キッパリ断言　ハンドリングは日本一！　新型スイフトの進化度160％！！

【本記事は2010年10月にベストカーに掲載された記事となります。】発表会でクルマの仕上がり具合を見て「こいつぁ頑張りましたね！」とウナッた新型スイフトにさっそく試乗。結論から書くと走りの質感は「ニッポンイチ！」でございます。いや、ライバルの対象を世界レベルに広げたってトップレベルに届いたと思う。VWポロと比べたとしても、勝ったり負けたりだろう。驚くべきは乗り心地の質感とハンドリングのバランスをヨーロッパ車のように高いレベルで実現している点にある。

乗り心地のハナシは華がないのでハンドリングから。3人乗りして「日本のオールージュ」（ベルギーGPが行なわれるスパの名物コーナー）を走った、と思ってほしい。実際、そういうコーナーがあります。高速道路の巡航速度を超えるスピードで橋を越え左にハンドル切ると、もはやアウト側のサスペンションは沈み切った状態。バンプラバー（バンプストッパー）で車体を支えてるのだった。その状態で大きな隆起に飛び込むんだからタマらない！ デキの悪いクルマだと、車体が明確に「ぐしゃっ！」とタワみ、横っ飛びしてしまう。このコーナーを全開で走ったら、正しくオールージュの気分を味わえるという寸法。当然ながら最初は安全を見越して通過しなければならない。スイフトのハンドル握り2回試してみたら、まったく平気。そこで3人乗り状態で試してみることにした次第。するとどうよ！ 見事に踏ん張ってくれる！ VWポロと比較してもまったく負けていない。日本のコンパクトカーじゃ圧倒的な弱アンダーステアで高いコーナリング性能を確保している。そのうえでブレーキングするとキッチリ前輪に荷重乗り（乗りすぎるとアンダー出る）、さらなる回頭性を引き出せるのだった。前後のグリップバランスもピッタリ！ 実用車ながらスポーツモデルのようなハンドリングを実現できているワケ。失礼ながらスズキのクルマとは思えぬ！

乗り心地ときたらいちだんとすばらしいです。荒れた路面を走ってもサスペンションがしっかり動き、車体に不快な振動を伝えない。後で書くけれど、強いていえば16インチ仕様のタウンスピードで粗さを感じる程度。スイフトに試乗してからヴィッツやマーチ、パッソのハンドルを握ったら「なんだこりゃ！」と驚愕することだろう。勝負できるの、やや格上となるフィットくらいか。なんでこんな足回りが実現できたのか？ 聞いてみたら、今までとまったく違うアプローチをしてました。基本的な開発をヨーロッパで行なったそうな。ショックアブソーバーのメーカーはボルボなども使っているテネコ。先代のスイフトでテネコ製ショックアブソーバーを使ってみたところ、日本製との違いを痛感したという。同じ減衰特性を指定しても、乗り心地がまったく違ってしまう。そこで新型の開発に当たり、最初からテネコと組んだのだ。「乗り心地を追求する姿勢は日本のメーカーとまったく違いますね。テストドライバーがテネコのエンジニアに状況を説明するとすぐ理解し、思ったとおりの味つけをしてくれます」。知らなかったのだけれど、テネコって日立（旧トキコ）と提携している。テネコと開発した特製のショックアブソーバーを日立に依頼し、完成した製品を新型スイフトに組みこんだワケ。

ここまでサスペンションを煮詰めると、タイヤのキャラクターの差もハッキリ出てくるから面白い。今回スイフトはタイヤに妥協しなかった。16インチがBSトランザ。15インチにヨコハマdbを履いているのだけれど、どちらもすばらしい仕上がりだったりして！ まずBSトランザ。ECOタイヤなのに（15インチと10・15モード燃費が同じ）、驚くほどスポーティ。というかスポーツタイヤだといわれても信じる。ハンドル切るとレスポンスよく横方向のGが立ち上がり、しかも絶対的なグリップレベルは充分高い。文頭の「日本のオールージュ」を3人乗りで通過した時は16インチ。ワインディングロードを走っているとエンジンパワーが物足りなくなってしまうほど。前述のとおり低い速度域で若干の粗さを感じるも（ライバルと比べれば圧倒的にいい）、50km／h以上の速度域になれば快適至極。それ以上に感心したの、15インチである。静かさと上質な乗り心地を売りにするヨコハマdbだけあり、走り出した時から滑らか。一般的にECOタイヤというと転がり抵抗減らすため構造もゴムも硬くする傾向。よって乗り心地悪化。騒音レベルまで高くなってしまう。されどスイフトの15インチは100点を献上してもよい。日本のタイヤ技術って素晴らしいのね、と改めて認識させられた。マーチも日本製のタイヤにしたら大幅に質感上がると思う。

エンジン＋CVTはどうか？車重990kgに対し、1.2Lの91馬力を搭載。余裕こそないが、これで充分かと。今回の試乗舞台となったアップダウンの多いワインディングロードだとパワー不足を感じることもあるけれど、こらもう120馬力あっても同じ。サスペンションのいいクルマに乗ると、古今東西必ず「パワーが欲しい！」になってしまう。むしろ1.2Lとしちゃ相当頑張っている。加えて『K12B』なる新世代4気筒エンジン振動の少なさは、デビュー以来、高く評価されている。2速式CVTの仕上がりもアルト、ワゴンRを経て大幅に向上し、切り替え時の音などまったく気にならない。ワイドな変速レンジを持つ特性を上手に生かし、加速時はパワフルに。巡航に入れば低い回転域使って燃費稼ぐ。23.0km／Lという10・15モード燃費は立派である。ワゴンRと同じCVTだからして、やがてアイドルストップも追加すると考えていい。

新型スイフトをどう評価したらいいだろうか？スズキの販売部門に課せられた最大のテーマは「スイフトのよさをキチンと訴求できるか？」だ。スズキというメーカーが連綿と「いい製品をそれなりの価格で売る」というブランド戦略を続けていたなら、新しいスイフトも高い評価を得られる。されどスズキというメーカーのブランドイメージはコストパフォーマンスの高さ。そこに突如「正当派のいいクルマ」を出してきた。価格は124万4250円。マーチのアイドルストップ付きより高い。このクラスのベストセラーとなっているフィットだって120万円を切るグレードが売れ筋。比べるとスイフトは割高に感じてしまう。なるほど装備内容を見れば納得できます。ベーシックグレードにまでオートエアコンやエンジンのプッシュスタートを採用。電動格納式ミラーや、6スピーカーまで付く。ガラスだって前面UVカットなど当たり前。リアとバックドアについちゃプライバシーガラスになっている。132万円するフィットのスマートセレクション＋オートエアコンといったイメージ。スイフトはベーシックグレードでも豪華装備なのだ。個人的にはライバルと同じ装備内容でいいから、110万円台のスターティングプライスにすればいちだんと多くのユーザーにアピールできると思いました。

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