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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.11.30
新型911日本デビュー! ポルシェは今も永遠の憧れなのか?
新型911はどんな進化を遂げたのか?

新型911のスタイルは普通の人から見るとどこが変わったのかよくわからないかもしれない
【本記事は2012年4月にベストカーに掲載された記事となります。】昨年9月に本国で発表され、日本でも昨年11月から予約受注が開始された、新型911。その市販車第一便が日本に上陸したことを記念し、都内でレセプションパーティが開催された。3月10日、11日、全国のポルシェ正規販売店でのデビューフェアでお披露目となる。はたして、新型911はどんな進化を遂げたのか? ひと足早く試乗した自動車評論家、島下泰久氏のインプレッションをお届けしよう。自身も996GT3、993カレラRSに乗り継ぐ生粋のポルシェ党の意見はいかに?
「デカい!」と思ってしまう。

「少し痩せてスマートになった印象。インパネも激変。欲しくなった」と元997乗りの小野
新型ポルシェ911の実物を見たらきっと多くの人が「デカい!」と思うんじゃないだろうか。実はその時点で皆、ポルシェの術中にハマッている。車体寸法を見ると、カレラで全長4491×全幅1808×全高1303mmと、全長が約5cm延びただけで全幅は変わらず、全高も低い。つまり、フロントトレッドの拡大とスタイリングで、そう見えているだけなのだ。チーフデザイナーのミハエル・マウアーの仕事ぶりはさすがと言うほかない。このボディは全体の44%がアルミ製。車重は先代比、およそ40kg減を達成している。
心憎いインテリア

「ライジングコンソール」と表現されるダッシュボード中央部から手前へとなだらかな下降線を描くセンターコンソールが特徴
インテリアも心憎い。一見パナメーラ風のセンターコンソールも、実際にドライバーズシートに座ると、絶妙な囲まれ感から想起するのは、あのカレラGTだったりする。決して軟弱になどなっていないのだ。
長年培ってきた“911らしさ”を濃縮還元した新型911カレラ

カレラは350psの3.4L、カレラSは400psの3.8L
そしてなんといっても感動させられるのが走りっぷりだ。まず驚くのが乗り心地のよさ。911特有のゴーゴーというロードノイズやフロントのバタバタした上下動が遂に解消され、実に上質、そして快適なのだ。フットワークも期待を裏切らない。電動パワステの手応えはカンペキ。ホイールベースが延びたぶん、小さいコーナーでのクルリと回り込む感覚は薄まったものの、中速以上のコーナーではロールを感じさせずにノーズがグイグイと切れ込んでいく。それを支えるのはRRらしからぬリアの絶大な安定感。しかしながら立ち上がりでアクセルを踏み込めば、ズバ抜けたトラクションで、しっかりRRの旨味を味わえるのだ。直噴フラット6も熟成ぶりは凄まじい。カレラSの3.8Lフラット6は従来比15ps増の最高出力400psを達成。そのうえで低速域の扱いやすさも改善されて、下から上まで一気に吹け上がる最高のレスポンスを獲得した。軽くなったボディと相まって、胸のすく加速を味わえるのである。いっぽうでアイドリングストップ、そしてPDKにはアクセルオフで惰性走行に入るコースティング機能が搭載されて燃費に配慮。もちろんMTの用意もある。こちらは驚きの世界初7速仕様だ。見た目も走りも、新型911カレラは、長年培ってきた“911らしさ”を濃縮還元した感じ。しかも、すべてのレベルが一段も二段も上にある。今までで一番、跳躍幅の大きな進化だというのが実感である。
新型911は憧れの存在になりえるか?

先代911(997後期型):48年におよぶ911の歴史のなかでこれほど白紙からの開発が許されたことはなかったという。ホイールベースが100mm、全長が56mm延長されたが全幅は不変の1808mm。新型が大きく見えるのはフロントトレッドがカレラで46mm、カレラSで52mm拡幅され、より外側にレイアウトされたヘッドライトのため
新型911は憧れの存在になりえるか?さて、こんな新型911は、今この時代にも憧れの存在として見られるだろうか?従来のファンからは、最初は拒否反応もあるだろう。けれど、それは911にとっては毎度のこと。それでも996の時のように旧型がもてはやされるようなことにはならないだろう。今も空冷を愛している人まで魅了できるかはともかく、結局は皆、深く納得するに違いない。新しいファンへのアピール度は今まで以上に高そうだ。見た目も中身もブランドでありアイコンでもある911以外の何物でもないのに、紛れもないスーパースポーツのオーラを身につけている。実物を前にすると、そう実感させられるのである。年々ライバルの数も増えている911だが、新型は大幅な進化で、再びそれらを突き放してみせた。よくぞこれほどの進化を! ということで憧れ度は満点の5点。そりゃそうだ。なんだかんだいっても、こんなフルモデルチェンジはポルシェ以外には絶対できっこないのだから。
GT-R派、フェラーリ派からみた ポルシェ911の憧れ度

新型911カレラS(991型):リア回りはLEDを用いた薄型でよりシャープな形状に変更。水平ラインが大きく強調
GT-R派、フェラーリ派からみた ポルシェ911の憧れ度ここでポルシェが永遠のライバル? といえばフェラーリとGT-R。そこで開発テストドライバーの鈴木利男氏と清水草一氏に911評を聞いてみた。■鈴木利男氏クルマが好きな子供なら、ポルシェやフェラーリに憧れるでしょ。でもエンジンの音が室内に入ってきて意外にうるさい。乗り心地も悪いし、ガサツな作りだなと思いますね。エンジンパワーとトルクは申し分ない。高速で3速、4速にシフトしてアクセルを踏み込むと、リアが沈み込んで加速する。RRの特性を感じます。ただし、直噴になったポルシェは好みではなくなったな。新型911はまだ乗っていないけど、ホイールベースが延びてどう影響するかな。ポルシェの憧れ度は☆4つというところですね。GT-Rの憧れ度? それは言わせないでよ。■清水草一新型911……。短くなったフロントオーバーハングがカッコいいね。テールランプもシャープで、エリートっぽさがアップしてる。写真を見れば前よりちょっとだけステキだし、確実にいいクルマなんだろう。で、やっぱりみんな期待してるんだろうか? 憧れてるんだろうか? 先代とか先々代とかでも充分じゃなかろうか。ポルシェファンではない私は、ついそう思ってしまう。実はこういうのは、フェラーリもまったく同じで、新型フェラーリに対して期待とか憧れとか抱くのは、一部のマニアだけになっている。だって、旧モデルでも充分すぎるほどいいクルマだし、速すぎるほど速いし、フェラーリはフェラーリなんだから! よりよく、より速いことの新たな意義を見つけねば……。私はそのことに苦悩しております。