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更新日:2019.01.27 / 掲載日:2017.11.30
レクサスGS降臨 世界基準になりえるか?
GSが約6年半ぶりにフルモデルチェンジ
【本記事は2012年3月にベストカーに掲載された記事となります。】1月26日、レクサスのミドルセダン、GSが約6年半ぶりにフルモデルチェンジ、満を持してデビューを飾った。先代モデルはお世辞にも成功とはいえず、宿敵ともいえるベンツEクラス、BMW5シリーズに対して完敗。新型GSの開発にあたり、金森善彦レクサス本部製品企画チーフエンジニアは「欧州ライバル車と戦う土俵に上がるためにデザインとパッケージングをすべて見直し、マイナスイメージを一切払拭すること。それを一番に考えました」とかなりの期待を抱かせるコメント。はたして新型GSの進化ぶり、ライバル車に対してのアドバンテージはどこにあるのか子細にわたってチェックしていこう。その前にGSの事前受注状況(1月26日の発売前)だが、約3500台と月販目標600台が控えめとはいえ、約5.8倍。
デザインとパッケージング
先代のレクサスGSでウィークポイントだったと開発責任者がいう後席の居住性も改善され、トランク容量は530Lとゴルフバッグを横に4個積めるようになった(GS450hも同様)。
■デザインとパッケージングデザインは先代とは打って変わり、強い個性を主張する。スピンドル(糸巻き軸)グリルを採用した新型GSは先代よりも押し出し感が強く、ベンツEクラスと比べても存在感は負けていない。万人受けするトヨタ車とは違い攻めに転じたという。ボディサイズは全長4850×全幅1840×全高1455mmと、先代に比べ、全長は変わらないが全高が+30mm、全幅は機械式駐車場に入るサイズにこだわり、+20mmの1840mmに抑えられている。ちなみに全幅はベンツEクラスが1855mm、BMW5シリーズが1860mmだ。ボディサイズの拡大を最小限に留めつつ、室内の居住スペースをギリギリまで拡大し、クルマを操る楽しさを損なわない究極のスマートパッケージングを採り入れている。具体的には身長145cm~2mまでの幅広い体格の人でも適切なドライビングポジションがとれる疲れにくいフロントシートを採用したほか、先代のウィークポイントだった後席の居住性は、ヘッドクリアランスが先代に比べ25mm、ショルダールームが15mm拡大しており、ベンツEクラスやBMW5シリーズと肩を並べる室内空間を手に入れた。
先代のレクサスGSでウィークポイントだったと開発責任者がいう後席の居住性も改善され、トランク容量は530Lとゴルフバッグを横に4個積めるようになった(GS450hも同様)。
トランク容量はガソリン車が430Lから530Lに増え、450hはバッテリー容量を2段積みとすることで300Lから465Lへ大幅に拡大。ゴルフバックはBMW5シリーズやベンツEクラスの3個に対し4個(HVも)積みとなった。パッケージングは石川真禧照、日下部保雄、鈴木直也の3人ともに旧型を10点とすると、「大幅に変わっていないが努力の跡は認める」と3氏の意見は概ね同じで11~12.5点の評価。
インテリアの質感
先代に比べコクピットのデザインは少しだが個性が感じられるようになった。ソフトパッドやアルミ削り出しのオーディオダイヤル、パネルの素材など、これまでにないこだわりを感じるインテリアだ
■インテリアの質感世界最大サイズと謳う12.3インチ高精度ディスプレイを中央にレクサス初の自発光指針のLEDアナログ時計、アルミ削り出しのオーディオダイヤル、インパネ上部のソフトパッド、革張りのドアトリムを採用。インパネのパネル類はゼニスブラックやウォールナット、本アルミ、縞杢(しまもく)、さらにGS450hには世界初採用となる高知県産の竹を使ったバンブーなど6種類用意。シート素材もファブリックのほか3種類の本革、6色のシートカラーなど豊富に選べるのが特徴。インテリアの質感について、石川氏は「かなり頑張った。欧州車レベルに近づいた」と評価するいっぽう、日下部氏は「劇的に変わっていない」、鈴木氏は「冒険を諦めた」と手厳しい。
動力性能&ハンドリング
各部のアルミ化や高剛性化が図られた新開発のフロント/ダブルウィッシュボーン、リア/マルチリンク。回答性のよさに貢献する
