中古車購入
更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.12.05
NewCar Check!! シビックタイプRどう評価する!?
史上最強の称号はダテじゃない

エンジンはK20Aと呼ばれる直4、2L。最高出力225ps/8000rpm、最大トルク21.9kgm/6100rpmを発揮する
【本記事は2007年5月にベストカーに掲載された記事となります。】今回、鈴鹿サーキットで試乗会を行なうというのは’92年の初代NSXタイプR以来15年ぶりというからホンダとしても非常に力が入ったモデルなのは間違いない。開発陣が歴代FFタイプRのなかで「史上最速」の称号を謳うというだけのパフォーマンスを持っているのかどうか、そしてランエボやインプと比べてどうなるのか!? 気になる部分をチェックした。まずは今回の鈴鹿でボクが出したタイム、2分34秒台というラップだったんだけど、実はこれ、EK9シビック(6代目ミラクルシビック)のSiR(170ps)のレース仕様とほぼ同じタイム。レース仕様は930kgにまで軽量化されたもので、それとほぼ同じタイムを1270kgもあるナンバー付きのクルマで出せたのには正直驚いた。ピットから走り始めてすぐに気づいたのが、リアのうねり方がレーシングカーそのものだということ。ピットロードって一般道と同じで路面にツギハギがあるけど、そこを10km/hで通過した時に「このクルマはサーキット生まれのクルマなんだ」と実感。そのうねりがあるから高速コーナーでも破綻しないのだ。これまで130Rを180km/h以上でノーマルのまま走れるモデルは存在しなかった。ブレーキのタッチも非常に良好で、試乗ではまったくフェードしなかった。130R以外はABSまで活用して走った。先代インテRでもブレンボを使ってたけど、フェードが大きかった。それがシビックになって、初期段階から踏み込んでいってもまったく変わらなかった乗り心地は少し硬いかな? という印象だった(あくまでもサーキットでの話)けど、伸び側の減衰が高くて沈んだら上がってこない感じ。市販車の場合、ダンパーの減衰力の要件がキツいんだけど、その要件を達成しながらあれだけのパフォーマンスはふつう出せない。車体は揺れてもタイヤは安定していてマイチェン後のNSXタイプRのフロントが今回のシビックタイプRのリアに移植されたような印象だった。とにかくタイヤが路面をつかんで離さない。エンジンのフィーリングはパワーの盛り上がり、トルク感、いずれも文句のつけようがない。130Rで3速ではなく4速まで入ったのはほかのクルマではちょっと記憶にない。全般的にサーキットで走るのにすべてがバランスされている印象。ミッションも鈴鹿を何周アタックしてもへこたれなかったし、ものすごいクロスミッションなんだけど、タッチ自体は軽くて粘度がある。そうした意味では先代インテRからの進化はかなり大きい。コーナリング中の操舵に対するリニアリティも高いし、ボディ剛性のアップも確実に体感できるレベル。鈴鹿でインテRよりも1ラップ5秒以上の差をつけているだけの実力はあると思う。ストレートからの立ち上がり加速、ターンイン、これらのスピードはランエボやインプレッサSTIなどの4WDターボ車にもはや肉薄してきているし、コーナリング速度は完全にシビックRが勝っている。注文をつけるなら、あくまでレースカーと比較した場合に若干の腰高感あり。ロールセンターを下げれば、操舵した時により吸いつくようなコーナリングが可能になる。あとはシフトインジケータの位置とGがかかった時にシートベルトがロックされないことくらいかな。とにかくパフォーマンスは高い。史上最強の称号はダテじゃないことは、街乗りでも充分感じることができると思うよ。
是 斎藤聡 今の時代によくぞ作ってくれた!!

