車の歴史
更新日:2025.02.22 / 掲載日:2025.02.22
オープン2シーターの金字塔、ユーノスロードスター【名車の生い立ち#10】

昨年末にマツダ ロードスターが発売35周年を迎えました。それを機にロードスター35周年記念車(国内向けは1000台)が発表され、2025年3月3日まで注文受付中となっています。特別なボディカラーとタンカラーのインテリアを組み合わせた特別なモデルは、ファン垂涎の1台といっても過言ではありません。そこで今回は、日本にオープン2シーターを普及させた立役者「ロードスター」の生い立ちを振り返ってみましょう。
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オープンカーの楽しさを世界中に広めたユーノスロードスター

今でこそ街でも見かける頻度の多いオープン2シーターですが、1980年代の日本では珍しい存在でした。当時ホンダ シティカブリオレのような乗用車ベースの4シーター・オープンカーこそあったものの、2シーターといえば輸入車が大半。特にロータス、トライアンフ、MGなどのイギリス車が2シーターの定番でしたが、日本の道路で見かける機会はそう多くありません。
ところが、1989年2月のシカゴオートショーで1台のオープンカーが発表されたことで状況は一変。その名は「Mazda MX-5 Miata」。彗星の如く現れたこのクルマはたちまち大きなニュースになって日本にも届きました。同年5月の北米での発売を経て、7月には「ユーノスロードスター」の名称で日本でも販売がスタート。ユーノスとは、当時設立されたばかりの新しい販売チャンネル名で、平成の幕開けとともに華々しいデビューを飾りました。

ユーノスロードスターは、丸みを帯びた全長わずか4m弱の小さなボディに手動開閉式ソフトトップを備え、リトラクタブル式のヘッドライトを採用。見るからに可愛いらしいルックスは、クルマに興味のない人でも目を引くデザインでした。でも、本当に語るべきはその中身。専用のFRシャシーには、前後ともダブルウィッシュボーン式のサスペンションを採用。エンジンは、ファミリアにも積まれた120馬力の1.6L 4気筒(B6型)が搭載されました。前後重量配分は50:50という理想的な配分としつつ、車両重量は驚異の1トン切りを実現したのです。
走りは軽快そのもので、マツダが「人馬一体」を謳うとおり、意のままに操る楽しさを存分に堪能できるクルマでした。屋根の開け閉めは、室内からファスナーを開閉する必要があり、昨今のオープンカーと比べてひと手間かかるものの、オープンエアドライブの気持ちよさは格別。スポーツカーとオープンカーという2つの属性を持ったユーノスロードスターは、世界で爆発的なヒットモデルとなりました。
海外メーカーから多くのフォロワーがデビュー

ユーノスロードスターが登場したのは1989年で、時代は空前絶後のスポーツカーブーム前夜。1990年代に入ると、ブームの追い風もありユーノスロードスターは年次改良を重ねていきました。1990年には4速AT車、さらに同年タンシートを備えた「Vスペシャル」、1992年にはビルシュタイン製サスを装着した「Sスペシャル」を追加。1993年には排気量が1.8Lに拡大され、最高出力は130馬力にアップするなど、スポーツカーに不可欠な進化を遂げていきました。

ちょうどその頃、ユーノスロードスターのヒットを受けて海外の自動車メーカーたちもオープン2シーター市場に参入していきます。1995年にはイタリアのフィアットから「バルケッタ」が登場。見た目やサイズはユーノスロードスターに近いですが、こちらはコンパクトカー「プント」をベースにしたFFレイアウトを採用していました。一方、イギリス・ローバー社のMGブランドでは「MGF」がデビュー。MGといえば、オープン2シーターの本家本元といえる老舗ブランドです。そんなMGFは、ミッドシップレイアウトを採用し、クラシカルな佇まいのオープンスポーツカーとしてユーノスロードスターに攻勢をかけます。

さらに1996年には、なんとポルシェも「ボクスター」で参戦。当時のポルシェは経営難に苦しんでいた時期でしたが、ボクスターの大ヒットによって経営は回復しました。ほかにもメルセデス・ベンツ SLK、BMW Z3などドイツのプレミアムブランドもこのカテゴリに参入し、オープン2シーターブームが到来したのです。
走りや快適性を進化させた2代目ロードスター

