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更新日:2018.12.02 / 掲載日:2014.11.21
TOYOTA MARK X 現在も息づくトヨタ伝統のFRセダン

トヨタマークIIの後継として登場したマークXは、若い世代に訴求するスポーティなデザインと走りが魅力。後輪駆動のセダンはいまや希少な存在だが、マークII時代から築き上げた伝統のブランド力は依然健在。今回は、そんなマークXの歴史とメカニズムを振り返り、マーケットデータも紹介していく。
トヨタ マークXはこんなクルマ!
頑固なまでにFRの駆動方式にこだわり、日本の上級セダンのよき伝統をいまに伝えるモデル。現行のX130系は2代目にあたり、2.5Lと3.5Lの2つのGR系V6ユニットを搭載する。2.5Lには4駆の「Four」もラインアップ。

2014年9月に発売された特別仕様車の「イエローレーベル」は、鮮やかなイエローを含む4つのボディ色を展開。内装にもイエローを配する凝りようで、「ピンクのクラウン」で話題を集めたトヨタらしい攻めの姿勢が表れている。
土台からの革新によりセダンの復権を目指す
直6の心臓を積むFRレイアウトのセダンが、アッパーミドルクラスのスタンダードだった80~90年代。その時代に、日本の上級車市場を牛耳っていたのはマークII兄弟だった。チェイサーとクレスタを合わせて月に3万台以上を売りさばいたというのは、いまでは懐かしい武勇伝だ。
そんなマークIIに転機が訪れたのは90年代後期。ワゴンやミニバン、SUVの台頭により、日本ではセダン人気の衰退が顕著となり、王者マークIIも変革を迫られることになる。00年投入のX110系では、プラットフォーム刷新や、4ドアハードトップからセダンへの転換などの変革を実践したが、「セダン離れ」の流れを変えるには至らなかった。
で、ついにトヨタは、歴史ある車名を捨てて新たなスタートを切ることを決意する。そう、そこで再興を任された新世代セダンこそが、04年に登場したマークXだったのだ。
未知の可能性を表す「X」には、マークIIのしがらみを断ち切り、新たなセダン市場を開拓しようという熱意がこめられている。「FRセダンとは何か」と問い直したときに、導き出されたのは上質な走りのテイストであり、操る喜びにつながるスポーティさだった。
カギを握るのは、「ゼロ・クラウン」から導入されたGR系V6ユニットや、それにあわせて開発された新世代のFRプラットフォーム。優れた資質があったからこそ、マークXはFRの改革を実践できたのだ。
そして09年には、初代のX120系から2代目のX130系へと発展。気になるのはいま、マークXが置かれている状況だが、その存在感と価値は時代とともに高まっていると言っていい。それはどうしてか?
FF化の流れは沈静化し、近年は走りの質感に優れたFRのよさが見直されるようになったが、それはあくまでも高級ブランドや高級車の話。FR系セダンを、海外では「インフィニティブランド」で展開する日産の戦略はわかりやすい例で、手の届きやすいプライスタグをつけたFRセダンは、ますます貴重な存在になっているのだ。通やマニアがいま、マークXに注目する理由はそこにある。
RIVAL ライバル
日産 スカイライン

新車価格帯 383万4000~569万5920円(※全グレード)
海外仕様は別ブランドでの高級路線にシフト
新しいV37型は海外では「インフィニティQ50」を名乗る。日本では4気筒2Lターボの「200GT-t」も展開するが、それでも価格は高め。マークXの対抗馬として、いまも先代の「250GT」を残す。
スバル レガシィB4

新車価格帯 286万2000~307万8000円(※全グレード)
独自思想のメカを搭載新型は安楽志向に
スバル伝統のボクサー+シンメトリカルAWDのメカを核として、スポーティセダンの世界を構築してきたB4。新型は「スポーティ」から「ゆとりと安心」の方向にシフト。心臓はNA2.5Lのみとなった。
レクサス IS