シビックタイプRを大絶賛します、と斎藤聡氏。最近のクルマはクルマ好きにとって刺激が足りなかった。が、今回のシビックタイプRは充分以上に刺激的だというのが最大の理由。鈴鹿サーキットの試乗会では、その高いパフォーマンスを存分に味わうことができた
今の時代にタイプRは必要? NEWシビックタイプR“是か非か?”論是か非かといったら、これは迷うことなく「是!!」ということで、私はシビックタイプRを全面的に支持します。よくぞこれだけ思いきったと思う。最近では、高性能車といっても万人向けの味つけで、最高出力や最大トルクを削っても、フラットなトルク、穏やかなパワー特性を作る傾向が強い。でもこういうクルマって、確かに「いいクルマ」だとは思うけど、ボクにとっては刺激が少なくて退屈なんだよね。ところがホンダは、走りのタイプRを復活させるにあたって、トルクの谷が多少あってもかまわない、乗り心地が硬くてもいいじゃないか、……と、およそ最近のクルマ作りの潮流に逆らうようなクルマに仕上げてきた。これは、タイプRという特別なクルマだからこそ許されるし、また、そうあるべきだと思っていたので、運転していて嬉しくなってしまった。今回は鈴鹿サーキットでの試乗だったんだけれど、その加速性能、旋回性能の速さには驚かされた。なにしろコーナーでは、まず限界までクルマを持っていくのが大変。たいていは高性能車といっても鈴鹿サーキットのような高速テクニカルサーキットに持ち込むと、限界を超えないように加減しながら走らなきゃイケないんだけれど、シビックタイプRはガンガン攻めていける。「えっ!! まだイケるの?」というくらい限界が高い。しかも、ただ旋回性能が高いとか加速がすごいというだけでなく、“運転している”というダイレクト感がすごくある。だからただ速く走れるだけじゃなく運転が痛快で楽しいのだ。デザインを見た時には、なんだかなあって感じだったし、インテグラタイプRが高性能だけど心に刺さるような棘が足りなかったので、正直なところ、「多分今度のシビックも……」、とあまり期待していなかったんだけれど、いざ走ったら……。ホンダさん、よくぞこんなクルマを作ってくれました!!
是 桂伸一 走りのレベルをキッチリ磨きあげている!!

ボクにとってはまったく文句のつけどころがないクルマだった、と桂氏。是非論はあるだろうが、否定的意見の人は、シビックタイプRに乗らなければいいのだから……
“押しボタン”でエンジン始動。もちろん瞬時にエンジンは目を覚ます。軽くアクセルをあおるだけで回転計の針は瞬く間にに5000~6000回転に達する鋭いピックアップと、ハイピッチのいかにも4気筒らしいパンチ溢れるサウンドがタイプRの証である。と、気取った書き出しを思わずやってみたくなるクルマだったのだ。ギアを1速に入れて鈴鹿のピットロードを下っていく。右足のわずかな動きにも忠実にクルマは反応する。やや敏感すぎるほどにレスポンスはいい。コースへ出て加速を続ける。3速で1コーナーを立ち上がり5800回転でハイカムに切り替わるVTECの威力で8400回転のリミットにも一瞬で達し、あっという間にレブリミッター作動。すかさず4速でS字に進入。リアの安定性が高いためフロントの舵角だけでスムーズにコーナーをトレースしていく、グリップ力とハンドリングの高さを確認することができた。続く逆バンクは4速か3速かで迷う。4速のままでは駆動力不足だし3速だと回転は上がるが車速は頭打ち。弱アンダーをアクセルコントロールで打ち消しながら逆バンクをクリア。……正解は4速のようだった。ダンロップの上りは強い横Gと路面の荒れに若干横っ飛びしながらも、前後の接地安定性は高い。ヘアピンは2速。立ち上がり加速ではLSDの効果もあり舵角をあてたままグイグイと引っ張られてクリアしていく。旋回ブレーキで不安定になりやすいスプーンを何事もなく立ち上がりバックストレッチへ。5速204km/hで130Rのブレーキングポイントへ。車速のノリのよさは2Lとは思えないほど速い。実際加速は“インテR”を凌ぐという。シケインは190km/hから、ストレートも200km/hオーバーからのフルブレーキングだが、まずペダルの剛性感の高さと踏力にリニアな減速Gの高さ、ペダルの強弱が正確に伝わるコントロール性の高さなど、まさにレーシングマシンのブレーキ性能だった。と、ざっと10周ほど走行して気持ちいい汗をかいた。日常は仕事の相棒として休日は家族のアシ、あるいはサーキットを攻める。など、走りの究極の楽しさと用途の広がりを教えてくれる。SUVだらけのこのご時勢にこんなヤツを出してくれて感謝感激。少なくとも今回の試乗では、いいとこだらけで、悪いとこなんて見当たらない。
是 片岡英明 乗って楽しいクルマ!