■動力性能&ハンドリング「感性に響く走り」を目指し、レクサス専用の新開発プラットフォームを採用するとともにトレッドを前40mm、後50mm拡大。同時に足回りも運転状況に応じて減衰力を4輪独立で最適制御するAVS制御付きの新開発サスペンションを採用。特にボディ剛性強化が重要視されており、リアのボディ剛性はBMW5シリーズをベンチマークにしたという。レーンチェンジなどでの高いスタビリティと正確なステアリング応答性、低い姿勢で路面に張り付くシャープなコーナリングが味わえるという。欧州車の走りがいいのは基本骨格がしっかりしているからといわれるが、GSは新プラットフォームを手に入れたことでようやく肩を並べることができたのだ。ベンツは重厚感、BMW5シリーズはスポーティという“味”があるが、レクサスGSの味はステアリングやクルマそのものの“切れのよさ”だという。GSのハンドリングは3人ともに13~14点の評価。俊敏さや回答性など明らかに先代よりもスポーツ指向に振られていて、よくなったと高評価。動力性能には10~12点と手厳しい。
エンジン
今回のGSから新たに加わったISにも採用されている4GR-FSE型2.5L V6エンジン。10・15モード燃費は11.6km/L
■エンジン搭載されるエンジンはこれまで3.5L V6、4.6L V8、3.5L V6+ハイブリッドの展開だったが、今回新たに4GRFSE型2.5L V6が加わった。競合車がダウンサイジングの4気筒を採用するなか、あえて静粛性と音質にこだわり、4GR-FSEを採用したという。3.5L V6ガソリンエンジンの2GR-FSEにも直噴のD-4Sを組み合わせたほか、吸排気連続可変バルブタイミングのDual VVT-iなどの採用により、2000~6400rpmという幅広い回転域でトルクの90%以上を発生し、低回転から高回転まで伸びのある加速性能を実現してるという。 GS450hにはこれまでと同じモーター、1KMを受け継ぐが、エンジンは新開発のアトキンソンサイクルの3.5L V6。ハイブリッド専用のトランスミッションの改良やモーターおよびジェネレーターの摩擦損失低減、エネルギー回生制御の性能向上により、10・15モード燃費は先代の14.2km/Lから20.5km/Lと大幅に向上!
ドライバーを高揚させる演出
GS450h:ドライブモードセレクトをスポーツS、スポーツS+モードを選択時にはハイブリッドシステムのスポーツ制御によりV8エンジン並みのアグレッシブな加速が可能。
今回のGSはスポーツセダンとして、走りの装備、ドライバーを高揚させる演出も用意されている。走行状況に応じて、4つの走行モードを選択できるドライブモードセレクトを全車標準装備としたほか、走り出しではサウンドマフラーによりV6らしい重厚感のある音質、中高速域では軽快に伸びる加速サウンドを響かせるサウンドジェネレーターを吸気系に装着。さらに走りにこだわるユーザー向けには、F SPORTを全車にラインアップ。専用フロントエアロバンパーやリアスポイラー、専用スポーツサスペンション、19インチタイヤ、大径18インチフロントブレーキローターなど“走りの切れ味”を高めたうえで、ギア比の変わるステアリングVGRSと後輪の切れ角を最適制御する新開発のDRSなどを統合したLDF(レクサス・ダイナミック・ハンドリングシステム)を装備するなど走りを極めたモデルとなっている。エンジンの評価は石川氏が燃費向上も加味してGS450hには14点を付けたが、日下部氏は「洗練されたが先代からあまり変わっていない」、「ドライブモードにより走りの楽しさが楽しめることは評価するがもっと根本から官能的に振るべき」と辛辣な意見の鈴木直也氏。
劇的な進化には。
各部のアルミ化や高剛性化が図られた新開発のフロント/ダブルウィッシュボーン、リア/マルチリンク。回答性のよさに貢献する
乗り心地に関しても俊敏さとの両立という面で3氏ともに12点という評価だったが、「硬めで欧州車のようなしなやかさが足りない」と石川氏。鈴木氏も「ハンドリング性能を高めるあまり、乗り心地は後回し」。総合評価をみてもパッケージングや新プラットフォームによるハンドリングのよさは高く評評価されているものの、その進化度は最高でも13点と劇的な進化には至っていないようだ。