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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.12.02
ジャストサイズ! グレートラン!! すべてにマイチェンレベルアップ!! ノア/ヴォクシー
花より団子。細かい使い勝手を向上させる地道な改良

【本記事は2010年7月にベストカーに掲載された記事となります。】ノア/ヴォクシーは、なぜか販売ランキング上は別車種としてカウントされているが、合計するとコンスタントに月販1万台以上を売るベストセラー。昔カローラ、今ノア/ヴォクという感じで、このクルマが現代の日本を代表するファミリーカーとなっている。だからというべきか、ノア/ヴォクシーのマイナーチェンジは花より団子。細かい使い勝手を向上させる地道な改良がメインとなっている。
もちろん、フロントマスクやリアコンビを変更して、それなりに外観でも目新しさを出してはいるけど、それは“お約束”のようなもの。むしろ、インテリアやパワートレーンなどの実質的な改良こそが注目に値する。例えば、セカンドシートのアレンジを変更して、シートレイアウトや折り畳み時の利便性を向上させている点とか、セカンド、サードシートの中央席に3点式ベルトやヘッドレストを追加したことなど……。現行モデルはフルチェンジ時にそれこそ痒いところに手が届くような細かい改善が施されているのだが、ユーザーの声を聞いたり、安全装備の水準を引き上げたり、改良すべき項目をつぎつぎに見つけて手を打ってきた。
パワートレーン系の技術者が全力投球したテーマ
とりわけ、ベルトやヘッドレストなどの安全装備は欧州水準に比べて遅れをとっているといわれ続けていたにもかかわらず、コストやら何やらモロモロの制約で積み残していた部分。つい「フルチェンジの時にやっとけよ」といいそうになるけど、そこを粛々と改良してきたことは素直に歓迎できる。パワートレーンに関しては、バルブマチック3ZE-FAEを全車に拡大、CVTもすべて7速シーケンシャルモード付きとなったことがニュースだ。このあたりは、言うまでもなくエコカー減税の影響。ファミリーカーのユーザーというのは、こういうことにはものすごくシビアだから、今回のマイチェンでパワートレーン系の技術者が全力投球したのがこのテーマ。その結果、2WDで14.4km/L、4WDで13.8km/Lの燃費を達成。めでたく全モデルが75%減税対象車となった。
メリハリある加速で、ストレスなく軽快な走り

従来は最高グレードのみに設定されていたバルブマチックエンジンと7速シーケンシャルモードが付いたCVTを全グレードに拡大。スポーティな走りが味わえる
このバルブマチックとCVTの組み合わせ、ドライバビリティはひと昔前のCVTとはちょっと違ってて、なるべく早くシフトアップして低中速トルクの厚い部分をしぶとくキープさせるのが特徴的だ。ECUのセッティングは、ドライバーを問わず平均的に優れた実用燃費が出るように工夫されており、10・15モード燃費と実燃費の差が比較的少ない。特に飛ばさないかぎり、ほとんど3000rpm以下をキープ。低い回転でスロットル開け気味にして、ポンピングロスを少なくしてエンジン本来の一番熱効率のいいゾーンをキープするように努める。こういう制御を可能とするには、素の低中速トルク特性がよくないとダメなのだが、3ZE-FAEはソコに一番開発のエネルギーを注力したエンジン。きわめて優秀なドライバビリティを実現している。ストップ&ゴーの多い市街地走行や、制限速度プラスくらいまでの高速道路での追い越し加速などは、1.6tという車重を考えると意外に優秀なクルマ。小さなアクセル開度でも、ちゃんとメリハリある加速がコントロールできて、ストレスなく軽快な走りを楽しめる。
燃費志向の運転をするのが似合ってるエンジン

インパネ回りにも若干の手が加えられた。下をカットしたステアリングが特徴的。シーケンシャルモードによるマニュアル感覚のシフト操作をより楽しめるパドルシフトがトップグレードに設定されている
そのかわりこのエンジン、ガンガン踏んでブン回しても面白いというタイプではない。シフトダウンしてリミットまで引っ張るには、かなり明確にアクセルを踏み込む必要があるんだけど、エイッとばかりアクセルを踏んでリミットまで引っ張ってやると、CVTゆえにエンジンは5000rpm弱を一定にキープ。ところが、このあたりがエンジンノイズ的には好ましくないゾーンで、普通の有段ATより騒音が耳につく。絶対的なパフォーマンスは158psというスペックなりで、その気になったら意外に俊足を発揮するのだが、あんまり「その気にならない」というのが正直なところ。やっぱりこのエンジンは燃費志向の運転をするのが似合ってる。

足回りは今回のマイチェンでは変更なしのようだが、乗り心地、操安性、スタビリティを平均点でまとめたという感じで、率直にいって乗り味は可もなく不可もなし。でも一般的ミニバンにはそれでいいかもね。個人的に物足りないのは、乗り心地がどの速度域でもイマイチなこと。べつに不当に固くはないのだけれど、常に微小な揺らぎが収まらない感覚で、いわゆるしっとり感とか落ち着きに欠けるのだ。まぁ、ノア/ヴォクシーは燃費と使い勝手に優れていて、誰にでも安心してお薦めできるファミリーミニバンであることは間違いないんだけど、それゆえに走りの最大公約数的な部分が物足りないかなぁ。