車の歴史
更新日:2021.12.28 / 掲載日:2021.12.24
オデッセイ生産終了にミニバン戦国時代の終焉を見た【九島辰也】

文●九島辰也 写真●
2021年を振り返ると、コロナ禍とはいえいろいろなモデルが登場しました。12月10日に発表された日本カー・オブ・ザ・イヤーの詳細をご覧いただければわかるように、最後に残った10台はどれも個性豊かなものばかり。そんな中で日産ノートとそのファミリーが本賞をとったことは素晴らしいと思います。日本のコンパクトカーもかなり進化しました。使い勝手だけでなく、走りの面でも。
そんなスポットライトを浴びるクルマもあれば、その歴史に幕を下ろすものもあります。例えば、ホンダ・オデッセイ。狭山工場の閉鎖と共に、生産終了となりました。レジェンド、クラリティも同様です。
オデッセイをフューチャーしたいのはやはり人気車種だったからです。ミニバンの定説よりも全高を低くしたボディがやけにかっこよく見えました。ある意味“ホンダらしい”ですよね。ミニバンになっても走りを忘れないというか。最後にステアリングを握ったのは今年10月。都内から愛知県まで往復しましたが、その走りに曇りはありません。eHEVでモーター駆動となりますが、ガソリン車から乗り換えてもそれほど違和感のない味付けだと思います。それにホイールベースが長い分直進安定性が高く、高速道路移動は快適でした。
そんなミニバンですが、そもそもどうやって生まれたのでしょう。答えはアメリカにあります。起源はダッジ・ラムバンのショートホイールベース。それに子供を乗せ野球の練習場まで送り迎えする“ベースボールママ”が増えたことがミニバン誕生の足がかりになりました。近所の同級生も一緒に乗せて、ですね。スクールバス文化のある国ですから違和感はありません。
ですが、そもそもダッジ・ラムはフルサイズバンなので、家のガレージに入らないという問題があります。「アメリカのガレージは大きい!」とお思いでしょうが、その多くがユニット式の規格サイズなので限界があります。なので、乗用を主としないフルサイズバンのことは考えていません。つまり、アメリカの一般的な家庭にあるガレージに入るサイズのバンが必要だったワケです。

といった全米におけるトレンドを鑑み、クライスラーの首脳陣が70年代終盤開発に着手したのがダッジ・キャラバン&プリムス・ボイジャーです。デビューは1983年頃の話ですね。ちゃんとガレージに入れることのできる人を乗せるためのバンが生まれました。当初は“マジックワゴン”なんて呼ばれたとも資料に記載されています。
ここで勘のいい方ならご理解いただけたと思いますが、ミニバンという通称はフルサイズバンに対しての“ミニ”なんです。なので、オデッセイやアルファードに乗って「全然ミニじゃないじゃないかー!」と言っても、基準が違うんです。あれでも全長5.5m、全幅2m、全高1.9m以上のフルサイズからすると小さくなります。まぁ、そうは言っても日本人は器用ですから、ミニバンをどんどんミニサイズに進化させてしまいました。5ナンバーサイズミニバンなんてフルサイズから比べたら、タイニー(ちっちゃな)バンと呼びたくなります。

ミニバンが日本のマーケットで台頭し始めたのは90年代後半からでしょう。ホンダがステップワゴンやストリームで攻勢をかけると、トヨタがセレナ、イプサム、ウィッシュで対抗。マツダはプレマシーを導入します。ノア&ヴォクシーは2001年でした。
ただこうしたミニバン戦国時代も一つのくぎりを迎えた気がします。3列シートのSUVが増え、にわかに代わりを担い始めました。クルマ好きのユーザーは感じていたんですよね。多くのミニバンは運転が楽しくないことに。そして、運動性能の高い3列シートのSUVがこんなに増えていることになりました。

おもしろいのはマツダ。すでにミニバンの開発&販売をやめ、3列シートのCX8をその代わりとしてポジショニングしています。半分冗談でしょうがマツダの社内にはミニバン好きはいないとか。ディーラーからはミニバン待望論があるようですが、それに応える気はないみたいです。すごい!その潔さに敬意を表します。
そんな感じで、誕生するクルマもあれば去っていくのもあります。その意味じゃトヨタ・クラウンとかホンダ・シビックとか日産スカイラインとかってすごいですよね。何十年も続いて。でも、そのままのカタチであり続ける保証はありません。時期クラウンがSUVになるという噂もありました。シビックがミニバンになって登場したらビックリですよね。大ブーイングが起こりそう。まぁ、そんな妄想に耽るのもクルマ好きの年末の過ごし方かもしれません。