新しいシビックのタイプRに乗って驚かされた。こいつは久しぶりにワクワクドキドキ胸が高鳴る刺激ビンビンのホンダ車だ。先代のタイプRであるEP3型と先々代のEK9型は、優れたバランス感覚の持ち主だった。だが、走らせてみると、ちょっとガキっぽく感じたのも事実。3代目となる今回のシビックタイプRはヤングだけでなくボクたちオジサンも存分に楽しめる奥の深いスポーツセダンに仕上がっていると感じた。ルックスはちょっと地味だが、デザイナーの努力の跡は感じ取れた。前後のバンパーは専用デザインだし、リアにはデュフューザーも装着されている。翼板を黒のつや消し塗装としたリアスポイラーもカッコいい。欧州向けの3ドアタイプRほど目を引くデザインじゃないが、かなり頑張ったと思う。ただし、インテリアはガキっぽいし、安っぽい。ステアリングはショボいし、フロントシートもレカロじゃなくなった。ボンネットもアルミじゃないなど、もの足りなく感じる部分も多々ある。が、際立つ走りのよさがマイナス部分を補った。2LのK20A型エンジンはパワフルだ。レブリミットは8400回転だが、サーキットではそこを難なく飛び越えて8500回転に達するまでパンチを持続。アクセルを踏み込んだ時のレスポンスは鋭いし、高回転の伸びとパンチ力も文句なしだった。排気サウンドがもう少し心地よければ、さらに官能に酔いしれるハズ。エンジン以上に洗練度が高いのがシャシーとサスペンションだ。ボディ剛性は高いし、トラクション性能も大幅に引き上げられていた。コーナリング性能は群を抜いて高い。リアがしっかりと踏ん張り、舵の修正もラクだから安心してコーナーを攻めることができる。エンジンが排ガス星4つになって、3ドアのタイプRが加われば、さらに魅力を増すのだが……。ただし、一般道での乗り心地はそうとう悪いと思います。
非 河口まなぶ サーキット専用車になっちゃた

高い走りのパフォーマンスは認めるが、最新のタイプRとして、新しい提案があってもよかったのでは!?
シビックタイプR、たしかにもの凄く速いクルマなんだけど、サーキット以外ではまったく面白くないクルマなのである。完全にサーキット専用車として作られたクルマなのだ、このシビックタイプRは。ボクはこのような「市販車」を、諸手をあげて「いいゾいいゾ」とは言えない。一般道での乗り心地は最悪で、4ドアセダンだからといって、家族でのドライブにも使える、なんて誤解させちゃいけない。ハッキリ言って、奥さんや子供なんて乗せられたもんじゃあありません。一般道はサーキットへの往復のみ、我慢して乗る、という前提のクルマなのだ。NSXタイプRと同じスタンスですね。これ1台ですべてをまかなおうと思ったら、相当の覚悟が必要だろう。もちろんクルマハードとしての性能に文句を付ける気はまったくありません。鈴鹿サーキットを走れば恐ろしいほどのパフォーマンスを見せつけてくれたし、おそらく芦ノ湖スカイラインのようなワインディングだったら上り区間でもランエボやインプSTIと互角に渡り合える速さを身につけていると思う。それほどのパフォーマンスをもったクルマであることに異論を唱えるつもりは毛頭ない。でも、そのために例えば排ガスレベルが「星なし」だったりするのは、いまの時代どうなんだろう!? という疑問もある。ホンダだったらそのあたり両立してもらいたいな、という気持ですね。21世紀基準のタイプRを作ってほしかった。
是 松田秀士 とにかくコーナリングが凄い!!

