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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.12.05
徹底対決 NEWスカイラインvsレクサスIS スポーツセダン決戦!!
PART1 柳田春人、竹平素信、鈴木直也がスカイラインとレクサスISをガチンコ比較

【本記事は2007年1月にベストカーに掲載された記事となります。】スカイラインの勝ち! 安いよ!! 柳田春人 とにかく乗ればよさがわかるクルマ新しくなったスカイラインは第一印象が非常に良かった。ブリッピングしたときのエンジンの吹け上がりの感覚、高回転での音など、これはまぎれもなくスポーツセダンだ、と確信することができた。実際に乗って走り出す前から期待に胸が高まってくるのを自覚した。試乗したのは350GTタイプSP、オプションで4輪アクティブステア(4WAS)が装着された最上級モデルだ。新型スカイラインのもっとも装備の充実したスポーティなモデルである。走り出して真っ先に感じたのがカッチリしているな、ということ。普通の道を普通に走っているだけでもボディ剛性の高さ、サスペンション剛性の高さが感じ取れる。足はけっこう堅めのセッティングなのだが、ボディがカッチリしているので不快な突き上げなどを感じることはない。サスがちゃんと働いているということの証拠だ。エンジンはこれまでのVQ35DEとは別モノともいえる進化を遂げている。従来のVQ35DEは、低中速域のトルクは図太く、ドライバビリティの高さはすばらしいのだが、どうにも高回転が面白くない。6000回転あたりまで回すといかにも苦しそうになり、6500回転で頭打ちとなってしまう。Zに搭載されている294馬力仕様はそれでも7000回転までは回るのだが、スポーツカーのエンジンとしてはいささか物足りない。だが、この新型スカイラインに搭載されているVQ35HRはキッチリ7500回転まで吹け上がり、トップエンドまでトルクが付いてくる。回すことが楽しくなるエンジンだ。今回、新型スカイラインのライバルとなるレクサスIS350にも乗ったのだが、中速域のトルク感ではIS350のほうがやや太いように感じたが、トップエンドの吹け、気持ちよさではスカイラインが一歩リードしている。両車ATのみの設定となっているが、ISの6速に対してスカイラインは5速でスペック的には物足りなさを感じる人もいるかもしれない。しかし、スカイラインのATにはシフトダウン時に回転を合わせる「シンクロレブコントロール」が採用されていて、シフトダウンが楽しくなる。ISの6ATは変速自体はスムーズだが、シフトダウンでの回転合わせはなく、山道を気持ちよく走らせるにはスカイラインが一歩リードする。3.5Lでトルク自体は大きいので、5速ATのギア比でも特に不足を感じることはない。ハンドリングはスポーツセダンと呼ぶにふさわしい、キビキビした切れ味あるフィーリングを味わえる。試乗車の4WASは低速時にややクイックすぎるようにも感じたが、速度が上がるにつれ、シャープさとスタビリティを両立した、優れた操縦性を発揮する。レクサスISのハンドリングもサルーンとしては悪くはないのだが、スポーツセダンという目で見ると、スカイラインのほうがよりハイレベル。ハイペースの走りでも狙ったラインをトレースしやすいし、コントロール性もいい。走らせて楽しいのはスカイラインだ。ぜひともディーラーで試乗車に乗って頂きたい。乗ればそのよさが絶対にわかるはず。だが、スカイラインのスタイルには少々注文がある。ルックスだけならISのほうが断然スポーツセダンっぽい。スカイラインはもうちょっとコンパクトだとうれしいのだが……。
ISの完成度の勝ち 鈴木直也 スカイラインの真価は中速ワインディング!!