新車価格帯 438万2000~615万8000円(※全グレード)
メカニズムと質感では一歩上を行く上級車
全長やホイールベースはマークXよりも小柄だが、価格設定はレクサスらしく高め。メカは全体に新しく、内外装の質感も高度なものだが、FRセダンとしてのお買い得度はマークXのほうが上だろう。
HISTORY ヒストリー
PAST MODEL
平成16年11月 初代マークXを発売
NEW MODEL
平成21年10月 2代目マークXを発売
平成24年8月 マイナーチェンジ
平成26年7月 一部改良
世代別中古車物件比率

現行型が登場してから5年が経過して、中古車の数は全体の4割近くにまで増えた。しかしながら、中古車の主軸はやや先代のほうに分がある。登場から時間が経つものの、程度のよい物件も多く価格もリーズナブルなものが多い。
※すべての価格は参考価格です

2nd 販売期間:平成21年~
中古車参考価格帯 110万~360万円 (平成21年~平成26年 ※全グレード)
トヨタ マークX プレミアム(6速AT)
主要諸元
平成21年式
全長×全幅×全高:4730×1795×1435mm
車両重量:1550kg
排気量:3456cc
エンジン:V6 DOHC
最高出力/最大トルク:318ps/38.7kgm
燃費:10.2km/L(10・15モード)
サスペンション前:ダブルウィッシュボーン
サスペンション後:マルチリンク
ブレーキ前後:Vディスク
タイヤ前後:235/45R18
走りの資質と品質を磨き上げた第2世代
スポーツセダンとしてのパフォーマンスと、上級セダンとしてのクオリティや高級感。2つの魅力に磨きをかけて登場したのが2代目だ。
脚光を浴びたのは、318馬力を生む2GR-FSE型V6を搭載する350Sで、可変ギヤ比ステアリング(VGRS)や電制可変ダンパー(AVS)、フロント4ピストンブレーキを標準で装備する本格派のスポーツセダンに仕立てられていた。
対して2.5Lモデルは、使用ガソリンをレギュラーに変更(パワーは215から203馬力にダウン)することで、よりユーザーフレンドリーな方向へのシフトを図った。
そして12年のマイチェンでは、フロントマスクを中心に外観をよりスポーティに変身させるとともに、走りの洗練度も向上。溶接スポット点を追加するなどしてボディ剛性を高め、2WD車にFAD(振動数感応)ダンパー(350SとSパッケージはAVS)を採用することで、操縦安定性や乗り心地のレベルアップを図ったのが注目のポイントだ。
EXTERIOR エクステリア
実用的なサイズを守りつつよりスタイリッシュに変身
「X」をモチーフとするグリルを尖鋭化し、ラインや面をよりグラマラスにアレンジするなど、2代目のスタイルはよりスポーティな印象になった。だが、全長と全幅の数値は微増のレベル。日本のユーザーや道路事情にあわせたパッケージが、マークXの大きな魅力と言える。

MECHANISM メカニズム
より高みを目指した3.5Lと経済性を重視した2.5L
D-4S(直噴+ポート噴射)を採用するV6の心臓は、3Lを3.5Lに上級移行させ、2.5Lは経済的なレギュラーガス仕様へと変更。幅を持たせた設定とした。駆動力統合制御のDRAMSや対向4ピストン式フロントブレーキ(3.5L)を新たに導入したのも130系の見どころだ。

INTERIOR インテリア
全体の質感をレベルアップディテールにもこだわる
よりシャープなデザインを採用し、全体の質感を高めたのが進化のポイント。スポーツタイプの“Sパッケージ”と高級タイプの“Lパッケージ”では、配色や加飾パネルの演出が大きく異なっている。後席リクライニングや可倒機構は、先代から継承する便利なアイテムだ。



