輸入車
更新日:2021.03.04 / 掲載日:2020.06.04
BMW 5シリーズ/気になる中古車【試乗判定】

2017年モデル BMW 5シリーズ
文●竹岡圭、九島辰也、ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス
(掲載されている内容はグーワールド本誌2020年7月号の内容です)
※中古車参考価格はすべてグーネット2020年5月調べ。
※ナンバープレートは、すべてはめ込み合成です。
一般ユーザーが乗っている使用過程車をテストすることで、新車ではわからない実力をチェックするのがこのコーナー。売れ線中古車の本当のトコロを厳しい目線でインプレッション! 果たしてその結果やいかに!?
Member Profile
自動車ジャーナリスト【竹岡 圭】
人気TV番組「おぎやはぎの愛車遍歴」の進行役としてもお馴染みの、人気自動車ジャーナリスト。2020-2021 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車ジャーナリスト【九島辰也】
長年にわたり男性ファッション誌や一般誌などでも活躍し続ける自動車ジャーナリスト。その知見は広く、プライベートでも各国のクルマを乗り継ぐ。
指名買い銘柄として変わらぬ人気を誇る5シリーズ

人気と伝統を誇るスポーツセダンの現行型

編集部●中古車を実際に試乗することで、その実力をチェックしようというこのコーナー。今回はBMWのミドルクラスセダンである5シリーズの登場です。お借りしたのは2017年モデルの「523d Mスポーツ」で、走行距離は5万2000kmです。
九島●お、5シリーズ。最近ちょっと気になっていて中古車相場を調べていたりするんだよね。
竹岡●ほんと男の人って5シリーズ好きよね。女性の5シリーズオーナーってあまりいないでしょ。私もまったく刺さらないもん(笑)。
九島●5シリーズは歴代そうなんだけど、指名買いされるクルマでさ、メルセデスやアウディと悩んで買うものじゃないんだ。そういう意味では、通好みというか、自分の嗜好がはっきりしている人向け。
竹岡●わかる。私だったら4シリーズのグランクーペとか、カブリオレ買うよ。これは「男のスーツ」。
編集部●それを聞いて俄然、格好よく見えてきました(笑)。
竹岡●たとえば既婚者で5シリーズに乗るっていうと、それなりに稼いでいて、さらに自分好みのクルマを選ぶことを許されているってことじゃない? 奥さんからも、「頑張ってるし、いいんじゃない」みたいな。そういう意味でも大人の男のクルマ。
九島●セダンはSUVよりもフォーマルだし、ドライバーが主役なんだよ。なかでも5シリーズは1972年から続く歴史あるスポーツセダンで、このジャンルの基準になるモデル。事実、日本の自動車メーカーでもこれまで数多くの開発者が5シリーズを研究して努力してきた。走りの実力もそうだし、世界観がぶれてないんだね。
竹岡●新型3シリーズが出て、デザインとかナビまわりが一気に新しくなったでしょ。ボディが大きくなって室内も広くなったし。でも、やっぱり5シリーズは違うのよね。質感とか気の使い方が。それは乗せてもらう立場なら余計に感じる。ちょっとした違いの積み重ねで、やっぱり格が違うなって思う。
編集部●そんな5シリーズですが、本日試乗していただくこのクルマは、2017年から販売されている現行型の7世代目です。ボディにはアルミや高張力鋼板に加えてマグネシウム合金を積極的に採用することで、先代に比べて90kg軽量化。運転支援技術を大きく進化させたのも特徴で、安全性はもちろん、運転の一部をサポートする快適性も自慢です。
竹岡●BMWはあまり自動運転に積極的じゃないかと思っていたけど、最近ではむしろ、クラスをリードするくらい力を入れているよね。
編集部●ラインアップはパワートレーン別に大きく分けると4種類で、2L直4ターボの「523i」(184馬力)、2L直4ディーゼルターボの「523d」(190馬力)、2L直4ターボの「530i」(252馬力)、そして3L直6ターボの「540i」(340馬力)。540iには4WDモデルも用意されています。
九島●さらにそれぞれに、内外装のテイストが異なる、「Mスポーツ」、「ラグジュアリー」が用意されると。
編集部●はい。では、そろそろ試乗のほうをよろしくお願いします。
九島「スポーツセダンとしての世界観がぶれない」
竹岡「繊細にディテールを重ねた上質な“男のスーツ”」
DETAIL CHECK

大人の直球スポーツセダンは中古車市場でも大人気
編集部●試乗から戻ってきたお二人に感想を伺います。
竹岡●インテグレイテッド・アクティブ・ステアリングの制御が少し強すぎるかも。ハンドルをちょっと切っただけでクルマの向きがグッと変わるから、駐車するときに一回で入れられる自信がない(笑)。
九島●速度可変式なんだよね。
竹岡●そうね。あと、もちろんいいクルマなんだけど、新型3シリーズを見たあとだからか、あんまり現行型っていう感じがしなかった。
九島●今回のクルマは、ステアリングの革がツルツルしてるし、そういうディテールが感じさせるのかも。竹岡●メルセデスや3シリーズに比べてコンサバだな。そこが好きって人も多いんだろうけど。
九島●僕はこのクルマ割と好きで、ステアリングのフィールもいまどきのBMWだし、ステアリングのグリップも太すぎなくていいね。
編集部●パワートレーンのおすすめは何になりますか?
九島●2Lのディーゼルでいいんじゃないかな。
竹岡●それか3L直6。せっかく買うなら、そこは妥協しないでほしい。中古車相場はどんな感じなの?
編集部●2~3年落ちで300万円台から選べます。物件も非常に多くて、この型だけで約700台がグーネットに登録されていました。
竹岡●それはお得! 買いだと思います。九島さんがチェックしているっていうのも納得。さすが!
九島●Mスポーツでボディ色は黒ね。販売店に奥さんを連れて行くと、ボディ白で内装茶系のエレガンスがいいって言われちゃうから、メンズのみなさんは気をつけてね(笑)。

