輸入車
更新日:2022.05.03 / 掲載日:2022.05.03
BMW 1シリーズ/気になる中古車【試乗判定】 人気自動車ジャーナリストが真剣チェック!

文●竹岡 圭、ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス
※中古車参考価格はすべてグーネット2022年4月調べ。
(掲載されている内容はグーワールド本誌2022年6月号の内容です)
※ナンバープレートはすべて、はめ込み合成です。
一般ユーザーが乗っている使用過程車をテストすることで、新車ではわからない実力をチェックするのがこのコーナー。売れ線中古車の本当のトコロを厳しい目線でインプレッション! 果たしてその結果やいかに!?
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自動車ジャーナリスト【竹岡 圭】
カーライフのサポーターとしてTVやラジオなどでもおなじみの人気自動車ジャーナリスト。全日本ラリーにも参戦経験を持つ。2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
スポーティな走りを提供する上質なコンパクトカー
初めての輸入車としても人気の1シリーズ

編集部●気になる中古車を実際に試乗することで、その実力をチェックしようというのがこのコーナー。今回は、BMWのコンパクトカーである1シリーズが登場です。お借りした車両は2019年モデルで、グレードは「118i プレイ」、走行距離は2万4000kmです。
竹岡●1シリーズも3世代目だっけ、街でもすっかりおなじみの輸入車になったね。
編集部●そうです。初代が2004年、2代目が2011年、そして2019年に今回の3代目1シリーズが登場しています。歴代の1シリーズは販売台数ランキングでもベスト10の常連で、BMWのブランド拡大に大きく貢献してきました。
竹岡●価格もそうだし、いわゆるCセグメントの5ドアハッチバックはサイズ的にも日本の交通事情にぴったり。だからファーストカーにもセカンドカーにも人気がある。このクラスが初めての輸入車っていう人も多いんじゃないかな。
編集部●はい。実際、BMWの調査では1シリーズが初めてのBMWだというユーザーが多いことがわかっています。それから女性ユーザーも多いとのことで、現行型1シリーズには運転をサポートするための機能として、バックして戻りたいときに、時速35km以下で走行していれば、50mまでの軌跡を記憶し、ステアリング操作を自動で行う「リバース・アシスト」も全車標準です。
竹岡●狭い道で前のクルマに譲りたいときなんかに使うと便利そう。そういえば3代目になって前輪駆動になったじゃない。歴代1シリーズを乗り継いできたオーナーとして、そこはどう思う?
編集部●正直な気持ちを言うと少し寂しい部分はあります。クラスで唯一のFR(後輪駆動)という個性がなくなったという意味で。でもクルマとしての使い勝手はあきらかに現行モデルのほうが上ですね。後席の膝前空間が40mm拡大して、ラゲッジルーム容量も20L増えて380L~1200Lになりました。
竹岡●FRはどうしても空間効率がよくないから、コンパクトカーにはFF(前輪駆動)のほうが向いていると思う。それにBMWはMINIでFFのノウハウを培っているから、ライバルに比べてFFは作り慣れてるように感じるんだよね。それで現行1シリーズのグレードの構成はどんな感じだっけ。
編集部●デビュー当初は1.5L直3ターボ(140馬力)を搭載したベースグレードの「118i」、標準装備を充実させた「118i プレイ」、スポーティな「118i Mスポーツ」、そして2L直4ターボ(306馬力)搭載のMパフォーマンスモデル「M135i xDrive」という布陣でした。2020年に2L直4ディーゼルターボ(150馬力)の「118d」を追加。それぞれに「プレイ」と「Mスポーツ」が設定されています。
竹岡●「M135i xDrive」は新車価格が300万円も違うからちょっと別格として、違いはガソリンかディーゼルかって感じかな。あと年式による性能の違いをあまり気にしなくていいのはいいね。
編集部●それでは、そろそろ試乗のほうに参りましょう。
「走りも居住性も妥協なし。コンパクトカーとしての完成度はさすが!」