新型スカイラインのテールランプはLEDが丸形に光るタイプを採用する。V35型のクーペの印象を受け継いでいる
セダンに吹く逆風は老舗スカイラインとて例外ではなく、ケンメリ時代を頂点に国内販売台数はずっと右肩下がり。V35になってからは北米市場ではバカ売れだけど、日本市場におけるスポーツセダン復権はなま易しい仕事じゃない。でも、その難しいスポーツセダン復権というテーマで踏ん張っているのが今度のスカイラインで評価すべきポイント。そのこだわりを失ったらスカイラインじゃないという心意気が頼もしい。一方トヨタは「スポーツがだめならプレミアムだ!」とばかり、レクサスでプレミアムスポーツ路線を指向した。末っ子のISはアルテッツァの後継ながらグッと高級路線に進路変更。もちろん走りも重視しているのだけれど、それを前面に出さないブランド戦略がみてとれる。とにかく売れなきゃ話にならんという現実主義路線は、それはそれでトヨタならではのしたたかさが感じられる。両車のハードウェアにも、この基本的なクルマ造りのコンセプトが反映されている。スカイラインは、どちらかといえばシャシーの改良に力を入れた。前モデルで登場した前ウィッシュボーン/後マルチリンクの足は、基本構成は同じながら完全新設計。ボディについても単に高剛性というだけではなく、外力からくる振動に対して強い「ダイナミック剛性」を重視した開発が行なわれている。また、今回の目玉として4輪アクティブステアを投入。後輪アクティブ操舵に関しては、日産は世界的なパイオニアであると同時にそれをものにしたほとんど唯一のメーカーだが、いよいよ満を持して前輪アクティブステアの領域に踏み込んでいる。この結果、18インチタイヤ+4輪アクティブステアを装備したトップモデルのハンドリングは、明快にスポーツ性を表現したものとなった。とくに、低中速域ではアクティブステアの効果でステアリングのシャープな切れ味が強調され、スパッと切った瞬間にグイッとノーズが回頭するダイレクト感は一驚に値する。この味つけには賛否両論あるものの、変な妥協をせず目指す方向をハッキリさせているのは潔い。一方レクサスISはメカ的にはエンジンがいい。スカイラインのVQ35HRもトップエンドまで気持ちよく回るいいエンジンに進化したが、IS350の3GR-FSEは明らかにそれの上を行く。レスポンスのいい吹き上がり感、トップエンドでのパワフルさ、ドライバビリティやスムーズさと高級車らしいマナーのよさなど、このエンジンは世界的にもベストのひとつ。ミッションでもアイシン製6ATでスカイラインの5ATに差をつけている。これが、両車とも廉価版の2.5Lだとパワートレーンの差はグッと縮まる印象があるが、3.5L同士で乗り比べるとやっぱりエンジン/ミッションの完成度の高さではIS350がスカイライン350GTをリードしている。ただし、両車とも絶対的なクルマ造りのレベルは高いから、サスもエンジンも人によって評価がわかれるのは否定できない。ボク個人の好みで言えば、高速道路でもワインディングでもスピードレンジが高いときはIS、市街地から中速ワインディングまではスカイラインが気持ちイイという印象があった。
俺もスカイラインの勝ち 竹平素信 ものすごく楽しいクルマに仕上がっている!!

スカイライン:スカイラインのボディサイズは全長4755mm、全幅1770mm、全高1450mm、対するレクサスISは全長4575mm、全幅1795mm、全高1435mmで、見た目にも一回りコンパクトな印象。価格はスカイライン350GTタイプSPの380万1000円に対しIS350バージョンSは495万円となる
新型スカイラインはワシの期待どおりすばらしかった。パワーとハンドリングのレベルアップは当然としても、「走りの質感」が大幅に向上しているのに驚かされた。スカイラインの名に恥じないモノだと感じた。進化したVQ35はパワー、フィールともに格段の進歩を遂げている。最高出力315馬力、最大トルク36.5kgmはレクサスIS350とほぼイーブンで、実際に乗り比べても実力的には大きな差は感じない。だが7500回転までキッチリ吹け上がる高回転性能はVQ35HRならではの魅力である。ちなみにタコメーターのレッドラインはIS350が6600回転、スカイラインは7500回転。この新エンジン、ノイズやバイブレーションが大幅に減少しており、トップエンドまでリニアに盛り上がるパワー感がとても気持ちいい。サウンドもちょっと大きめに演出されていて、スポーツ気分を盛り上げてくれるのだ。ただ、吹け上がりはISがいい。新型スカイラインのハイライトはハンドリンクだ。350GTのタイプSとSPに15万7500円でオプション装着される4輪アクティブステアリング(4WAS)の威力が絶大!! 従来のハイキャスを発展させたメカで、後輪操舵に加えて、前輪のステアリングギア比をアクティブ制御し、低中速域でのシャープな回頭性と高速域でのスタビリティを両立させている。サーキットレベルの走りになると、ちょっとアンダーステアが出やすくなり、また積極的にリアを滑らせるような走りが難しくなってくるのだが、一般公道でのスポーティな走りを想定すれば、軽快でスポーティなハンドリングが楽しめる。運転が上手くなった気分が味わえる。4WASもさることながら、シャシー、ボディの基本性能の高さに注目したい。タイヤの持つグリップ性能を最大限に引き出したチューニングだ。このあたりはISもすばらしく、スカイラインと甲乙付けがたいところだが、乗り心地はスカイラインのほうが上質。本来なら高級ブランドを標榜するレクサスISのほうが乗り心地がよさそうなものだが、ISはスカイラインよりもさらに大きなタイヤを採用していることもあり、乗り心地を悪化させている。スポーツセダンとしてのパフォーマンスとハンドリングに加え、走りの質感や乗り心地も大きくレベルアップした新型スカイライン。スポーツセダンとしての仕上がりはレクサスISよりも上だといえる。
PART2 スカイラインVSレクサスIS 質感、所有満足度はどっちが勝ち?

