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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.12.02
販売好調でやっぱり気になるG’sノア/ヴォクシー
日本を代表するファミリーカー ノア/ヴォクシー

ハンドリングがシャキッとした! ノーマルよりも元気に走りたい、という人には足回りを締め上げたライダーもラインアップ
【本記事は2010年9月にベストカーに掲載された記事となります。】ノア/ヴォクシーはいまや現代の日本を代表するファミリーカー。それだけに、多くのユーザーの好みを最大公約数的に満足させるクルマ作りが求められる。クルマ好きはすぐ「走りが……」とか「パワーが……」とか注文をつけたがるが、ミニバンユーザーにとって大事なのはむしろ使い勝手だ。
ジレンマの壁を乗り越えようとするトライを感じる

走りは断然しなやか。特に段差を乗り越える時のサスの動きが絶品! ぜひ一度体感してほしい!
ただし、そういうクルマ作りに飽き足らない人がいることは、トヨタだってもちろん先刻承知。豊田章男さんが社長となってから、トヨタは「若者のクルマ離れ」に危機感を募らせていて、クルマの新しい楽しさを提案すべくさまざまな手を打とうとしている。ノア/ヴォクシーに登場したG’sバージョンは、その第一弾といっていいプロダクツだ。1月のオートサロンで話題を呼んだG’sシリーズは、いわゆるメーカー純正系チューンドカーだが、その発想自体はさして珍しいものではない。古くはアバルトやアルピーヌ、現代ではAMGやBMW Mシリーズなど、量産車をベースにスポーツバージョンを独立させるのは、欧州車では伝統的な手法。最近ではブランド化のツールとして“昔の看板”を倉庫から引っ張り出してくるメーカーもあるほどだ。だが、メーカー純正でチューンドカーを仕立てるのは、どこまでやるかが難しい。量産車からの変更箇所が増えれば、それは当然コストに反映して販売価格が高くなるし、逆に外観をチョロっといじった程度では、量産車との差別化が不充分。ベンツやBMWなら、スポーツプレミアムとして高コスト増を吸収できるが、国産の場合そう簡単ではない。このあたりが、日本車でなかなかメーカー純正系チューンドカーブランドが確立しないひとつの原因となっている。G’sシリーズも、当然そのジレンマに直面するわけだが、実車を見て乗ってみると、その壁を乗り越えようとするさまざまなトライが感じられる。

シフトノブやステアリングは赤いステッチが付く。エンジンスイッチも専用の赤いボタン
まず最初にハッキリしているのは、G’sが高価なスポーツプレミアム路線を狙っていない、ということだ。G’sの市販第一弾にノア/ヴォクシーが選ばれたということは、ベース車両が売れているクルマがもっとも量販が期待できるという判断。高価な少量生産車ではなく、なるべく大きく育てたいというメッセージと受けとっていい。価格的にも、標準でノーマルプラス31万5000円、バージョンエッジがさらにもう31万5000円高という設定。チューンドカーとしてはむしろ「割安」だ。そのいっぽうで、「安直に仕立てたなんちゃってチューンじゃないぞ!」というメッセージもちゃんと伝わってくる。
明らかに違う、走りのフィーリング

今回試乗したのは2列目がキャプテンシートの7人乗り仕様。快適だったぜ
ノーマルからの変更内容は、外観では専用フロント&リアバンパー、グリル、サイドストライプなど、この種のメーカー純正コンプリートカーとしては常識的だが、機能部品として、18インチアルミホイール&215/45R18タイヤ、ブレーキパッド、30mmローダウンサスキット、マフラーを標準で装備。さらにドア開口部や床下のスポット溶接増し打ちなど、えらくマニアックな改良まで標準仕様で施されている。さらに、バージョンエッジになると、前後サスに補強ブレースを入れたうえ、ヤマハのパフォーマンスダンパーやホイールスパッツなどを装備。より走りにこだわった足まわりセッティングが施されている。ここまでやると、走りのフィールがあきらかに変わる。標準ノア/ヴォオクシーの足は、乗り心地/操安性/スタビリティを平均点でまとめたという感じで、あまり特徴がない。そのわりに物足りないのは、乗り心地がどの速度域でもイマイチなこと。不当に固くはないのだけれど、常に微小な揺らぎがおさまらない感覚で、いわゆるしっとり感とか落ち着きに欠けるのだ。これに対しG’sは、路面の段差越えなどが“タンッ!”と一発で減衰するキレのいい乗り味に変わる。固いことは固いのだが、ヘンなブルブルやフロアの振動が消えて、体感的にはむしろしなやかな印象なのだ。

もちろん、ハードなブレーキングや大きな横Gをかけるようなシチュエーションでは、バネ上の揺れが圧倒的に少なくなるから、ドライバーの安心感は絶大。調子にのって攻め込んでも、操舵に対する正確な追従性はなかなか衰えず、横Gをうけながらの路面ギャップ越えなんかでも、ミニバンとは思えないしたたかな安定ぶりを見せる。「ミニバンでもここまでできるんだ!」そんな新鮮な驚きを感じさせてくれたのが、このG’sノア/ヴォクシーの最大の特徴だった。