輸入車
更新日:2024.02.25 / 掲載日:2024.02.17
MINIクラブマンの思い出【九島辰也】

文●九島辰也 写真●MINI
ご存知の方も多いと思いますが、MINIクラブマンが生産終了となります。昨年10月にBMWジャパンからその最後を記念したモデル“ファイナル・エディション”が発売されるとリリースされたのは記憶に新しいところでしょう。世界限定1969台、そして日本では320台限定で“S”と“SD”がディーラーで扱われています。

なぜ、今回クラブマンを取り上げるかというと、かつて所有していたほど好きだったからです。と言っても個人的に所有していたのは現行型ではなく、2008年にBMWプロダクトとして復活したモデル。3ドアハッチバックをベースに、ホイールベースを伸ばし、右側にリアドアを設けたものでした。それも逆ヒンジで、前後のドアが観音開きになるという特殊なものです。

でもってリアドアもまた初代モデルを模した観音開き。ミッドセンチュリーのGE製冷蔵庫みたいな取手で開けます。通常のハッチバックであれば跳ね上げ式のゲートですが、そうしなかったのが開発陣のこだわり。ルームミラーに映るとドアの繋ぎ目となる真ん中に死角ができますが、それよりもカタチを優先しました。う〜ん、素晴らしい。
グレードはクーパーで、ボディカラーはアイスブルー。インテリアは白レザーを選びました。サーフキャリアを付けて海へ向かうって感じです。キビキビよく走ったし、3ドアハッチバックよりロングホイールベースな分、乗り心地も悪くなかった。それにあのサイズは機動力バツグンで、ちょっと出かけるのもストレスを感じさせないのがポイントです。女性からも好評でした。

そして2015年に二代目としてよりモダンに進化します。全幅は1800mmに広がり、5ドアハッチバックに生まれ変わりました。そして2019年にマイナーチェンジ。インテリアの意匠をはじめ細部に手が入ります。印象的だったのはリアテールランプでしょう。それまで渦巻きのような光り方をしていましたが、英国旗“ユニオンジャック”をあしらったものになりました。これはいいアイデアですよね。その後他のモデルもそうなりますが、夜間でもひと目でMINIファミリーであることがわかります。こういうアイデンティティの表現はインテリジェンスを感じますね。
では、なぜ生産が終わってしまうのか。その理由はいくつかあると思います。例えば、SUVブームの中ステーションワゴンを求める人が少ないことや、同じジャンルに5ドアが追加されたことです。後者はクラブマンの名前に思い入れがあって指名買いしない限り、カニバルと思います。そりゃそうなりますよ。MINIファミリーとはいえ、コンセプトが近すぎます。

それじゃクラブマンに思い入れがある人とはどういう方々でしょうか。それを考えると、やはりクラシックミニの時代に遡ります。初代と呼ばれる1969年にリリースされたモデルです。そこにバリエーションとしてクラブマンシリーズが生まれます。バッジ違いでは、オースティン・ミニカントリーマンとかモーリス・ミニトラベラーとか。そしてカーゴを広げたクラブマンにクラブマンエステートが誕生します。現行型の祖となるモデルです。
ちなみに、この時のリアゲートが観音開きでした。つまり、復活したモデルはここにこだわったのです。現代の衝突安全基準を鑑みると、真ん中で開くそれは規制をクリアするのに難しかったかもしれません。でもそれを実行したのですから立派です。
そんなクラシックミニに想いを馳せる人はクラブマンを指名買いしていたでしょう。ですが、それも終わりとなるとやはり寂しい。ただ、MINIファミリー的には朗報もあります。それはクロスオーバーが新型では“カントリーマン”の名前で登場することです。この名前も懐かしく、当時を知る者にはグッと刺さります。
それにしてもMINIは、クラブマン、カントリーマン、ペースマン、など“マン(MAN)”が好きですね。ただこれは英国式なのかもしれません。映画「キングスマン」もありますし、ビスポークスーツブランドに「ハンツマン」なんてのがあります。我々日本人だとウルトラマンが一番“マン”の中でも親しみがありますが。その感覚とは大きく違いそうな気がします。