走りをより楽しみたい人にはさらに過激な「G’s」も設定

12年のマイチェンを機に投入されたのは、GAZOOレーシングのテストドライバーがトータルチューニングを施したG’s。ベースは250G“Sパッケージ”と350Sの2タイプで、専用のサスチューンや19インチ鍛造アルミホイールの採用に加えて、ボディ補強や空力チューンも施している。容姿は・・・大人のスポーツセダンとしては少々大胆か!?
MARKET REPORT 市場レポート
前期型は100万円台で買える物件が増えた
人気モデルゆえ、デビュー当初は中古車の価格は高値安定傾向だった。しかし現在は全体的に相場が下がり、前期型なら200万以下の予算で十分にねらえるように。走行距離は1~3万kmの物件が中心で、コンディションも良好なものが多い。後期型の相場は、たとえば1~3万km・平成25年式だと271万円なので、まだ割高感がある。
グレードは大きく分けると3種類だが、市場に出まわる大半は「250G」。「350S」は数が少ないものの、やはり2.5Lモデルと比べると高めである。また、後期型に新設定されたスポーツモデル「G’s」は、市場に出回る数は非常に少なく、数もごくわずかである。
走行距離×年式
平成21年 | 平成22年 | 平成23年 | 平成24年 | 平成25年 | 平成26年 | |
---|---|---|---|---|---|---|
1万km未満 | 176万円 | 173万円 | 196万円 | 229万円 | 280万円 | 279万円 |
1万~3万km | 167万円 | 182万円 | 189万円 | 221万円 | 271万円 | 250万円 |
3万~5万km | 164万円 | 174万円 | 178万円 | 214万円 | 283万円 | – |
5万km以上 | 156万円 | 157万円 | 159万円 | 183万円 | 206万円 | – |
グレード×年式
平成21年 | 平成22年 | 平成23年 | 平成24年 | 平成25年 | 平成26年 | |
---|---|---|---|---|---|---|
250G | 163万円 | 172万円 | 180万円 | 216万円 | 254万円 | 268万円 |
350S | 162万円 | 212万円 | 202万円 | 331万円 | 279万円 | – |
プレミアム | 171万円 | 179万円 | 188万円 | 239万円 | 263万円 | 296万円 |
年式
もっとも多いのがデビュー翌年の平成22年式。一方、平成24年式以降の後期モデルの割合は全体的に少なめで価格も高い。走行距離
1万km未満の物件は14%なので低走行車両はさほど多くない。1~3万kmが中心となる。

グレード
量販グレードの「250G」系が全体の6割近く存在し、市場の中心となっている。3.5L車は少なめだ。
1st 販売期間:平成16年~平成21年
斬新なフロントフェイスとスポーティな走りでより幅広い世代をターゲットとした初代マークX
栄光の歴史を重ねてきたマークIIという名前から決別、より若い世代のユーザーをねらい、マークII時代からグッとスポーティなルックスと走りを身につけた初代マークX。メカニズムも一新され、ライバルのFRセダンに対抗しうる実力を身につけ、大ヒットモデルとなった。
中古車参考価格帯 40万~160万円 (平成16年~平成21年 ※全グレード)
トヨタ マークX 300Gプレミアム(6速AT)
主要諸元
平成16年式
全長×全幅×全高:4730×1775×1435mm
車両重量:1530kg
排気量:2994cc
エンジン:V6 DOHC
最高出力/最大トルク:256ps/32.0kgm
燃費:11.8km/L(10・15モード)
サスペンション前:ダブルウィッシュボーン
サスペンション後:マルチリンク
ブレーキ前後:Vディスク/ディスク
タイヤ前後:215/60R16
直6からV6へ変更し走りを基礎から改善
V6を核とするFR-Lプラットフォームを採用して、スカイラインシリーズのV35スカイラインが登場したのは01年のこと。対して、クラウンシリーズの「ZEROクラウン」でFRの改革を実践したのは03年だから、トヨタの動きはけっして早くはなかった。だが、選択としては正解で、「直6のマークII」から「V6のマークX」への大転換は、多くのユーザーから歓迎されることになった。
重量配分の適正化などによりハンドリングがよくなっただけでなく、乗り心地や居住性にも進化がみられたのだから当然だろう。そして心臓も・・・。ターボの消滅に涙するファンもいたが、GR系V6は吹けがシャープで、高回転域まで活きがいいのが特徴。スポーティ派も満足のパフォーマンスを実現していた。