DETAIL CHECK
駆動方式がFFになってもシャープなハンドリングは健在

編集部●試乗から戻ってきましたが、走らせてみていかがでしたか。
竹岡●普通にいいクルマだし、ちゃんとBMWしてるよね。
編集部●どんなところにBMWらしさを感じました?
竹岡●たとえばハンドリングでいうと、ちょっとハンドルを切ったところの動きがシャープで思ったとおりに素直にクルマが動いてくれるところ。BMWってまるで自分の運転が上手くなったように感じられるんだけど、前輪駆動になった1シリーズでもちゃんとそれがある。それでいて乗り心地も悪くないし。
編集部●なるほど。先代モデルのオーナーとしては、「OK、BMW」の掛け声で起動する対話式インフォテインメントや先進安全装備などの充実ぶりがうらやましいです。
竹岡●iドライブもこれまでいろいろ改良を重ねてきたけど、結局タッチ操作を導入することになった。やっぱりタッチ式は使いやすいよ。先進安全装備もこの世代からクラスをリードする勢いで急激に進化したじゃない。ある意味で自動運転の技術がBMWの望むレベルまで到達するのを待っていたのかと思うくらい。
編集部●残念ながら3シリーズなどが装備する渋滞時のハンズオフ機能は備わっていませんが、コンパクトカーとしてはかなり充実しています。
竹岡●中古車市場はどうなの?
編集部●1シリーズのボリュームゾーンは200万円半ばです。気になるのが物件数が200台を切っているところ。これは新車の納期問題などの影響を感じます。
竹岡●それでも新車と比較すれば安く、すぐに手に入るのは魅力かもね。

対話式AIを搭載する最新世代のインテリア

3シリーズに共通するコックピットデザインに進化。メーターディスプレイはフル液晶タイプに進化し、インフォテインメントシステムもAI搭載の新世代を搭載。ACCなどの運転支援技術もベースモデルを除いて標準となった。
前輪駆動の採用で後席空間が広くなった

前輪駆動としたことで最も影響を受けたのが室内空間。ボディサイズはほぼ先代モデルと同等ながら、リアシートの膝前スペースは40mmも拡大。床もプロペラシャフトがなくなったことでよりフラットに近い作りになっている。
爽快感のあるガソリンとパワフルで低燃費なディーゼル

ガソリン仕様が採用するのは1.5L直3ターボ(140馬力)で7速DCTとの組み合わせ。ディーゼル仕様は2L直4ディーゼルターボ(150馬力)でトランスミッションはトルコン式の8速ATとなっている。
容量が増えただけでなく使い勝手もよくなった

ラゲッジルームも先代モデルより大きく進化した部分で、標準状態で20Lもの空間が拡大している。また床下が深くなったことで高さのある荷物が載せやすくなった。また、後席は3分割可倒式でアレンジ能力に優れる。

試乗判定レビュー
竹岡 圭
ポジショニング[10点]
コンパクトな日常使いしやすいBMWのエントリーモデルとして、すっかりおなじみな存在でしたが、今モデルからFFベースになるということで、賛否両論聞こえてきたのも事実です。個人的には駆動方式にあまりこだわりはなかったりもしますし、BMWはMINIというFFモデルを20年培ってきたので、完成度の高さは最初から十二分ですね。
装備[10点]
以前は最新鋭の安全装備と言いますか、ドライバーをサポートする装備にはあまり力を入れてこなかった感のあるBMWですが、このモデルから他メーカーを凌駕するほどの新装備を投入するようになりまして、その圧巻はリバースアシスト。50mほど今通ってきた軌跡をなぞって後退してくれるという優れもの。特に狭い道などで利便性は高いです。
走り[9点]
FFになって室内のスペース効率も高くなり、特に後部座席のくつろぎ度はグッとアップしましたし、快適性も文句ナシと言いたいところ。ですが、この個体は特にシフトショックが大きく出ていたのが気になりました。直列3気筒エンジンということですが、パワー的には問題ナシ。ハンドリングも素直で扱いやすさが好印象として残る感じでした。
グーワールド 編集部
ポジショニング[10点]
日常使いに便利なコンパクトなサイズにプレミアムブランドならではの所有する喜びを詰め込んだのが1シリーズ。歴代モデルは全輸入車の販売台数ベスト10に入るほどの人気モデルでした。現行型では前輪駆動を採用して空間効率を大幅に高めたのが特徴。ファミリーカーとして後席を頻繁に使う人にとっては、間違いなく便利になりました。
装備[10点]
これまでの1シリーズは、走りのメカニズムにこだわる一方で、快適装備や先進安全装備については必要にして十分といった感じでした。ところが現行モデルでは一気にクラストップに躍り出る充実ぶり。特に2021年以降のモデルはオプションが必要ないくらい標準装備が充実。中古車を選ぶときは自分が欲しい機能が備わっているか要確認です。
走り[9点]
先代モデルのオーナーとして一番気がかりだったのがFF化によって走りの魅力が失われてしまうこと。結論から言えば、BMWが主張するとおり、俊敏さや操作に対する反応のよさはしっかりと感じられました。たとえ後輪駆動ならではの蹴り足感がなくても、空間が広くなって同乗者が快適になるメリットは間違いなく大きいでしょう。
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