手前がスカイライン350GT、奥がレクサスIS350。搭載されるエンジンは両車ともに3.5LのV6。スカイラインに搭載されるVQ35HRは7500回転まで気持ちよく吹け上がり、最高出力315馬力、最大トルク36.5kgm。IS350は最高出力318馬力、最大トルク38.7kgmだ
TEXT/鈴木直也スカイライン350GTの348.6~380.1万円という価格ゾーンに対し、IS350は480~525万円。ざっくり言って130~150万円ほどISの方が高い。この両車、エンジンや足まわりにそれほどコスト差があるようには思えない。ツインインジェクターや6ATなど、パワートレーンは確かにISの方が贅沢なスペックだが、そうはいっても基本はマークXにも使われているユニット。そんなにバカ金を掛けているわけではない。逆に、かえってサスペンションなどはスカイラインの方がグレードの高いアルミ鍛造パーツを多用するなど、気合いの入ったつくり。4輪アクティブサスなども、技術的なチャレンジという面では相当に高級なシステムといっていいくらいだ。してみると、この価格差は内装や装備品などの違い(たとえばISはカーテンエアバッグやHDDナビなどが標準)プラス、“レクサス”というブランド代ということ。まぁ、当たり前の話だが、スポーティな走りを重視するユーザーなら、文句なくスカイラインの方が満足度が高い。VQ35HRは3GR-FSEに比べると若干ラフな印象はあるが、スポーティ派ならそれは「活気あふれるエンジン」と好意的に解釈できるし、アクセル開度の大きな領域で使えば5ATもぜんぜんハンデにならない。これでISより100万円以上安いっていうんだから、こりゃバーゲンと言ってもいいくらいだ。一方、スカイラインから乗り換えると、ISはより高級サルーンっぽい印象だ。これは、エンジンの静かさ、明るめの内装色、ソフトな触感のシート座面、低速域の乗り心地における“あたり”のソフトさなど、さまざまな要素の総和なのだが、ただスポーティなだけではなく、それ以外の“サムシングエルス”を表現しようと工夫を凝らしている。もちろん、ISだってひとたび鞭を入れれば限界域での動力性能やハンドリングはスカイラインとほぼ遜色ない高いレベルにあるのだが、敢えてそのスポーティさを前面に出さないよう気を遣っているといった印象を受けるのだ。スポーティさの表現も、一歩間違えると“峠の走り屋”的な安っぽいイメージに陥る。ISはアルテッツァ後継ということでそう見られることを警戒したようで、結果としてスポーツをプレミアムのオブラートで包んだ「能ある鷹は爪を隠す」キャラクターを演じている。プレミアムカーの満足度というのは、必ずしもコストパフォーマンスとは関係ない部分で決まる。ライバルをたとえばBMW3シリーズあたりと考えているユーザーにとっては、ISが気に入ったら480~525万円という価格はこちらもバーゲンと感じるかもしれない。つまり、スカイラインとISは競合しそうでじつは意外にカチ合わないライバルなんじゃぁないか? これが2台を比較試乗してみたボクの結論であります。
PART3 NEWスカイライン ベストバイはどのグレード!?