1998年1月、ロードスターはフルモデルチェンジを受けて2代目になりました。この年の出来事といえば、長野オリンピックの開催、郵便番号の7桁化、映画「タイタニック」の大流行など。世間はスポーツやエンタメで盛り上がる一方、スポーツカーブームは少しずつ下火になっていた時代でもありました。そんななか登場した2代目は、ユーノスブランドの廃止を受けてマツダ ロードスターに名称を変更。初代のキュートなリトラクタブルヘッドライトは固定式に改められたものの、ボディサイズやプロポーションは初代ほぼそのままながらも、各所が進化を遂げました。

パワートレインは、先代のマイナーチェンジを機に廃止された1.6L車が復活し、1.8L車も含めた2モデル構成に。サスペンションジオメトリーの見直しや補強、そしてグラム単位の軽量化で車両重量を抑えつつ、走りの性能が強化されました。また、アクリル製のリアウインドウは視界の良いガラス製に変更され、屋根の開閉も以前ほど時間が掛からなくなったことも嬉しいポイント。そのほか、スペアタイヤの搭載場所がトランクの床下になったことで荷室スペースを拡大。実用面で厳しいロードスターにとって、地味ながらもかゆいところに手が届いたモデルチェンジでした。
2000年のフェイスリフトを経て、2001年にはワンメイクレース用の「NR-A」が登場したほか、2003年にはマツダE&Tが手がけた2ドアクーペも発売。ほかにも各種特別仕様車がリリースされており、バリエーションの拡大も2代目ロードスターの特徴といえるでしょう。
3ナンバー化でサイズアップした3代目ロードスター

2005年8月、ロードスターは3代目となりました。この年はレクサスブランドの日本導入、郵政民営化法の成立、愛知万博の開催などが大きな話題になりました。そんな年に3代目となったロードスターは、プラットフォームを全面的にリニューアル。今まで4m未満に抑えられていた全長は4020mmに達し、全幅は1720mmとなったことで3ナンバー化されたのが最大の変更点といえるでしょう。ユーノスロードスターを彷彿とさせるディテールも見どころで、デザイン面では原点回帰といえるものでした。

ボディサイズが拡大されたとはいえ軽量化も徹底されており、最もベーシックなグレードでは車両重量が1090kgに抑えられました。ロードスターとしては重く感じるひとがいたものの、当時のデミオ(カジュアル/1070kg)とほぼ同じ重さと考えると、十分軽量といえるもの。パワートレインは170馬力の2.0L 直4を搭載。排気量を拡大し、パワーとトルクを高めたことでスポーツカーらしい動力性能を得たことも3代目の特徴でしょう。発売翌年には、電動開閉式パワーリトラクタブルハードトップ「ロードスターRHT」も追加。こちらは荷室を犠牲にすることなく、気軽に屋根を開閉できるメタルトップモデル。防犯性が高く快適な走りはシニア層にも好評で、新たな顧客層を掘り起こしたのでした。
「魂動」デザインでスタイリッシュになった4代目ロードスター

2014年9月、マツダはファンに向けた特別なイベント「マツダ ロードスター THANKS DAY IN JAPAN」を開催。一般的にいえば、新車のアンベールはモーターショーなどで限定的に行われることが大半。しかし、マツダは一般のファンも交えたイベントで新世代のロードスターを発表しました。異例ともいえるこのワールドプレミアは、たくさんのファンに恵まれたロードスターならではといえるかもしれません。

その翌年7月、正式に4代目ロードスターが発売されました。その特徴は、なんといってもダウンサイジングによる原点回帰です。たしかに3代目も初代オマージュのような原点回帰はしたものの、それはあくまでデザインの話。4代目は全長を3915mmにまで短縮し、車両重量は先代から100kg以上もウェイトダウン。全幅こそ1735mmと3ナンバーサイズですが、初代が志したライトウェイトスポーツの基本に立ち返ったモデルチェンジとなったのです。パワートレインは1.5L 直4を搭載。最高出力は先代の170馬力から131馬力に下がったものの、軽快なハンドリング性能は歴代トップクラスとなりました。また、2016年にはハードトップのロードスターRFが登場し、さらなるユーザー層の拡大も図られています。
初代がデビューしてから丸35年が経過しましたが、今ではコンパクトなオープン2シーターの代名詞となっているロードスター。生産累計世界一というギネスホルダーでもあり、その地位は不動のものとなっています。現行型の登場から10年が経とうとしていますが、古さを感じさせないデザインと走りは、いつまでも私たちを魅了し続けてくれることでしょう。
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