部分自動運転を含めた先進安全装備を一挙に導入

部分自動運転を可能とした高度な運転支援技術の採用がこの世代のトピック。渋滞時にはステアリング操作もアシストしながら先行車両を追従する。また、時速60km未満ではリアタイヤを前輪と逆位相に、時速60km以上では同位相に操舵する機構により、取りまわしと俊敏性を向上。
ユーザーニーズに合わせて選べるインテリアテイスト

スポーツセダンとしての機能性と高級車らしい高級感が共存するインテリアは5シリーズのハイライト。インテリアトリムは外装同様に、スタンダード、スポーティなMスポーツ、高級感のあるラグジュアリーの3タイプで、取材車はMスポーツ。黒を基調にした引き締まったテイスト。
全車にターボエンジンを搭載4輪駆動を含め幅広い選択肢

モジュラー・エンジン・コンセプトに基づいたツインパワー・ターボ・エンジンを全モデルに採用。時代が求める要素を効率よく作り分ける設計で、5シリーズには排気量2Lと3Lの、ガソリンまたはディーゼルエンジンを搭載する。4WDモデルの「xDrive」も用意する。
スポーツセダンらしくラゲッジよりも足まわり優先

ラゲッジルームの要領は通常状態で530L。タイヤハウスの張り出しやフロアの段差はあるものの、奥行きが広く、キャディバッグのような幅広い荷物でも、手前側のスペースを活用することで収納可能。リアシートが3分割可倒式なのでシーンに応じてアレンジもしやすい。
試乗判定レビュー

※各項目に対して5点満点評価。 ※ナンバープレートは、はめ込み合成です。
竹岡 圭
7シリーズは社有車として使う方も多いので、パーソナルフラッグシップとなるのは5シリーズ。となると、やはりコレは、男のクルマだと思うんです。ジェンダーはこだわらない派の私ですが、路地や狭い駐車場や人どおりの多い道を、買い物に送迎にと日常的に走るのは、女性が圧倒的に多い。だからこそ、乗せてもらうクルマなんですよね。
乗せてもらうとなったら細かい使い勝手よりも、ゆったり寛げるほうがありがたい(笑)。となると欲しいのは、上質感と快適性。あとこのクラスならでは、ちょっとした優越感があれば言うことナシ。そして今回気になったのはその部分。最近BMWのコックピットがガラリと変わったせいか、やや古く感じるんですよ。もちろん質感はちゃんとしてますが……。
パワートレーン的にはこのディーゼルエンジンはデキがいいのですが、5シリーズともなると直6のガソリンエンジンをスムーズに走らせて、というほうが車格的にもカッコイイ! 「高いけど、そっちにしたら?」と、言えるオンナになりたいですね。若干気になったのはステアリングのフィーリング。ちょっと急に舵角が切れすぎる気がしました。
- 平均点 4.3
-
- ポジショニング 4.5
- 装備 4.0
- 走り 4.5
九島辰也
デキのいいスポーツセダンとして、いつの時代でも変わらないのがBMWの5シリーズというクルマ。それはコンセプトという意味でもそうだし、相対的にもそう。3シリーズでは軽快すぎるし、7シリーズだと重厚すぎる。そんなクルマ好きたちにストライクを投げてくれる。個人的にも5シリーズは中古車相場をチェックしている1台だ。
スポーツセダンといっても、高級車のジャンルに入るわけで、欲しいものは基本的に全部ついている。特にデキのいいACCは一度体験してしまうと、「次にクルマを買い替えるならこれがないと」と思わせてくれる。試乗していてちょっと気になったのはステアリングのチルトの調整範囲がもの足りないこと。シート側で調整すれば済む範囲だけどね。
いかにもスポーツセダンを作り慣れているBMWらしい隙のない走り。思いどおりにスパッと向きを変えてくれるステアリング特性も気持ちいい。新型3シリーズは、走りはいいのだが、ハンドルの握りが太すぎると思ったが、5シリーズはちょうどいい。エンジンはディーゼルでも十分だが、もっと刺激が欲しくなる。3L直6ターボがオススメだ。
- 平均点 4.8
-
- ポジショニング 5.0
- 装備 4.5
- 走り 5.0
グーワールド 編集部
SUVブームの影に隠れがちなセダンですが、やはり全体のバランス、たたずまいを含めた高級感はさすが。今回登場してくれた5シリーズは、2017年発売とまだまだ新しいクルマ。ですが、その人気ゆえに流通台数が多く、実力を考えると驚くくらい中古車は割安に流通しています。まさに中古車の醍醐味を存分に味わわせてくれるクルマです。
自動ブレーキやハンドルのサポートを含めたレーンキープ、そしてストップ&ゴーに対応するACCも標準装備。気持ちよく走れるときは自分自身で、疲れているときや渋滞時にはクルマが運転をサポートしてくれるのは、非常に安心で快適です。また、スポーティなMスポーツ、上質感のあるラグジュアリーと、内外装のテイストが選べるのも魅力。
走らせていてストレスの少ないクルマでした。ホイールベースは3m近くあるのにハンドリングは俊敏かつダイレクト。それでいてナーバスなところもありません。Mスポーツなので路面が悪いところではショックを感じますが、それもスポーツカー的。まさにドライバーが主人公なのです。一方で後席に座れば快適。まさに高級セダンのお手本です。
- 平均点 4.8
-
- ポジショニング 5.0
- 装備 5.0
- 走り 4.5