中古車購入ガイド
更新日:2021.11.22 / 掲載日:2021.10.22
【歴史】ハイエースってどういうクルマなの?【第1回】

文●大音安弘 写真●トヨタ、FLEX
日頃から街角でビジネスカーとして活躍する姿を目にするトヨタのワンボックス「ハイエース」だが、その活躍は日本に留まらず、グローバルに。旅好きの人ならば、国内外でホテルの送迎車やタクシーに使われるハイエースのお世話になった人も多いはず。このように日本が誇る働くクルマでもあるのだが、近年は、キャンピングカーやトランスポーターとして個人でも愛用する人がどんどん増えている。今回は、私たちの生活だけでなく、趣味の相棒としても愛されるようになったハイエースの歴史を振り返ろう。
商用車でありながら乗用車ライクな快適性を備えた初代ハイエース

ハイエースの歴史は、1967年(昭和42年)10月まで遡る。全く新しい商用車として送り出された。その名の由来は、兄貴分である「トヨエース」にあり、その後も多くのトヨタの商用車に使われる「ACE」の文字に、「HIGH」を加えたものだ。トヨタのより優れた切り札が出たという意味だったのだろう。初代は、バンを中心に構成され、9人乗りワゴンやバス的な12人及び15人乗り仕様のある「コミューター」に加え、トラックまで用意していた。初代より車内空間を広く取れるモノコックボディとし、乗用車ライクな乗り心地と運転感覚を重視して、前輪独立懸架するなど、現代も受け継がれるハイエースの基本構造を構築。また親しみのあるユニークなデザインも特徴であった。マルチな活躍を期待し、考え抜かれて開発設計された実用車であった。
バンとしての機能性を高め、乗用車ニーズにも応えるよう進化した2代目

1972年2月登場の2代目は、機能性と居住性を向上。5年、10年先を見越した先進的な商用車として送り出された。フロントマスクが歴代唯一のグリルレスとなったのもデザインにおける特徴のひとつ。リヤスタイルが垂直デザインとなったのも、この2代目からだ。イメージカラーに黄色が採用されるなど、ちょっと子洒落た雰囲気であった。新機能としてスーパーロングバンにハイルーフを新採用するなど、バンとしての機能もより磨かれた。またディーゼルエンジン車の設定も、この世代から始まった。乗用車ニーズにも応えるようになり、スーパーカスタムなどの充実装備のワゴンも用意されるようになる。
80年代のアウトドアブームを背景に高級ミニバンのポジションを担う3代目

1982年12月には3代目に進化。ハイエーストラックも継続設定されるが、トヨエースなどの姉妹車となり、基本構造が異なるようになる。ワゴンはRVブームを背景に、より豪華な仕様も用意。現代の高級ミニバンのポジションをハイエースが担うようになる。このため、ワゴンとバンでフロントマスクデザインも差別化。ワゴン系は、特徴的な上下2段式ヘッドライトを、バンにはシンプルな2灯式をそれぞれ採用していた。運転席周りがより乗用車ライクになったのも、この3代目からだ。そして、宅配便でお馴染みとなるエポックメイキングな「クイックデリバリー」が誕生。トラックのような風貌で、ハイエースらしさはないが、これも立派なハイエースブラザーズの一員だったのだ。
豪華路線を進み「ワゴン界のクラウン」と呼ばれた4代目「100系」