スカイラインのインテリア。タイプSPの本革シートは写真の黒以外にベージュとタンから選択することができる
新型スカイラインのグレード構成は基本的に旧型V35を受け継いでいる。エンジンはV6、3.5LとV6、2.5Lで、このエンジンはどちらもほぼ新摂家手と行ってもいいほどの大改良を受け、7500回転まで気持ちよく吹け上がるエンジンに生まれ変わっている。3.5Lエンジン搭載の350GTにはタイプSP(380万1000円)、タイプP(359万1000円)、タイプS(348万6000円)の3グレードを設定。タイプSはパドルシフトやスポーツサス、18インチタイヤなどを標準装備としたスポーティグレード。いっぽうタイプPは本革シートや快適、豪華装備を盛り込んだラグジュアリーグレードでタイヤは17インチ。そしてタイプSPは両方の要素を盛り込んだトップグレードとなっている。2.5Lエンジンを搭載する250GTはタイプP(331万8000円)、タイプV(300万3000円)、ベースグレード(279万3000円)の3グレードで、主に装備の違いによるもので350GTのようなスポーツグレードの設定はない。250GTには各グレードに4WDモデルが設定されており、27万3000円高。4WDは日産FR系の定番アテーサE-TSを採用する。スカイラインにスポーツセダンとしてのパフォーマンスを徹底的に期待するというのなら、ここは迷わず350GT、しかもスポーツサスと18インチタイヤが装着されるタイプSがオススメ。トップグレードのタイプSPとの価格差は31万5000円あり、レクサスIS350バージョンSへとの価格差は実に146万4000円。本革シートは必要ない、というのならタイプSで決まりだろう。タイプSには4WASのオプション装着も可能だから、V36スカイラインらしい走りを楽しむことができる。いっぽう、ベースとなる250GTも目が離せない存在。エンジン以外は350GTタイプPと基本的には同じ250GTタイプPなら本革シートを含めフル装備なのでラグジュアリー志向のユーザーには満足度が高いだろう。エコノミー派ならもっともベーシックな250GT、といいたいところだが、VDC(スタビリティコントロール)が装着されないので、21万円高くなるけどタイプVを選ぶのがいいと思います。
Check Point 350GTタイプS/SPで51%の人が選んでいる!! 4輪アクティブステアってどんなメカ?
4輪アクティブステア(4WAS)は、新型スカイラインの開発陣が自信を持って搭載したメカニズムである。日産は’85年に後輪のみを操舵するHICAS(ハイキャス)を開発し、R31スカイラインから搭載を開始。改良を重ね、スーパーHICASに進化している。今回V36スカイラインに採用された4WASは、HICASをさらに進化させた、4輪操舵システムだ。前輪はステアリング操作で操舵されるわけだが、ステアリングシャフト中間に前輪操舵用アクチュエータ(モーター)を内蔵。舵角センサー、車速センサーなどの情報から、ドライバーが意図する挙動をクルマ側が判断し、前輪の操舵量を増減させるのだ。またこれと同時に後輪を操舵し挙動をコントロールしている。低中速域ではステアリングをクイックに、速度が上がるにつれ、ハンドル操作量に対する前輪の切れ角が少なくなり、スタビリティを上げていくような動きをする。見かけ上はステアリングギア比が変化しているような動きをするのだが、実際のギア比は固定されていて、アクチュエーターの働きで、そのような動きを作り出しているのがポイント。後輪はスタビリティを向上させる目的で操舵され、同位相にしか動かないようになっている。40km/h以下の低速時は後輪は固定したまま前輪をクイックに動かし取り回しを向上。40~80km/hではクイックな前輪操舵と同時に後輪を同位相に動かしスタビリティを確保。80km/h以上では前輪の操舵をスローにすると同時に後輪を同位相で操舵し、安定したレーンチェンジなどを可能とする。4WASは350GTのタイプSとSPに15万7500円でオプション装着することができる。
そこが知りたい! 現代の名工・日産テストドライバー加藤博義 スカイラインに込めた魂

主要諸元
「私の仕事を簡単に言うと、日産車の走りのデザインをする、ということになります。ハンドリングに関する最終的な方向性を決定するのが私の仕事ということになります」日産のテストドライバー加藤博義氏は言う。加藤氏は日産自動車車両実験部に所属するテストドライバー。FR系の操安を担当する。’03年には「現代の名工」にも選ばれ、一躍有名な存在となった。現在の日産FR車のハンドリングは、加藤氏が最終的に決定しているのである。「日産に入社して最初に配属されたのが追浜(テストコース)だったんです。当時は日産とプリンスが合併して10年ちょっと、まだまだ日産と元プリンスの間にはミゾがあって、追浜は日産系の車両の開発を中心に行なっていたんです。スカイラインをはじめとするプリンス系のクルマは村山でテストしている。そんなこともあり、スカイラインは好きなクルマではありませんでしたね。でもいまは自分の子供のような存在です」と加藤氏は笑う。スカイラインらしさとは!? との問いかけに「それはV36スカイラインで具現化しています」と断言。乗り心地とハンドリングの両立こそ、スカイラインに込めた魂なのだという。開発時の基準は350GTの4WASなし。これを徹底的に作り込んで納得できるモノに仕上げ、さらに上を行く性能として4WASを与え、逆にもっとゆったりしたのがいい、という人のために250GTの足があるのだという。「自分で買うとしたら250GTですね。充分納得できるモノに仕上げていますから。でも、4WASが付いたクルマも凄くいい。そりゃあそうです。自分が納得できないモノをお客さんに乗らせるわけにはいきませんから」と加藤氏のまなざしは厳しくなる。「V36スカイラインは“素美人”なんです。とっても素性がいい。とにかく乗ってみてください。絶対の自信があります。今やれることはすべてやりつくした、と思っています」
NEWスカイライン販売DATA 11月27日時点で受注4144台

主要諸元
販売目標は月販1000台と超控えめ。11月20日の発表から1週間での受注台数は4144台と滑り出しは好調の兆し。ユーザー層は、60歳以上が36%、続いて50歳代が24.8%で50歳以上で60%を超えている。29最以下はわずか1.9%となっていて、現在のセダン需要の現実を見せつけられる思いだ。グレード別ではもっとも安い250GTが28.4%でトップ。