中古車購入
更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.12.02
プジョーの新スポーツRCZ魅力的な個性と走り……
まだまだ日本からこういうクルマは登場しそうにない

RCZはトータルのフォルムはもちろん、ダブルバブルルーフからリアガラスの造形も美しい
【本記事は2010年10月にベストカーに掲載された記事となります。】新しいプジョーRCZに乗ってみて、やっぱりヨーロッパ人のセンスってのは凄いなぁ、と感心した。だって、これが日本のメーカーの国内向け商品企画だったらどうなると思います?まず、クーペというだけでボツ確率9割。そこを乗り越えても、CR-Zみたいな新しい付加価値をつけるか、エボ/インプみたいなカリカリの高性能を与えないと生産化は望み薄。さらに、量産ゴーサインが出ても営業サイドから「200万を切るように」と言われてデザイン/クォリティともに妥協を強いられる……。

インテリアはスポーティでスタイリッシュ。フランス車ならではの美しい仕上げとなっている。シートの座り心地もすばらしい
プジョーRCZには、そういう迷いがまったくない。何よりまず、デザインのブッ飛びぶりに脱帽だ。フロントマスクこそ見慣れたプジョー顔だけど、アルミの光沢が輝くアーチ状のサイドウィンドウラインや、ルーフからリアガラスに続くダブルバブルの曲面のうねり……。まさに、ショー用のコンセプトカーをそのまま路上に持ち出したようなインパクトがある。
走っても数字に表われない“ドライビングテイスト”にプジョーの自信がみなぎっている

6MTは200ps仕様のエンジンだが、ATは156ps仕様となり、パフォーマンスもサウンドも異なるのだ
1.6L直噴ターボは6MT仕様で200ps、AT仕様で156psという設定だが、パフォーマンス面ではそれほどビックリするようなレベルじゃない。ところが、ドライバビリティは小排気量エンジン特有の軽やかさと、ターボならではのトルク感が両立していてじつに爽快。6MT仕様は鋭いピックアップと気持ちのいいトップエンドの伸び、AT仕様はリニアで力強いトルク感と、キャラクターもきちんと作りわけられているのだ。足回りもしかり。308でも「平凡なストラット/トーションビームでなんでこんな味が出せるんだ?」と感心したが、235/40R19なんていう超ワイドタイヤを履くRCZでも基本テイストは共通。もちろん、308よりは数段固めだが、しなやかさは決して失われておらず、高いロール剛性と圧倒的なコーナリングパワーを堪能することができる。

カッコいいコンセプトカーは作れても、それをそのまま量産化する決断力があるか……。技術的にはオーソドックスでも、それを走りの“質”として表現できる創造力があるか……。そして、そういったプレミアム性を理解してくれるマーケットが存在するか……。日本からはまだまだこういうクルマは登場しそうにない。