中古車参考価格帯:30万円-240万円(ハイエースバン キャンピングカーを含む)
平成初のフルモデルチェンジが、1989年8月登場の4代目。時代はバブル真っただ中ということもあり、ワゴンは豪華路線を邁進。「トリプルムーンルーフ」、「電動スライドドア」、「スーパースライドシート」などの世界初となる数々の機構が取り入れられた。なかでもユニークな機能が「ジョイフルトークシステム」で、車内に設置されたハンズフリーマイクとスピーカーにより、運転者と最後部席の人の会話を容易とした。
この世代における豪華さの象徴となったグレードが「スーパーカスタムリミテッド」であり、その内外装はワゴン界のクラウンといったリッチな雰囲気であった。もちろん、シンプルなマスクと質実剛健なバンも用意された。バンには、1999年に仕様を絞ったビスタ店専売モデルの「レジアスエース」と呼ぶ姉妹車が誕生。さらに特殊なモデルでは、「ハイメディック」という救急車専用モデルも登場。こちらは、高規格準拠を満たした国産自動車メーカー初の救急自動車であり、車内で救急救命措置が施される装備を備えたもの。車両上の最大の特徴は、セルシオ用の4.0LV8エンジンを搭載し、重量増と走行性能を高めていたことにあった。
中古車市場の中心となっている現行型の5代目「200系」
ハイエースワゴン ハイエースコミューター ハイエースバン
中古車参考価格帯:50万円-900万円(ハイエースバン キャンピングカーなどを含む)
現行型となる5代目は、2004年8月に登場。ミニバンブームの到来もあり、豪華ワゴン仕様は、アルファードに統合される形で消滅。10人乗りのワゴン、積載性重視のバン、そして、多人数乗車向けのコミューターを中心とした構成となる。
商用車に特化した現行型だが、エクステリアデザインは、プレーンながら、力強いデザインに。顔つきも男前な雰囲気となったことで、より市場での人気を強めていく。運転席まわりも、より乗用車ライクとなり、乗用車に広く普及したゲート式ATも採用し、車内空間のゆとりを増すインパネシフトとした。さらに乗り心地の大幅な向上するなど、誰でも扱いやすく乗りやすいハイエースに磨き上げられた。時代のニーズとして、衝突安全性の大幅な向上も図られた。デザイン性と快適性の向上から、豪華ワゴン仕様が失われたにも関わらず、より一般ユーザーにも注目されるようになったのも現行型の特徴といえる。その背景には、アウトドア人気や週末を趣味の時間として楽しむ現代人のライフスタイルの変化も大きかったようだ。
現在まで機能の向上や改善の為に、いくども改良が重ねられているが、もっとも大きな変化が、2017年11月の一部改良で追加された衝突回避支援パッケージ「トヨタセーフティセンスP」の存在だ。乗用車と異なり、ACC(アクティブ・クルーズ・コントロール)は省かれるものの、衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警報、オートハイビームを備えていた。この年は、ハイエース生誕50周年となるタイミングであり、50周年を記念した展示イベントが、東京・台場の展示施設「メガウェブ」と愛知県長久手市の「トヨタ博物館」で開催。トヨタモデリスタから記念となる趣味系コンプリートカー「リラクベース」が発売。さらに2018年8月には、ハイエース特別仕様車「スーパーGL“50TH ANNIVERSARY LIMITED”」も登場している。
世界的には第6世代となる新ハイエースが登場しており、海外向けモデルの生産が日本でも開始されている。ただ新型ハイエースは、日本にはサイズが大きすぎるため、現時点では、5世代目が継続販売されている。既に登場より17年を迎え、歴代最長寿モデルとなった現行型だが、近い将来にモデルチェンジが計画されているのは確かだ。しかし、それは最新式となる海外向けモデルの日本導入ではなく、日本にジャストなハイエースとなって送り出されるはず。それだけに新型の登場を心待ちにしているファンも多い。しかし、現行型もスタイルや機能を含め、大きな衰えを感じさせない。これは優れた基本設計はもちろんだが、人生に彩を与えてくれる1台としても、多くの人に愛されているからだろう。
長年生産された「200系」は改良されたタイミングで「○型」と呼ばれている
正式な呼び方ではないが、マイナーチェンジや一部改良による違いを見分けるべく「〇型」と呼ばれている。
・通称「1型」2004年8月 フルモデルチェンジ
・通称「2型」2007年8月 マイナーチェンジ(デザイン変更、「スーパーGL」にワイドボディ追加)
・通称「3型」2010年7月 マイナーチェンジ(デザイン変更、パワートレイン改良)
・通称「4型」2013年11月 マイナーチェンジ(デザイン変更)
・通称「5型」2017年11月 一部改良(「Toyota Safety Sense P」搭載、パワートレイン改良)
・通称「6型」2020年4月 一部改良(グリル変更、角型ドアミラー)
トヨタ ハイエースバン 新車価格
【ガソリン】
2WD
・DX“GLパッケージ”(2000ガソリン・6A/T・5ドア) 257万8000円
・DX(2000ガソリン・6A/T・標準ルーフ)253万円
・DX(2000ガソリン・6A/T)236万3500円
【ディーゼル】
2WD
・スーパーGL(2800ディーゼル・標準ボディ・標準ルーフ) 368万5100円
・DX(2800ディーゼル・2/5人乗り) 318万1000円
4WD
・DX(6A/T)3/6/9人乗り 344万5000円
・DX(6A/T・5ドア) 331万8500円
トヨタ ハイエースワゴン 新車価格
【ガソリン】
2WD
・グランドキャビン 370万500円
・GL 315万100円
・DX 287万5000円
4WD
・グランドキャビン 401万500円
・GL 345万9100円
・DX 318万6000円
取材協力 FLEX<フレックス>【ランドクルーザー・ハイエース専門店】

創業54年の老舗で、ランドクルーザーやハイエースを中心に魅力的な中古車を販売。全国に43店舗を展開し、2020年販売実績は6,115台 (ランクル含む)、年間カスタム実績5,400台以上 (ランクル含む)、数多くのファンにハイエースの楽しさを提供している。