サーキットでのハンドリング性能は高い評価だが……
いまの時代、タイプRのようなクルマの存在意義が問われる、ということもわかるのだが、これが、実際に乗ってしまうと……、もの凄く刺激的で、「やっぱいいよなぁ!!」となるのであった。とにかく刺激的。特にLSDの効きが強烈で、まるで昔のグループAシビックなどのFFツーリングカーマシンのような雰囲気なのだ。が、実はLSD自体は従来のインテRなどと大きく変わっていることはない。が、確実に効きがよくなっている。その理由は、フロント内輪の接地力が高くなっているから。これがサスペンションセッティングの妙、ということなのだろう。結果、トラクションが大きくなって、あたかもLSDの効きがよくなったような効果を発揮しているのだ。正直、ちょっと「効きすぎ」なのでは!? と思うほど。ボクらのように効きの強烈なLSDを装着したFFに慣れていれば使いこなして速く走らせることができるが、慣れていないと扱いきれないかもしれない。コーナリングでアクセルを踏み込んでいくと、グイグイフロントがイン側に巻き込むように前に引っ張っていく。この感覚は一種独特。これまでのFFタイプRシリーズでもこの感覚は味わえたが、今回のシビックタイプRはさらに際だっているのだ。サスペンションはサーキットでの試乗に限って言えば、非常にしなやかな印象だったけど、一般公道ではかなりハードな乗り味となるだろう。が、タイプRというクルマの性格を考えれば、特に文句はない。ブレーキに関しては、ブレンボの大型キャリパーを使ったシステムが奢られているが、鈴鹿をガンガンに攻めるとさすがに若干スポンジーなフィールになってきた。もてぎあたりになるとかなりキツイかもしれない。いま、こんなクルマを市販できるのはホンダくらいのものだろう。ぜひともタイプRの血統を途切れさせることなく、これからも作り続けてほしいものだ。消滅してから「買っときゃよかった」とならぬよう。
超重要ポイント シビックタイプR乗り心地はどう?

主要諸元
シビックタイプRの“サーキットでの”走りのよさ、圧倒的なパフォーマンスについてはよくわかった。が、一般道がほとんどの我々にとって、絶対に無視することができないポイントが乗り心地、である。「タイプRなんだから固くてもいいじゃん」。たしかにその意見は認めます。でも、ものには限度というものがある。あまりにも劣悪な乗り心地だったらさすがに困ってしまうのだ。足回りのプロフェッショナル集団として高い評価を得ているテインが、早くも新型シビックタイプR用サスペンションキット4種を開発した。「スーパーストリート」なる商品では、「ストリート走行でのゴツゴツ感や突き上げを感を極力排除したセッティングを施し、乗り心地を追求」と説明がある。普通はチューンドサスといえば固めるのが常道だが、わざわざソフトにするキットが販売されるとは!「新型シビックタイプRが納車されてすぐにテストドライブ→サスキット開発と動きました。開発を担当、評価するドライバー複数でシビックタイプRを評価しましたが、一般道では固すぎる、というのが当社の下した評価です。もちろんサーキットでのパフォーマンスは高いのでしょうが、これでは日々のドライブできつすぎるだろう、ということで新商品を開発しました」とテイン広報担当。今回の試乗会は鈴鹿サーキットを舞台とし、一般道の試乗はなかったため、乗り心地への言及がほとんどなかったが、試乗会後に一般道での試乗を行なった河口まなぶ氏は「最悪の乗り心地」と評価。かなりハードな足と思われる。