力345psを発揮する代わりにJC08モード燃費は14.0km/Lであった。それが今回、組み合わされるエンジンを2.5Lにダウンサイズすることで、システム出力は220psまで落ちるものの燃費は23.2km/Lまで向上。これは先代をはるかに凌駕し、ライバルであるフーガハイブリッドの16.6km/Lをも大きく引き離す数値となる。出力減による走行性能の低下を心配する向きもあろうが、撮影のために構内を動かした範囲ではまったくストレスは感じず、むしろ先代より軽やかではないかと感じるほどだった。それもそのはずで、先代クラウンハイブリッドが車重1830kgだったのに対して新型は1640kg(ロイヤル/アスリートともに同重量)。実に190kgの軽量化を果たしており、キビキビとした走りを持っている。

アスリートシリーズのみ設定のあるV6、3.5Lの2GR-FSE型。315ps/38.4kgm
エンジンラインアップはこのハイブリッドとV6、2.5Lガソリン仕様、それにアスリートにはV6、3.5Lガソリン仕様が用意される。この3.5L仕様にはトヨタブランド初となるスーパーインテリジェント8速オートマチックを採用。さらにクラウンでは初となるパドルシフトも用意され、爽快な加速フィールを自在に操る楽しさを持っている。さて続いて価格とグレード体系だが、ポイントは、◆全般的に装備が簡略化され、値下げされている◆ロイヤルにもハイブリッド仕様を設定◆先代にあった3Lエンジン仕様は廃止◆ロイヤル/アスリートともに装備に応じて3グレードという内容。注目はやはりハイブリッドで、アスリートのベースモデル同士を比較すると先代比では71万円の値下げとなる410万円。先代はV6、3.5L+モーターだったが新型は直4、2.5L+モーター。システム出力が125psほどダウンしており、装備も後席サイドエアバッグ、インテリジェントAFCが省かれるなど簡素化が見られるが、この大幅プライスダウンはやはりかなりの商品力向上と言っていいだろう。

V6、2.5Lの量販型エンジン、4GR-FSE。203ps/24.8kgmで必要充分な実力
ガソリン仕様もハイブリッドと同じく装備の整理が進んでいるが、自動車ジャーナリスト・渡辺陽一郎氏によると、「お買い得はガソリン仕様、ハイブリッド仕様ともに中間のアスリートSとロイヤルサルーン。カーナビも付いて価格は妥当」との見解。走行性能とライバルたちの実力は「システム出力は(125ps減と)大幅低下のように見えるが、エンジンとモーターの合計トルクは65.5kgmから53.0kgmとそれほど低下していない。大幅軽量化もあって走りはかなり期待できる」と、新型への試乗前にスペックを見ただけの段階だが分析してくれたのは同じくジャーナリストの竹平素信氏。なんといっても190kgにおよぶ軽量化がポイントとなっており、「大型&重量化が進んできた高級サルーンのなかで、この軽量化+ハイブリッドシステムのダウンサイズは、今後の日本高級車市場に一石を投じる」と語ってくれた。ライバルとなるのは、◆フーガハイブリッド/燃費=16.6km/L、システム出力=374ps(未公表なので推測)、価格=582万円(標準)◆BMWアクティブハイブリッド5/燃費=13.6km/L、システム出力=340ps、価格=850万円◆アウディA6ハイブリッド/燃費=13.8km/L、システム出力=245ps、価格=690万円どれもクラウンと比べると車両価格が高額であり、モーターを加速方向に使っているため省燃費性能は大幅にクラウンが勝っている。

大変評判の高いBMW。5シリーズHVのライバルはレクサスGSとこの新型クラウン
実際の走行性能比較は試乗後のレポートに譲るが、世界トップレベルのハイブリッドサルーンと互角以上に戦えるスペックだということはよくわかる。新型クラウンの月販目標台数はガソリン仕様、ハイブリッド仕様合わせて4000台。かなり控えめな数字と感じる。歴代クラウンの実績、新型の価格設定からもトヨタはもっと自信を持っていいのではないか。