長めのホイールベースに対して前後オーバーハングは短め。運動性能のよさが伝わるサイドビューだ。
EXTERIOR エクステリア

引き締まったフォルムに印象的な3眼ライトを採用
前身の110系マークIIと比べると、プロポーションはグッとモダンに変身。70mm拡大されたホイールベースと、切り詰められた前後オーバーハングがカギを握る。アイキャッチは、大きくスラントしたノーズと「3眼」がモチーフの前後ランプで、スポーティさを表現していた。
MECHANISM メカニズム

一新されたパッケージによりFRセダンとしての理想を追求
「ZEROクラウン」に続いて直6からV6への大転換を行い、パッケージを一新したのが最大のトピックだ。前54対後46という、理想に近い重量配分を実現できた理由もそこにある。リヤをマルチリンク式とした新設計サスや、6速AT(2WD車)の採用も進化の要点だ。

INTERIOR インテリア
後席ニースペースを拡大モダンデザインを導入
ホイールベース拡大の恩恵は、110系マークIIより40mm広い後席ニースペースに表れる。一方で室内高は少し削られたが、トータルとしてくつろげるキャビンを実現。だが、それ以上に印象的なのは・・・モダンになったコクピットだ。


MARKET REPORT 市場レポート
アンダー100万円で買える魅力的なモデル
先代マークXは、中古車の数も豊富で、相場も100万円を切るというお買い得な状況。具体的に見ると、3万km未満だと5年落ちで130万円、7年落ちで100万円が相場。走行距離が伸びたものであれば、その多くは100万円未満で購入できる。この世代はマイナーチェンジ前後であまりデザインが変わらず、両者の価格差は少ない。
エンジンは2.5Lと3Lの2機種が設定される。両者の価格差は、一部逆転減少が起きているものの、概ね10万円前後となっている。両者とも平成18年式以前のモデルであれば100万円を切る価格のものが多く、お買い得。グレードは好みに応じて選べばよいだろう。
走行距離×年式
平成16年 | 平成17年 | 平成18年 | 平成19年 | 平成20年 | 平成21年 | |
---|---|---|---|---|---|---|
3万km未満 | 126万円 | 93万円 | 95万円 | 100万円 | 120万円 | 130万円 |
3万~5万km | 79万円 | 85万円 | 90万円 | 102万円 | 116万円 | 113万円 |
5万~8万km | 86万円 | 78万円 | 90万円 | 93万円 | 107万円 | 120万円 |
8万km以上 | 66万円 | 63万円 | 76万円 | 78万円 | 90万円 | – |
グレード×年式
平成16年 | 平成17年 | 平成18年 | 平成19年 | 平成20年 | 平成21年 | |
---|---|---|---|---|---|---|
250G | 79万円 | 78万円 | 87万円 | 92万円 | 110万円 | 119万円 |
300G | 87万円 | 69万円 | 97万円 | 109万円 | 104万円 | 127万円 |

IMPRESSION
森野恭行の歴代モデルインプレッション
1st ハンドル操作に素直に追従する若々しいフットワークを会得
操舵に素直に応答するシャープな身のこなしは、前身のマークIIとはまるで別物。プラットフォームなどの基本メカを共用する「ZEROクラウン」と比べてもマークXのフットワークはさらにスポーティで、「18インチ+AVS」を標準化したSパッケージは、FRらしいファンな走りにこだわるファンに熱く支持された。
2nd 初代の美点をブラッシュアップMCでさらに完成度が上がった
ボディ剛性強化やサスの熟成により、走りの質感を高めたのが130系の見どころ。VGRSなどのハイテクで武装する350Sは、パワフルな心臓を活かす大胆な走りも楽しめるスポーツセダンに仕立てられていた。そしてマイチェン後モデルは・・・全体に荒さが取れた印象で、乗り心地や静粛性のレベル向上が図られた。
※すべての価格は参考価格です